前回、現場での危険予知について書いたところ、たくさんのコメントをいただきましたが、ほとんどが、50代の幹部の方々で、真剣にこれからの消防を案じる内容で、胸が熱くなりました。

昔から、消防の世界では「現場に勝る訓練はない」と言われていますが、これは、昭和の古いの考え方かもしれませんが、今でも外れてはいないと思います。

前回も書いたように、現場出動回数が減れば、災害対応経験の不足から、危機対応力も低下し、同時に危険予知能力も低下。救命率も減り、公務災害も増える可能性が高くなると考えられています。

次のビデオをご覧ください。


出典:YouTube/ Structure Fire・Reports of Children Inside・Stockton Firefighters, California

上のビデオのような消防士の現場活動シーンはYouTube上に数十万あると思いますが、アメリカだけではなく、各先進国の消防局で現場シーンの撮影が行われています。

その映像内容は

・署内待機中、または、訓練中に出動指令が入ったときの指令の聴き方
・指令受信から1分以内に消防車に乗り込む間、必要な装備を身に付けながらも隊長が隊員に指示している現場活動内容
・出動途上に指令センターとどのようなやりとり、また、何の情報交換を行っているか?
・車両の停車位置、水利の選定
・現場到着時、まず、誰が何を行っているか?機関員、隊長、隊員、放水員が同時にすべて違う準備と行動をしていることがわかる
・隊長や隊員が行う被災した家族への対応内容や言葉遣い、そして、事情調査
・野次馬の360度撮影と放火魔などの聞き込み
・家族や隣人らの表情や会話内容
・進入箇所の判断と優先順位
・排煙箇所の選定と放水圧力の判断
・各隊員の動きや報告内容など
・煙の対流方向と延焼先の避難および消火対応
・ヘルメットカメラによる、ほぼ隊員の視点に近い目線での活動内容、使っている道具、車載箇所、道具の使い方やタイミングなどもリアルのわかる
・活動中の指令課員との交信内容と時間経過
・隊員から隊長へ、それぞれの活動状況報告

等々、見ているだけで現場の熱気の温度から煙の臭い、空気呼吸器の息苦しさ、現場を去るときの静けさなど、すべてが伝わってきます。

そして、このビデオの活用方法は

・消防学校での火災防御教育訓練
・消防局の紹介
・消防隊員向けの危険予知訓練
・隊長と隊員の無線交信要領訓練
・指令課員の無線情報交換訓練
・資機材メーカーの機材活用法参考
・火災原因調査のための確認資料
・未来の消防士への啓発資料
・訓練計画作成者の資料
・予算要望資料

等に使用されています。

大切なことは、映像を残すことによって、これからの消防活動の参考になること


出典:youtube/BERNARDS TWP. NEW JERSEY 2ND ALARM WORKING FIRE 9/12/16 FULLY INVOLVED TOWNHOUSE APARTMENTS

最近ではドローンを併用して撮影している消防署もあるようです。


出典:Youtube/Explosion and Fire In Ventnor City, NJ - September 12, 2016 - Unedited

これらの映像は、消防局により、関係者の必要な承諾を得てYouTubeに載せたり、内部教養映像のみにして、組織内のみで活用するか、または、両方の場合もあったり、さまざまです。

大切なことは、映像を残すことによって、これからの消防活動の参考になること。

私が26年前にレスキュー隊の小隊長をしていたときには、当時の大きなビデオカメラにビニール袋をかぶせて、たくさんの映像を撮影し、小隊の教養資料として活用していましたが、期初後、または、後日、自分も含めて、「どのような活動を行ったか」を映像を見ながら反省会や検討会を行うことで、隊員の対応レベルも確実に上がっていったことを思い出しました。

YouTubeなどに載せるときには、モラルと社会性を考慮して所属長の許可などをとろう

今は、ヘルメットカメラも小型化されて、安価になり、ヘルメットに取り付けてスイッチを入れるだけですので、簡単に撮影できると思います。

ヘルメットに取り付けられるように開発されたカメラ

 

 


出典:Youtube/LAFD / Hermon Strip Mall Blaze / Part 1 of 2 / Major Emergency

 

みなさんもヘルメットにカメラを取り付けて、現場活動を撮影してみませんか?
。。と言っても、ほとんどの方が心配するのは法的なことですが、アメリカでは消防局の広報部が被災者からリリース(許諾)サインをもらったり、または、問題があるようでしたら、教えてくださいという前提で、YouTubeに載せたりしているようです。

撮影に関する日本の法律を調べてみたところ。。

まず、建物は創作性のないものや撮影禁止のものでない限り、一般の家屋等は火災現場でも撮影しても問題ないようです。

よく耳にするのは、肖像権という言葉ですが、法律の専門家に尋ねたところ、日本の法律に肖像権という権利を規定した文章は存在しないようです。ゆえに刑法において肖像権侵害という罪で裁かれたり、罰則が与えられることはないということでした。

また、肖像権ではないが、類似する事例で該当する可能性があるのは名誉棄損罪、迷惑条例違反あたりだそうで、民事上では個人の肖像の扱いは、判例により人格権、および財産権のひとつとして保護されるべきものとされているようです。

ただ、YouTubeなどに載せるときには、モラルと社会性を考慮して所属長の許可などが必要だと思います。

大事なのは、何を優先するかということと何を残し、どのように活用するかだと思います。

いずれにしても、消防力の向上のために具体的にできるところから進めていけたらいいですよね。


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp

(了)