東莞市はかつては歓楽街で有名だった(出典:Wikipedia)

鄧小平氏が改革開放を主導し、経済の活性化が進められる中でその副作用とも言える社会現象が存在しました。

今では、中国のIT産業の中心地として知られる深セン(土へんの右に川)市がその代表的なものなのですが、1979年に中国初の経済特区となり対外開放された都市であったこともあり、ものすごいスピードで発展していきました。当然金銭的にも恵まれ余裕のある人たちが増えると、自然と歓楽街が造成されることになり、そこには人も投資も集まることになったのでした。

そして、深セン市の北に位置し、香港・マカオにもほど近く、かつ政治の中心の北京市からは大きく離れているという地の利を生かした東莞市に「北半球一の性都」との異名を持つ風俗都市が出来上がったのです。

しかし、2014年2月に中国当局は大規模な摘発を断行し、性産業を中心とした大歓楽街は壊滅的打撃を受け、今はもう全くその影すらも見ることができない都市と変貌してしまいました。

中国赴任する日本人駐在員の間でも、東莞市の大歓楽街といえば誰もが知る風俗の都市でした。

夜の上海は誘惑もトラブルも多い

■ 赴任と同時に必ず経験する中国式カラオケバー

2005年当時、上海にも多くの日本人御用達のアフターファイブのお店が存在しました。人気マンガ「島耕作」シリーズにも登場し、小姐(シャオジエ)たちとの夜の交流が多く描写されていましたので、ご存じの方も多いかと思います。

当時、上海市内の日本料理店では、年齢が大きく離れた若い女性と夕食を共にする日本人男性たちが多く見かけられ、その若い女性達が自分の勤務するカラオケバーにそのまま一緒に出勤するということがよく行われていました。これは、もともと香港やマカオ、そして東莞市で日常行われていたシステムを踏襲したものと考えてもいいでしょう。

実際、日本からの駐在員や日本からの短期出張者にとっても、同様にアフターファイブを楽しむコースとして定着しており、中国に来られた男性たちは誰もが一度はお決まりの事として経験されたことでしょう。

しかし、それが単なるアフターファイブのお遊びとして終わるのではなく、情事事件として大きく逸脱してしまい、日本へ強制送還された人や、女性を妊娠させてしまったことによる大きな経済的損失、所属企業への大きな負担を強いてしまった事件も存在するのです。下記は一事例です。

ある大手企業の総経理(現地法人の社長)Aさんは、当時50歳。妻子を日本へ置いての単身赴任。

業績もまずまずの現地法人の社長(総経理)として赴任して来てすぐに、お決まりのコースとしてあるカラオケバーに通うようになりました。そしてまもなくAさんのことが好みだという日本語がたどたどしい若い小姐と仲良くなりました。まだ上海に来て数カ月だという彼女、大都市にも慣れず、カラオケバーの仕事にも不慣れな中でAさんみたいな人に会えて幸せだと言います。お世辞にもイケメンとはいえないAさん、既婚ではあるが今までそんなにモテたことがない。しかも自分の娘ほどの若い女性からの甘い言葉に舞い上がってしまいました。当然、毎日通えば親密な関係にもなろうもの、ある晩一緒に過ごしてしまったのです。

そうしたところ、ある日突然彼女が妊娠したことを告げてきたのです。Aさんは、そんなことになってしまっては大変なことになると、彼女との距離を置き始めました。しかし、それで納得のいく彼女ではありません、ある日突然「妊娠証明書」なるものを持ってAさんの会社に押しかけてきたのです。それから、Aさんの企業は上へ下への大騒ぎとなってしまいました。

当然、日本本社からも担当役員が来海し事実の確認、弁護士も入れて解決しようと試みましたが、医者が書いた「妊娠証明書」もある、カラオケバーにはAさんと当該の小姐が仲良かったことを証明する人がたくさんいる中では、裁判で争ったところで勝ち目はないと判断されました。ましてや企業としてのコンプライアンス問題もあります。

示談ということになり、多額の保証金を払うと同時に、当該の小姐との関係はなかったことにされ、Aさんは強制的に日本へ帰国、新たな代わりの総経理が日本より赴任してきました。

■ 甘い言葉の背後に「動機」が存在する

実は、このような事例は枚挙にいとまがありません。多くの日本人はこのような問題が生じると、まずは管轄する日本領事館へ相談に行くのですが、領事とて忙しい中一つ一つ親身になって解決を手伝ってくれるわけではありません。海外でのこのような問題はどこまでも自己責任となります。

先の例では、「妊娠証明書」なるものが動かぬ証拠となっていました。しかし、果たして本当にそれはAさんとの関係に依るものでしょうか? それは、誰にも分かりません。また、さらにいうなら本当に妊娠していたのでしょうか? 証明書自体も本物なのでしょうか? 探し出せばいくらでも疑問点は存在します。Aさんからお金を巻き上げようとすればいくらでも偽装することは可能なのです。上海に来て間もないということも事実かどうか疑問です。

全ての問題の根幹は、Aさんの脇が甘かったことに尽きます。

日本でも当たり前ですが、中国においても20歳もの年齢が離れた若い女性が何の理由(何らかの目的を持った動機)もなしに50歳にもなる男性を好きになることはほとんどありません。決してそのような愛情を否定するわけではありませんが、男女の問題は日中間においてもさほど大きな違いはないのです。

しかし、中国というこれまで経験したことのない外国生活の中、錯覚や誤解をしてしまったのかもしれませんし、一時の喜びに「誤解をしたかった」のかもしれません。

中国では、「日本とは違う常識」が働いていると思い込んでいる人も多いようです。しかし、たとえそうだとしてもここは外国、日本人の代表であるという自制心を持って駐在していただきたいのものです。

(了)