百日ぜき菌が気道に感染した様子を描いた図(出典:Shutterstock)

はじめに

百日ぜきは、百日ぜき菌の気道感染で起こる疾病です。以前は乳幼児の病気と思われがちでしたが、成人にもみられる病気という認識が高まっており、感染症動向報告によると今年1月1日〜6月30日の百日ぜきサーベイランスで、感染症法の診断基準に合致した罹患者が7611例報告され、そのうち13%が成人でした。なお、2018年は1年間で1万1190例の罹患(りかん)者が報告されています。

1.百日ぜきの特徴

症状 
百日ぜきは、感染後7〜10日間の潜伏期の後、鼻汁などの感冒と似た軽いカタル症状がみられ、その後せきが現れ、だんだんと激しい発作性のせきへと進行します。息継ぎのできない短く連続性のスタッカート様のせきの後、吸気時に笛のような音がして(whoop)、しばしばそれにおう吐を伴うといった特徴的な症状を呈します。この発作的なせきは数回から十数回繰り返されます(これをレプリーゼと言います)。3〜4週間程度非常に激しい症状が続きますが、その後徐々に軽減していきます。しかし1~2カ月、時には数カ月にわたり、発作的なせきが見られます。なお、発熱が見られることはまれです。

合併症としては、肺炎(11.8%)、けいれん(1.4%)、脳症(0.2%)などが挙げられます。特に3カ月未満の乳児では重症化することがあり、時に無呼吸発作を起こし死亡することもあります。生後2カ月未満で罹患(りかん)した場合、死亡率がおよそ1%といわれています。また生後1〜2カ月までに感染した場合は、せきを伴わずいきなり無呼吸発作によるチアノーゼが見られることもあり、注意が必要です。成人の場合は重症化はまれですが、激しいせきにより、ろっ骨骨折、失神、不眠、失禁を認めることがあり、時に肺炎を合併することもあります。ただしワクチン接種を受けている場合などは典型的な症状が出ないこともあります。

診断
百日ぜきの診断は、以前は菌の培養検査が用いられていましたが感度が十分でないため、血清抗体検査で診断することが多くみられました。最近では菌の遺伝子検査の一つであるLAMP法(loop-mediated isothermal amplification)が開発され、簡便・迅速な診断が可能となり、この方法は 2016年11月から健康保険適用となっています。

感染経路、感染力
感染経路は患者のせきやくしゃみで飛散した菌を吸い込むことによる飛沫感染と、唾液やたんなどに触れることによる接触感染です。最も感染力があるのは、発症後2週間です。ただし適切な抗菌薬による治療が開始されている場合は、5日間経過すれば感染力はなくなるといわれています。

百日ぜきの感染力は強いといわれ、家族内接触による発病は80%以上とされています。6カ月未満の乳児の推定感染経路として、同胞からが42% 、両親からが15%前後とされ、重症化しやすい乳児を守るために周囲の予防が大切だといわれています。

2.予防

百日ぜきの予防は、まずワクチン接種の徹底です。わが国に百日ぜきワクチンが導入されたのは1950年でありこの時は単独のワクチンでありました。その後1958年からはジフテリアとの2種混合ワクチン、1972年からは破傷風を含めた3種混合ワクチンとして接種されるようになりました。しかし、ワクチンによる脳炎の発症がみられたため一時休止された時期があり、患者数が増加しましたが、その後ワクチンの改良が進み、接種率は再び向上しました。さらに接種年齢が2歳から3カ月に引き下げられました。2012年からはポリオも入れた4種混合のワクチンが導入されています。現在、百日ぜきその物のワクチン接種回数は、合計4回となっています。

ワクチンの効果は、4〜12年で漸減すると考えられており、罹患者の半数以上が4回のワクチン接種歴があるといわれています。そのため抗原量を減量した3種混合ワクチン接種を成人期に行うことも海外では行われています。日本でも就学前5〜7歳時にこのワクチンの接種することを推奨していますが、定期接種にはなっていません。

3.感染した場合の治療・対策

感染した場合の治療としては、マクロライド系の抗菌薬を5日間服用することが推奨されています。ただし咳嗽(がいそう、せきのこと)が始まって3週間以上経過していると薬の効果がないこともあります。学校保健安全法では特有のせきが消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで出席停止とされています。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでありません。

家族内など濃厚接触者への感染防止対策として、抗菌薬の予防投与という方法がありますが、日本では保険適応はなく、予防投与に関する特別な指針はありません。

乳児の百日ぜき重症例の治療としては、ピペラシリンなどのペニシリン系あるいはセファロスポリンなどの抗菌薬を使用することもあります。また毒素の中和目的にγグロブリン大量投与療法を行うこともあります。

2018年1月1日から届け出方法が変わり、適切な検査診断で百日ぜきと診断された症例は年齢を問わず全数把握疾患として報告することになりました。より正確なサーベイランスにより、乳児の罹患者の感染源が周囲の家族であることも明確になり、今後の対策として予防接種の変更も含め対策がとられていくことになると考えられます。

(了)