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■業務プロセスの洗い出しという不毛の作業
この最終回では、BCPの中でも最もBCPらしいテーマ、「重要業務の継続」について考えてみたいと思います。「重要業務」とは、会社の事業が停止したときに、いち早く立ち上げなければならない復旧優先度の高い業務群のことを指します。
 
BCPの原則論にしたがえば、重要業務を特定するためには、まず「どこでどんな業務が行われているか、そこではどのような経営資源が使われているかをすべて洗い出し、業務プロセス全体を可視化しなければならない」としているのです。

しかし大企業のように業務の流れがとても複雑で全貌がつかみきれない場合は別として、一般中小企業の場合は「組織図」や「業務フロー図」などを手元におけば、主要な業務もそこで使用している経営資源もすぐに把握できてしまいます。なぜBCPの原則論では、こんなややこしいことを要求するのでしょうか。

言うまでもなく、それはもともと「IT業務」を念頭に置いた手順だからです。火災やテロで会社のシステムが使えなくなると仮定する。取り急ぎバックアップサイトに必要最小限の業務機能を立ち上げるとしたら、必要なのはどのサーバ、どのアプリケーション、どのデータなのか。これを特定するためには、ネットワークで複雑に絡み合ったIT業務をすべて洗い出さないと、相互の依存関係や機能の重要度が見えてこないからそうするのです。

このようなわけで、「重要業務」を特定するためにすべての業務プロセスを洗い出すなどという作業は、IT業務以外は時間のムダと言ってもよいのです。もっとシンプルに「災害時に他を差し置いてもこれだけは率先してやり遂げなければならない業務は何か?」を自問自答すれば、すぐに重要業務は見えてくるでしょう。

■重要業務は「BCPの目的」から簡単に導くことができる
一方、「重要業務」を特定するもう一つの方法もあります。「BCPの目的」から導くことです。ここでは物流業における重要業務の選び方を見てみましょう。

ある物流会社のBCPの目的に「非常時においても可能な限りお客様の輸送ニーズに応えること」という文言が書かれてあるとします。この「お客様の輸送ニーズに応える」ためには、どんな業務とどんな手段が必要かは、日常のルーチン業務を思い起こせば一目瞭然です。例えば次のようになるでしょう。

①注文の受付業務
・事務員○名
・伝票
・電話/FAX

②集配業務
・ドライバー○名
・車両○台
・燃料

③倉庫業務
・倉庫要員○名
・倉庫建物
・フォークリフト

このように一連の重要業務が特定されたあと、原則論ではそれぞれの業務一つひとつに「目標復旧時間」を割り当てるのですが、今となってはもはや意味を持ちません。それに、たとえ目標復旧時間を割り振っても、個々の重要業務のどの復旧を最優先で急ぐべきかは、被災時点の状況によってダイナミックに変化することも前に述べました。

■代替手段は手の届く範囲で-それがムリなら復旧あるのみ!
先ほどの例では、平時のルーチン業務に必要な経営資源(ドライバー○名、車両○台)を書き出しましたが、災害においては、まさにこれらの経営資源の条件がそろわなくなる、つまり人員不足、車両不足、燃料不足に陥ることが問題になるわけです。

そのため、BCPでは代替手段(仮復旧手段)を駆使して、これらの業務を継続するという方法をとります。BCPの原則論では、ここで目の覚めるような代替手段を駆使して切り抜けることを提案するのでしょうが、予算でがんじがらめになるような対策はとらないことが賢明でしょう。現実的な線で考えるなら、「できること」と「できないこと」を区別する。これしかありません。

「できること」とは、いつもの方法が使えないならアレがあるじゃないか、という場合。先ほどの物流会社のケースに当てはめれば、パソコンと伝票が使えなければ紙に手書きで済ませ、復旧後に手入力するとか、組合企業間で車両やドライバー、燃料をシェアするといったことです。

「できないこと」とはその逆で、どんなにがんばっても条件がそろわず、いつもの方法以外に重要業務をやり遂げる方法は見当たらない、という場合。いつもの方法でしか重要業務を行えないのなら、いさぎよく復旧に専念するしかありません。
 
いくら背伸びして入念かつ合理的と思える対策を講じても、災害はその発生場所も時間も、規模も、私たちの思い込みの裏を書いて起こるのが通例です。災害から命と会社を救うのは、お金をかけた即物的な対策ではなく、どんな状況にも機敏に対処できる私たち自身、つまり「人間力」であることを再認識しておきたいものです。

(了)