1. 水洗トイレは「便器」ではなくシステムです

皆さん、水洗トイレの仕組みを考えたことがありますか?
私たちの暮らしの根幹を支えているライフラインの一つが「水洗トイレ」です。日々、目にするのは便器部分のみなので、水洗トイレとは便器である、なんて思ってしまいます。しかも、ボタンを押すだけで大小便を目の前から流し去ってくれるので、まるで魔法の器です。

ですが、そんな魔法は存在しません。当然ですよね。
水洗トイレの機能を確保するためには、洗浄水を確保するための給水設備、大小便を運ぶための排水設備、そして適切に処理するための下水道施設や浄化槽などが必要です。また、これらの設備や施設を稼働するための電力設備も必要です。
つまり、水洗トイレはシステムとして理解する必要があります。もっと言うと、水洗トイレは水を利用して大小便を運び、適切に処理するシステムなのです。

そのため、大きな地震や水害などで、システムを構築する設備や施設が被災すると、水洗トイレとしての機能は失われてしまいます。オフィスだから大丈夫なんてことはありません。オフィスビルの場合、排水管のずれや下水道との接合部が被災すれば当然、水洗トイレは使えなくなります。停電で断水することもあります。

2. 日頃から、トイレや排泄を話題にしませんか?

平常時の水洗トイレがあまりにも便利なので、この機能が失われてしまったときのことが想像にくいし、思い付かないというのが現状ではないでしょうか。例えば、災害が起きたとき、自身に必要な物資、もしくは被災地に支援する物資として、何が思い浮かぶでしょうか。ほとんどの人が思い付くのは「水と食料」です。
トイレや排泄のことを意識できる人は、ごく少数だと思います。
意識できない原因として、日常会話にトイレや排泄についての話題が上がらないことも影響していると思います。例えば「今日のランチは、何を食べましょうか?」とか、「今晩、どこに食べに行きます?」という会話はありますが、「今晩、どこのトイレに行きます?」なんてやりとりはありませんからね……(笑)

防災といえば「想像力」が重要です。災害時はどのようなことで困るのか、真っ先に何をすべきか、そのために必要なものは何か、今からできることは何なのかなど、想像の連続です。しかし、前述の通り日々の話題に上がらないことは、想像にくいものです。

その結果、水洗トイレが使えない、備えがない、支援もない、という事態が引き起こされます。トイレや排泄はデリケートではありますが、日頃から意識的に話題にすることが必要だと思います。排泄は健康の指標ですし、汚水・し尿処理は公衆衛生や自然環境を考えることにつながります。また、トイレという視点から街中のバリアフリーを意識することもできます。ぜひ、家族や友人、同僚との間で、トイレや排泄を話題にすることにチャレンジしてみてください。

3. 排泄は「待ったなし」にやってくる!

話を元に戻します。生理機能の一つである「排泄」は待ったなしです。
ここで「地震後、何時間でトイレに行きたくなったか?」というデータをご紹介いたします。6時間以内にトイレに行きたくなった人の割合は、阪神淡路大震災94.3%、東日本大震災66.7%、熊本地震72.9%という結果でした。
発災から6時間という時間でできることはかなり限られています。命の確保は最優先で、安全な所に移動、関係者の安否確認などが考えられます。このとき、多くの人は水や食料は口にできていないのではないでしょうか。それにもかかわらず、トイレには行くのです。
この結果から、水や食料はもちろん大事ですが、発災後に必要になるのは「トイレ」の方が早い、と言わざるを得ないと思います。

繰り返しになりますが、私たちは、発災後すぐに「水洗トイレが使えない」「トイレの備えがない」「トイレの支援が来ない」という事態に直面することになります。

排泄したくなった人は、おそらく水が出ないことに気付かずにトイレを使ってしまいます。してしまった後はもう手遅れです。次の人、またその次の人も、ガマンすることができないので、便器はあっという間に大小便で満杯になり、劣悪なトイレになってしまいます。
阪神淡路大震災の時、このような深刻な状況を総称して「トイレパニック」という言葉が生まれました。それ以降の震災や水害においても、残念ながらトイレ問題が起きています。
企業では、トイレが使えなくなれば事業継続どころではありません。

次回以降、トイレ問題が私たちの健康にどのような影響を及ぼすのか、具体的にどのように備えればよいのかを解説していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

まとめ
□水洗トイレはシステムとして理解すべきである
□トイレや排泄を日常の話題にすることが必要である
□トイレ対応は、水や食料より早く必要である
□発災時は水が流せないことに気付かずにトイレを使ってしまう

(了)