前回ご紹介した被災者生活再建支援カードを使ったボードゲーム、

被災後のお金問題、ゲームで理解
https://www.risktaisaku.com/articles/-/18024

いよいよここからが、みなさんが頼りになる支援者になれるかどうかという本題に入ります。支援しようと思っている方はこちらの方でしたね。

この方は、半壊だったことから、実際に使った制度は、応急修理制度と義援金で、貯金を使って修理していきました。

ではどのような支援制度を提案できればよかったのでしょうか? カードには、災害直後の支援に、避難所、ボランティアの支援があります。

 

この避難所のカード、得意技もなく地味系です。でも、あらためて、支援者である様々な人と話していると、いろいろな体験や想いを聞くことができました。

各テーブルで熱く盛り上がりました(撮影:あんどうりす)

「避難所は、年金暮らしの人にはきつい場所だから行かない方がいいよ。まず親戚を頼ろう」とか、「この方はひとり暮らしだから、避難所を積極的に利用して、できるだけ長く避難所にいることにした方がいいよ。仮設住宅では孤独死とかの問題もでてくる。避難所で人と触れ合い、人に相談できるようにしておいた方がいいかも」という声もありました。どれもなるほど!と思ってしまいます。

ボランティアというカードでも、「ボランティアは不要とか言って断ってしまうかもしまうかもしれないね。積極的に利用してもらう方がいいよね」などと、ひとつひとつの意味を深く考える作業が新鮮でした。

ポケモンみたいに併せ技で進化

そんなカードを使いながら、この方の支援のポイントとなるカードにふと気づくことになります。それがこちら。

 

支援法の基礎支援金カード

一見、地味カードです。「全壊で100万円、大規模半壊だったら50万円」

この方は半壊だから全く基礎支援金もらえなかったのだろうな…と思ったその先に書いている内容を見てみると、カード下に「半壊で解体や長期避難も100万円(単身は4分の3)」とあります。

なんたることでしょう! 半壊でも解体すれば100万円…。このカードはポケモンカードバトル同様に「進化」の技が使えるカードではないですか!!

【公式】9分でわかるポケモンカードバトル(出典:YouTube、進化の説明は6分26秒から)

実はこのカードに、こちらのカードを併せると半壊が全壊に進化するんです。そのカード名は、こちら。

 

公費解体カード「半壊以上の家屋や一部事業所を公費で解体」。

半壊でも公費解体カードで全壊に進化させられると、基礎支援金は100万円もらえるのです。知ってましたか? モデルになったケースの被災者の方は、ご存知なかったので、この制度が使えなかったのですが、支援者の方でもまさかの災害復興の場で、「進化技」があることをご存知なのはどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

それだけでなく、被災者生活再建支援金は、先ほどの基礎支援金と加算支援金2つあわせてもらえることになります。つまり進化で半壊が全壊となると、基礎支援金という技が使えるだけでなく、加算支援金という併せ技まで繰り出せるんです。

半壊だとしても、公費解体したら基礎支援金として100万×単身なので4分の3=75万円もらって、家を新築や住居購入すれば、プラス200万×単身なので4分の3=150万円の加算支援金がもらえるので、最大225万円の支援金がもらえることになります。

0円か225万円か…。

半壊や一部損壊では0円だったのに、公費解体という進化技を使って解体したとたん、支援金併せ技まで発生してより多くもらえるなんて、技の効果が大きすぎる感じでなんだか不思議です。この技は持ち家の人だけでなく、家を借りている人も使えます。

もっとも、この「進化技」も「進化技あるある」の難点が生じます。

それは、進化すると進化前に使えていた技が使えなくなるというお約束です。知らない方のための解説はこちら。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポケモンカードゲーム

進化
ゲーム版における進化を再現したもの。TCG版における進化は、進化ポケモンのカード(進化カードという)を、それに書かれた説明文に従って、進化前のポケモンに重ねることをいう。(中略)進化するとHPが増加し、使えるワザもより強めのものになる。一方、進化前のカードに書かれたワザは使えなくなり、持っていた特性や古代能力もなくなる。

つまりですね。実際問題として、本当は解体しなくてもまだリフォームして使えるような場合であっても、公費解体したほうが、充実した支援金があるために、安易に解体されてしまうという問題が出てきています。さらに、公費解体は、被災者にとってどんなに支援金が多くなるとしてもつらい選択となる場合もあります。ずっと住んできて、家族を見守った家なのです。大切な人が建てて、大切な人の成長を見守ってきた家を解体するという選択は、軽いものではないのです。

ゲームをしている最中も「ある被災者は、今日は解体すると言って、朝になるとやっぱり無理だとなって、でも、やっぱり解体しかないのかと、時間ごとに大きく心が揺れている。それだけ公費解体で心は揺れる。支援者はそれに寄り添うだけ」という声がありました。

