BCP作成にあたって要点を押さえることが大事です

■BCP文書の3つの構成

「計画書」と名前のつく社内文書は多々あるが、BCP(事業継続計画)というドキュメントは、他の社内文書に比べて今ひとつ形が捉えにくいと感じている人も少なくない。例えば○○製品開発計画とか○○プロジェクト計画書といったものは、アイデンティティがはっきりしている。しかしBCPは、一見すると規定文や指示書のようでもあるし、防災マニュアルや業務手順書のようでもある。

今回は、そうしたアイデンティティのはっきりしないBCPを「構成」という側面で考えてみよう。構成とは個々の要素が集まって全体を形成した状態を指す言葉だが、ここでは大きく3つの側面からBCPの構成を示す。まずは次の質問を見てほしい。

・複数の事業拠点を持つ会社が初めてBCPを作ろうとしたら、どのBCPを作ればよいか?
・BCPにはさまざまな文書が混在しているが、何かフォーマットや種類が決まっているのか?
・BCPでは発災~終息に至るまでの危機対応の流れはどうなっているのか?

1つ目の「複数の事業拠点を持つ会社がはじめてBCPを作ろうとしたら、どのBCPを作ればよいか?」について。中小企業の中には「本社」と複数の「工場」、複数の「営業所」を有するケースも少なくない。こうした場合、モデルケースとして一つのBCPを策定するのであれば、本社のBCPでもよいし主力工場のBCPでもよい。営業所については、従業員数名規模なら緊急対応マニュアルを作成するだけでよい(BCPは不要)。

初めて策定したBCPについて机上検証を経て問題なければ、他のBCPに展開していく。本社、工場それぞれのBCPは、各々自律的に判断・行動すること、本社BCPの統制のもとで被災工場が指示を受けながら活動することの2つの側面を持つように方針や手順をブラッシュアップする。本社のBCP一つですべての工場の災害対応を指揮するケースもあるが、地理的ギャップその他の制約がある中で、本社が一元的に危機をカバーしようとするBCPには危うさがつきまとう。

■ドキュメントとしての構成

次に「BCPにはさまざまな文書が混在しているが、何かフォーマットや種類が決まっているのか?」について。一つのBCP(または事業継続計画)と呼ばれる文書の中身は、どのような種類のドキュメントで構成されているのだろうか。目的や用途に応じて、これは次の3種類に分けることができる。

(1) BCP本編
BCP全般の方向性を規定したもの。BCPの基本方針(目標や目的、災害想定など含む)、守るべき事業、対策本部組織、重要業務の継続に必要な手順やリソースのリストで構成。災害発生初期に運用する緊急対応マニュアル(初動対応マニュアル)などについては、BCP本編に含めてもよいし、大企業や中堅企業のようにBCP本編とは切り離して別冊扱いにしてもよい。

(2) 主要なシートやチェックリスト類
初動段階から使用するものとして安否確認シートや社員名簿、被害状況調査シート、重要顧客や取引先、インフラ事業者、行政当局、最寄りの病院等の連絡先リストがある。非常時備蓄品リスト等もここに含めてよいだろう。

(3) その他の補完書類
重要業務の継続や復旧段階で必要となるものとして、重要データファイル一覧、社内の重要設備資産(IT機器や機械装置その他)の仕様・型式・メーカー名のリスト、建物・不動産業者のリスト、重要機器・設備の保守サービス業者リストなど。

なお(1)~(3)の書類をすべて束ねて関係者全員に配布すると重厚なものになってしまう。筆者が中小企業に勧めている方法としては、例えば対策本部メンバー全員には(1) を配布し、(2) と(3) については同時被災の危険性のない数カ所(社長室金庫、総務部、社長宅、総務部長自宅など)にBCP本編と一緒に保管することで配布と管理の負荷を軽減している。

■行動ステップの構成

3つ目、「BCPでは発災~終息に至るまでの危機対応のフローはどうなっているのか?」について。なぜこのような疑問を持つ人がいるのかというと、ガイドラインなどは要件を羅列しただけなので災害対応の「流れ」が見えにくいからである。そこでBCPを文書化する場合、緊急時の対応からはじまり、BCPの発動そして重要業務の継続から復旧へと続き、終息させるまでの一連の流れがわかるような構成で記述することが大切である。それぞれのポイントは以下の通り。

(1) 初動対応の行動手順
初動対応には、最も初期の行動として、発災の確認、身の安全確保、初期消火、負傷者の救助、最寄りの安全な場所への避難などがある。次に全員の安全が確保された時点で安否確認を行なう。安否確認はあらかじめ伝達ルール(だれが、どこへ、どんな手段で安否情報を伝えるか)を決め、それを記録用紙(安否確認シート)に集約できるようにしておく。

(2) 対策本部の招集と設置
初動対応を終えた後、社内が被災して多くの業務が停止し、混乱した状態にあることが分かったならば、直ちに緊急対策本部を立ち上げる。この際対策本部メンバー全員がBCPを手に、所定の場所(会議室など)に集合することになる。

(3) 被害状況の確認
従業員の安全と自宅の被災の有無、出社状況、ライフライン、道路や交通機関の運行状況、顧客や取引先への影響、IT機器や生産設備の破損、製品の損傷の程度、機械・装置の位置ずれ、倉庫の荷崩れなどの被害状況をチェックする。

(4) BCPの発動
被害状況を確認したところ、多くの業務活動が阻害され、早期復旧の目処がつかめず修理・修復にかなり時間がかかるならば、直ちに対策本部長はBCPの発動を宣言する。よく「BCP発動の是非を客観的に判断できる基準は何か?」が問題になるが、これはむしろ対策本部長による状況判断および意思決定のプロセスと見たほうが自然である(数字だけにとらわれると判断を誤ることがある)。

(5) 重要業務の継続と災害復旧活動
「重要業務の継続」は、中核事業を構成する一連の業務を維持・継続することを指す言葉だが、ここには「いつも通りのやり方で業務が行えないときは代替手段(仮復旧手段)を駆使する」というオプションも含まれている。したがって重要業務の継続方法(代替手段による仮復旧方法)がBCPに明確に規定されていなければならない。対して「災害復旧活動」は、仮復旧で急場をしのいでいる間に、被災現場を通常業務ができる正常な環境に戻すための活動である。

(了)