適正な関係者が集まって議論し制作する過程が大事になる

■望ましくないスタートの切り方

今回よりBCPを策定するための具体的なステップと必要条件などについて考えていこう。まず唐突ではあるが、決して望ましいとは言えないBCPの作り方から指摘しておきたい。それは「最初から最後まで自己完結的に作る」というアプローチである。

例えばある日、防災担当者が社長あるいは上司から「うちの会社でもBCPを作ってはどうか?」との提案を受け、早速行動に移す。インターネットや書籍を通じてBCPの「ひな型」を入手し、見よう見まねでコツコツと記入する。あるいは数名の顔なじみの関係者が集まり、なれ合い的な雰囲気の中で検討・議論する。BCP文書が完成したら上層部の承認を得てめでたく完成…といったパターンだ。

どちらにしても失敗する可能性が高い。自分たちが議論したことやひな型に記入した内容が、果たしてBCPに正しく沿ったものなのかよく分からないからである。おそらく羅針盤のない船で航海しているような気分ではないだろうか。ひとたび挫折すれば、BCPの中長期的な価値を実感できないまま、それまで費やした時間と労力を無駄にしたという後悔の念だけを残すことになる。

一般的な段取りとしては2通りの方法がある。一つは担当者がセミナーや講習会に参加して一通りBCPの作り方を教わった上で社内に持ち帰り、社長と各部門長を交えて具体的に検討しながら中身を固めていく。もう一つは最初からBCP策定会議を立ち上げ、BCPの専門家のアドバイスを受けながら数回の会議を経て完成させる。

■会議メンバーの構成

BCPの策定は経営者自ら関わるべき「意思決定プロセス」である。データのバックアップ方式をクラウドに移行したり衛星電話の導入を検討する等の支出の承認はもとより、重要業務のプライオリティの決定、代替手段の選択と決定は、経営者や部門責任者の経験と判断に負うところが大きい。BCPを作成する実務担当者の一存では決められない。BCPは緊急時における事業の存続を左右するプランだから、その実効性を確保するためにも、上に述べたように経営者や管理者層を巻き込んだBCP策定会議としてスタートさせるのが望ましい。以下では会社上層部が参加する会議を立ち上げることを前提に、BCPの段取りを考えていこう。

(1) 経営者の参加
社長または社長と同等の権限を委任された役員クラスが総責任者として参加する。これは、BCP策定の各局面でトップダウンによる意思決定を必要とすること、緊急時は総指揮者としての社長の存在が重要であることによる。

(2) 管理者層の参加
部長、工場長、所長クラスの人々が該当する(代理として課長も)。管理者層については、それぞれの下位の責任者、つまり様々な工程や業務の現場を熟知する主任クラスの人々が参加することで、より具体的に作業を進めることができる。
 
ときどき「BCP策定会議メンバー」と「緊急対策本部メンバー」を同じなのか、別なのかという質問を受ける。中小企業の場合は緊急対策本部を構成するメンバーでBCP策定会議を推進しなければならない。メンバーが異なるとせっかく策定プロセスを通じて共有・合意した内容が、対策本部組織に引き継がれない可能性があるし、中小企業では、異なるメンバーで進めるほど人員や時間に余裕がないため、必然的に同じメンバーになる。会議におけるメンバーの割り振りは例えば次のようになる。

・会議責任者…社長(緊急対策対策本部長でもある)
・事務局…総務・人事部長(議事録を作成したり、意見・調査結果をまとめるスタッフを含む)
・参加メンバー…各部門の立場から戦略的にBCPの方針を立案するメンバー
  ◇生産部長
  ◇営業部長
  ◇情報システム部長
  ◇経理部長その他

■実施計画書の作成

メンバーが集まったら、全員でBCPを作ることの意義や目的を共有するためにも、会議推進のための実施計画書を作成しよう。項目としては、例えば「BCP策定会議の目的」「守るべき事業」「成果(アウトプット)」「会議メンバー名」「完成までのスケジュール」などである。

なお、実施計画書を作ったとしても、直ちに参加者全員の正しい理解が得られるとは限らない。BCPに対する認識はそれぞれ異なるし、中には懐疑的なスタンスで臨む人もいるだろう。そこで、会議を進める際には次の2点に留意したい。

(1)BCPに対する認識を確認する
BCPは、よくも悪くも経営者や管理者層の目線で見たとおりのものができる。社長や管理者層がBCPを防災マニュアルと同等のものと勘違いしていたり、取引先からBCPを作るように頼まれたからとか、自社をアピールするための宣伝ツールとしか考えていなかったりすると、その程度の内容の会議で終わってしまうだろう。会議の初回会議ではBCPに対する参加者の認識を見極め、間違っているようなら正しい方向に導くようにしたい。

(2)有効性や価値を裏付ける資料を用意する
経営者は費用対効果を見る目がシビアである。ある活動を立ち上げるとき、それがどれだけコストがかかり、どれだけの価値を生むのかといった点に着目する。例えば社長から「非常時備蓄は何がなんでも全従業員の数だけ必要なのかね?」といった質問が出る。この時「BCPの教科書にはそう書いてあるのでその通りです」と答えたら社長は納得しないだろう。もし社員の7割が徒歩で通勤可能な圏内に住んでいるなら「非常時備蓄は、ひとまず全体の3割を占める遠方通勤者の人数分に限定します」と答えることもできる。可能な限りこうした情報を事前に準備しておきたい。

(了)