この進化技は、効果が大きいですが、それでも被災者に寄り添って使う必要があるのです。ゲームをして考えるからこそわかる当事者の悩みが見えてきますね。

革命技、リバースモーゲージ

さてこの方、一人暮らしなのです。貯蓄が800万円あるとはいえ、家を新築するとなれば、225万円支援金があっても、借り入れして利息を払っていかなければいけないですよね。老後の余力がなくなってしまいます。この場合、修理を選択したら、支援金は加算分と合わせて150万とはなりますが、出費を減らすことはできます。ただ、モデルケースでは900万円かけて自宅を修理をしても修理しきれなかった家なのです。修理が得策かどうか微妙なケースです。

ここで、トランプゲーム・大富豪(大貧民)の革命技か? と思うような技も使えます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/大富豪

革命
ローカルルールの中では「8切り」とともに最も広く知られたものであり[6]、同じ数字のカードを4枚以上出すことでジョーカーを除くカードの強さが逆に(3が最も強く、2が最も弱く)なる。再び革命(反革命、革命返し)が起きれば元に戻る。革命状態になる条件を満たしたカードを出した場合、そのプレイヤーが革命状態にするか革命状態にしないかを自由に選択できるというルールもある。

それが、こちら。

 

リバースモーゲージ貸付カードです。どんな制度かというと、ゲーム作成者の弁護士・永野海先生が「資本主義制度の中でありえないほどの条件での貸付」とおっしゃったほどの制度です。

災害時のみの特例制度なのですが、60歳以上の方に限定されます。あらたに借り入れしてまで家を新築や修理なんてできない…。そんな方も新築できるようになる制度なのです。しかも返済は、金利のみなのです。600万円借り入れで月1万円程度なので、家を借りるよりも安いですよね。保証人も不要。

そんな怪しげな制度、なにか悪いことがあるに違いないと思われると思います。悪いことといえば、死亡時に売却されることになるということ、特に60歳未満の子ども世代と同居している場合には、リバースモーゲージ貸付を受けた親が亡くなった途端に、子どもらが退去か一括返済を迫られるというリスクがあります。

ただ、被災した地方の土地で、誰も相続人がいないというケースはとても多いです。そのような場合、買い手もつかない場合も少なくなく、空き家となって「負動産」とまで言われてしまう可能性もありますよね。空き家になるくらいなら売却まで面倒をみてくれる災害時のリバースモーゲージ貸付はありがたい制度とみることもできます。相続したいと思えば、残金支払いでもちろん相続も可能です。

熊本地震や西日本豪雨で活用された制度ですので、詳しくは以前書いたこちらの記事をお読みください。

■一部損壊だと支援なし?「り災証明一本主義」の弊害と「災害ケースマネジメント」を考える
https://www.risktaisaku.com/articles/-/10778

この災害時のリバースモーゲージ制度は、一部損壊でも利用できます。

ゲームをしていて出てきた意見は、「地方の家は一人暮らしには大きすぎる家が多い。平家でコンパクトなバリアフリーの家にしたらいい」という声がありました。

私は、こちらに以前書いたような、ヒートショックによって人が亡くならない、そして、光熱費がかからない住宅をこの制度で新築したらいいかもなんて思いました。

自宅を防災仕様にすれば、お肌ぷるぷる!?
https://www.risktaisaku.com/articles/-/14528

という具合に、本来なら家を快適にすることは諦めてしまう60代以上の方が災害時という条件を満たす事で使える、資本主義化の制度とは思えない優遇に、革命カードだ! と私は思っています(厳密には、通常のリバースモーゲージより、利息は高めの設定になってます)。

より良い支援制度を考える

それでは、実際に使えた制度をまとめてみましょう。

一例なので、これらが必ず使えるというわけではなく、検討してみるべき制度ということになります。人生設計を考えて、老後は借家暮らしでもいいのでは? など、相談することで選択肢を増やすことができますね。知っていると知らないとでは、こんなに違うのですね。

今回、ゆっくり紹介できなかったですが、カードには、ほかにも災害援護資金貸付や

被災ローン減免制度についても、カードを勉強する際、理解していきます。

支援する側になりきるからこそ、支援制度を深く理解できるこのゲーム、ぜひ、皆さんも体験していただければと思います!

そして支援制度を使いこなせるからこそ、支援制度の制度設計についてもこれでほんとにいいの? 家の損壊の程度が重要な要素になっているけど、幸せはそれだけなの? というより良い制度設計に向けての問題解決を皆さんと考える事にもつながっていけばうれしいなと思っています。

ゲームの詳細はこちら
弁護士 永野海氏HP http://naganokai.com

(了)