復旧に向けた工事が進むアイシン九州(6月22日)
トヨタ自動車は4月18日から工場の稼働を段階的に停止し、完全復旧までに約1カ月半を要した。3.11以降、サプライチェーンを含めたBCP 体制を強化してきたが、いかに機能したのか? 同社の対応を振り返る。


トヨタ自動車では、4月14日夜の前震以降、国内における完成車の組み立てラインの稼働を段階的に停止。4月18日から23日にかけ、トヨタ自動車九州の2ラインを止めたのを皮切りに一時は本体ほぼすべての生産ラインを休止した。

原因となったのは、アイシン精機の子会社アイシン九州(従業員610人、売上高229億円)の被災だった。1993年にアイシングループの中核拠点として発足。ドアやサンルーフ、パワーシート、エンジン部品を主に生産している。このうち、ドアの開閉を制御する「ドアチェック」という部品が今回の地震で生産できなくなった。ドア開閉時の節度と開度を一定に保持するための製品で、開閉時にレバー部を樹脂部品とゴム部品で保持するシュータイプと、鋼材でできたローラーとスプリングで保持するローラータイプと大きく分けて2種類あり、車両・グレードなどにより使い分けている。1カ月の生産量は約90万本で国内シェア1位を誇る。

1万3000 社をデータベース化

一方のトヨタ自動車では、2011年3月11日の東日本大震災で車載マイコンなどをつくる仕入先が被災したことなどにより、生産の再開まで約5週間を要したことから、部品などの仕入先を最大限把握できるようデータベース化を進めてきた。

その数は正式発表されていないが、日経新聞2015年3月9日付朝刊では、「約4000品目の部品について、関係のある1次や2次だけでなく、トヨタ本体はほとんど情報を持っていなかった10次以降までの取引先の協力を得て生産場所や緊急連絡先をデータベース化した。対象は約1万3000社、約3万拠点に及ぶ」と報じている。

今回の地震は対策が十分至っていないサプライヤーの弱点を突く形で発生した。

「まだ対策は道半ば」

「直接の仕入先のみならず、2次仕入先以降も含めサプライチェーンがどうなっているか、例えば1拠点だけで作っている品目はないか、仕様が特殊だったり工程や材料が特殊だったりすることで代替が難しかったりする製品はないかという調査はずっと進めてきています。特定できた品目から調達拠点を分散してもらうとか、生産拠点で災害が起きたときの被害を軽減するなど徐々に対策も実行してもらっています。仕入先各社においてもBCPの策定・改善は進めてもらっていると聞いています。しかし、車1台あたりの部品が3万点ぐらいから構成されていることもあり、まだ対策は道半ばと言わざるを得ません。優先順位の高いものから取り組ませてもらっていますが、どうしても対策に時間がかかってしまうものもあります。今回の地震は道半ばの中で発生してしまいました」(同社広報担当者)。

延べ170 人を支援で派遣

代替生産による調達もできない中、トヨタ自動車では伝家の宝刀ともいえる災害対応の速さにより、迅速な復旧を試みた。災害直後から現地に支援部隊を送り、4月26日時点で約60 人のメンバーが被災地支援を第一に現地での復旧活動にあたった。4 月26日までの延べ人数は約170 人に上る。2007年中越沖地震では、トヨタ自動車だけで約400人の支援スタッフを現地に送り、被災したリケンだけでなく周辺工場も含め復旧支援にあたったが、今回もそれに近い形をとった。

「3.11以降、災害が発生したときにいかに初動を早くするか、そして早期復旧に向けた活動にいかに着手するか、この2点が重要だということを弊社だけでなく仕入先やサプライヤーとも共有させていただいてきました。今回も何が問題になっているか、何の部品が問題になっているか、それに対してどう対策を講じるかということに対しては一定程度の対応はできたと考えています」(広報担当者)。

ジャストインタイムを守りながら

同社は組立工程に合わせて必要な部品を必要なときに供給する「ジャストインタイム(JIT)生産方式」を企業理念とする。

JIT生産方式は、効率的で無駄がない半面、ほとんど在庫を持たないため、たった1つの部品供給が滞っただけでもライン全体が止まる可能性があることが、これまでも繰り返し指摘されてきた。

この点について同社広報では「そもそもトヨタ生産方式は、効率性だけを追求するものではなく、異常があったら直ちにラインを止めて不良品を流さないことを徹底する考え方によるものです」と説明。部品を在庫保管しておいても、それが震災の被害を受けないとは言い切れない。異常事態の中、在庫部品を使ってでも無理に工場を稼働させれば不良品を発生させることにつながる。今回の熊本地震も「何が問題になっているかをまず特定した上で、対策を講じていく方針のもと、ラインを止めました」と説明する。

リスク品目を減らす

熊本地震により同社の生産には4月末時点までに約8万台の影響が出た。東日本大震災では2011年8月時点までに約76万台の影響が出たことに比べれば大きな数ではないが、同社広報では「影響台数も一時的には非常に増えてしまって、納車をお待ちいただいているお客様にはご迷惑をおかけしていますが、品質を確保する上で必要な対策であり方針でもあるので、理解してほしい」とする。

今後に向けた改善としては「リスクが顕在化したときに備え、リスク品目を減らしていくよう引き続き取り組んでいきますが、トヨタ生産方式の方針や考え方を変えることはありません」(広報担当者)とする。