出典:ロスアンゼルス市消防局ノースハリウッド消防署

こんにちは。サニー カミヤです。このコラムでは、「すべてのペットレスキューに通じる“擬人化”テクニック」をご紹介いたします。

ペットレスキュー時における擬人化テクニックとは、助けが必要な動物の現場環境、事故経緯、感覚、感情、願望などを消防士が感じ取って、自分の心身に置き換えて、救助方法の手順を決めたり、必要な装備をそろえるなど、レスキューのヒントにする手法です。

「だって、動物と人間は違うのにどうやって“擬人化”するの?」と思われる方もいると思いますが、私の過去の現場経験からも、要救助者の状態を自分の心身に置き換えたことで、捜索活動や救助活動をスムーズなったことを何度も体験しています。

また、助ける相手が人間であろうとペットであろうと、自分の心身を使って共感してみることで、逃げ遅れた場所や閉じ込められているところ、身体の状態を予知することができることが知られています。

わかりやすく言うと下記のような感じです。

・自分が猫や犬だったら、大地震や大水害発生時、どこに逃げるだろうか?をイメージしてみる。
・動物がどこかに挟まっていれば、その挟まっている感覚(痛みや圧迫等)や不安、怖さを自分の心身に置き換えてみる。
・身動きがとれなくなって、消防隊が駆けつけている声、サイレンの音やフル装備の人たちが近づいてくる様子を要救助動物側から感じてみる。
・動物が求めている感情を感じてみる。たとえば、飼い主が近くにいないことやずっと孤独に生きてきたことなど。
・安心できる言葉のトーンやアプローチ、そして、顔の表情など。


人間のレスキュー時でも同じですが、相手の心身を自分に投影することで、言葉は話せなくても、また、その動物を飼ったことがなくても、どうすれば痛みや不安が少なく、助けてあげられるか?を一瞬にして感じ、無事にレスキューできる可能性が高くなると思います。

動物を自分に置き換えて考えてみる

■この映像を見ながら、猫に自分の心身を置き換えてみてください


 GoPro Awards: Frozen Kitten Lives (出典:Youtube)

何らかの原因で雪に埋もれて、仮死状態だったと思われる猫は、幸運にも、たまたま遊びに来た家族に見つけられ、1時間以上のCPR(心肺蘇生)で無事に命を取り戻しました。

この猫を助けた人は、医者でも獣医でもない一般人。特に救急法を学んだこともなく、ただ、猫の状態を見て、暖めた方が良いと判断して急いで暖炉の前に連れて行き、猫の心臓の大きさを考えて両手の親指を使った必要な圧力とリズムで心臓マッサージを開始し、あきらめずに継続しました。

やさしい人との出逢い、暖かい部屋とたゆまない心臓マッサージ、そして、家族全員が送る猫への「がんばれっ!」という気持ち、そして、励ましの声、そのすべてが調和となって、この猫の心臓が再び動き出したことを感じます。

このようなビデオはYouTube上にたくさんありますが、映像を見ながら、助かったペット側の心身になってみると、救助者になったときに何を最初にするべきかを自動的にわかるようになると思います。

イタリア大地震では災害救助犬が16日間で約900頭のペットを救出

■イタリアの大地震で救出された動物たち


Cat Survives Being Trapped Under the Italy Earthquake Rubble For Five Days. (出典:Youtube)

今年8月24日に発生したイタリア中部地震(M6.2)では、災害救助犬によるペットの捜索が行われ、地震から5日間で約300頭の犬と猫が救出され、16日間で、計約900頭のペットが救出されました。

考えてみれば、前回ご紹介したように犬の感性を借りれば、大災害時における、災害救助犬の活用は、人命救助はもちろん、ペットレスキューにも役立つと思います。

今まで、災害救助犬は主に人を見つけるトレーニングをしてきましたが、捜索中、倒壊建物の下敷きになっている犬や猫、小動物の助け声を無視できず、救助員に伝え、救助員は救助犬の能力を信じて、場合によってはショベルカーやクレーンでがれきを掘り起こして救助したようです。

そして、救助活動を行った消防士達は、地震発生時、家の間取りを飼い主に聞いて、ペットたちがどのような場所に逃げ込むかを想像し、「洗濯機の裏に逃げたのかも」「奥の部屋のタンスの後ろかも」など、優先的にいつも隠れるところから探したそうです。

この映像を使って、猫が挟まっている身体を自分に置き換えて、建設機械のの音や、ボロボロとこぼれ落ちてくるコンクリートの破片、救助者達の声を想像してみてください。そうすることで、必要最小限の建設機械の使用、あまり音の出ない救助資機材の選定、怖がらせない救助手順、2次災害の予防(余震による再倒壊)を考え、救助活動を行えると思います。

種を超えて通じる心が存在する



Funny ANIMAL COUPLES: 15+ stories about unusual friendship of animals (出典:Youtube)

このビデオを見ていると、動物たちは種を超えて、また、個々に通じる心を持っていることがわかります。もちろん、彼らは人間に対しても同じように通じる心を持っています。さらに同じ時代に生きている命として、相手の命を敬い、生きていく上で、必要以上の殺生を行いません。

私たち人間は同じ動物の一種であり、通じ合えば、同じように仲良く生活することができると思います。大切なのは、この通じる心を体験することで、大災害時のペットレスキューに大きく役立たせることができるということです。

また、人間と同じように種が同じでも、性格や習慣、考え方、感情の持ち方などは個々に違いますので、犬は犬、猫は猫として単純に捉えないことで、
特別な存在となり、救助する気持ちも高まると思います。


Top 2016 Most Inspirering Dog Rescues (出典:Youtube)

今回、ご紹介したペットレスキュー時の擬人化テクニックは、人間に置き換えるとエンパシー(共感能力)とも呼ばれますが、常備消防に限らず、消防団、各種災害救助ボランティア、警察、海上保安庁、自衛隊などの隊員の方々にも通じる内容かも知れません。

また、このようなテクニックや能力は、普段から、使っておくことが大切だと思います。

大切なご家族、奥さんや子供、そして、ペットなど、周囲の方々に日頃から活かしてみてください。

きっとステキな関係を保てると思います。



ここにご紹介したコンテンツは、私がインストラクターとして所属している2つの団体、アメリカ最大のペット救急法指導団体であるPetTechのThe PetSaver™ Program、そして、消防士のためのペット救急法指導団体、BART(Basic Animal Rescue Training)ら出典しています。

PetTech
http://www.pettech.net/

BART(Basic Animal Rescue Training)
http://basicanimalrescuetraining.org/

BARTのブログで紹介されました。
http://goo.gl/ZoJoX6

ペットセーバー:
http://petsaver.jp

(了)