福祉避難所を示すのぼり。特別支援学校は災害時はこの機能を果たす

2019年7月24日、東京都大田区で矢口特別支援学校の「福祉避難所開設訓練」が行われました。福祉避難所の指定は全国で2万カ所を超えていますが、ほとんど訓練ができていません。その中で、矢口特別支援学校の福祉避難所開設訓練は今年で7回目になります。今回、初めて訓練の現場を見学させていただいたので、その様子を報告します。

現場に着いて驚いたのは、多数の見学者がいたことです。訓練開始時に大田区、福祉関係者、地域住民など46名がいました。見学者用にスリッパを用意され、受付簿や担当者が配置され、常に気遣っていただくなど居心地の良い空間を作ってくださいました。このように見学者に配慮できるのは、相当な余裕がなければできません。以下に訓練内容の抜粋と私のコメントを《》に記します。

帰宅支援ステーションの表示。これは都立学校としての機能

(1)訓練の狙い
災害時における本校の機能(1.児童・生徒の保護、2.帰宅支援ステーション、3.福祉避難所)を発揮するため、地域や関係機関との連携・協力を深める機会とする。
《多くの特別支援学校は、防災訓練は、児童・生徒の保護を目標とし、保護者への引き渡しで終わっています。矢口特別支援学校は、さらに帰宅困難者への支援ステーションとして水、情報、トイレなどを提供するとともに、福祉避難所になり障がい者、高齢者を受け入れることにしています。素晴らしい取り組みだと思います。
なお、東京都は都立学校を帰宅支援ステーションにしていますが、私は特別支援学校は帰宅支援ステーションから外して、福祉避難所に特化したほうが良いと考えています。元気な帰宅困難者を支援するよりも、高齢者や障がい者支援のために、福祉支援に慣れている教員、バリアフリーなどの設備が整っている利点を生かすためです。ただ、特別支援学校だけの判断で帰宅支援ステーションを止めることはできないので、辛いところです。》

仮設トイレも設置

(2)災害想定と訓練内容
状況1:2日前の午前(平常授業日)、東京23区に震度6弱の地震が発生した。児童・生徒、教職員に被害なし、校舎にも大きな被害なし。
〈使用不可〉電気、ガス、水道
〈使用可〉非常用電話、子ども安全連絡網、本校HP、非常災害時電源(屋上の燃料式発電機を動かすと使用できる)、発電機
《震度6弱の地震で「児童・生徒、教職員に被害がなく、校舎も大きな被害がない」状況は、対応しやすい被害想定といえます。大災害の頻度は少ないことから、この状況で、教職員が十分に動けるように訓練することは重要です。
一方で、首都直下地震では過酷事象に陥ることも考えられますから、過酷事象対応訓練と交互に行うことも考えられます。》

状況2:校内では保護者の引き取りを待つ児童・生徒(20名)を保護しつつ、帰宅支援ステーション設置しつつ、以下の部署で対応する。
ア 災害対策本部(校長室)⇒児童・生徒の状況把握、対応指示
イ 情報収集班(経営企画室)⇒災害情報、交通情報
ウ 救護班(保健室)⇒服薬指示、傷病手当、健康管理
エ 児童・生徒班(視聴覚室)⇒児童・生徒の安全確保
オ 食糧・給水班(多目的スペース)⇒食事用意、福祉避難所へ運搬
カ トイレ班⇒汚物用ビニール袋、ランタンなど準備、状況により大型トイレ設置
キ ライフライン班(ピロティ)⇒生活用水の対応、発電機
ク 帰宅支援ステーション班(第2音楽室)⇒物品準備、場所整備
《福祉避難所開設前の災害対策本部体制は全部で8班です。これまでの訓練の積み重ねで体制を作っているので、他の特別支援学校や福祉施設においても参考になります。なお、トイレ設置まではトイレ班が行うとして、その後のトイレの掃除などは交代制で行うのがよいでしょう。時間軸に応じて柔軟に班体制を見直したり、忙しい班を手の空いた班が応援したりすることで、本番でも自然に協力体制ができることを目指します。》

状況3:福祉避難所開設準備訓練
発災後3日目の午前9時、大田区から福祉避難所開設に当たり、提供範囲の確認連絡があった。今回の訓練は17組34人のスペースが提供できる状況である。学校に待機している児童・生徒の保護と引き渡しも行いながら、福祉避難所開設の準備に取り組む。
《福祉避難所について、3日後に開設の要請があったことになっています。しかし、高齢者や障がい者、妊産婦や乳幼児が発災後の最も過酷な3日間を一般の避難所や車中泊などで過ごすことを前提にしてよいのでしょうか。発災直後から積極的に福祉避難所を開設して、厳しい状況に陥らないようにすべきです。内閣府は現行の福祉避難所ガイドラインを見直して、福祉避難所を発災直後に開設し、直接避難を促すよう規定すべきと考えます。》

(了)