警備員は、工事現場での交通誘導や花火大会での雑踏警備など私たちに身近な業務を行う一方、国際会議やVIP来日時の警備などの警察官に近い職務を担っています。今では、駐車禁止区域での違法駐車の取り締まり業務や官民共同PFI刑務所の警備といった公務員と同じ権限を持つ業務をも、警備員が行うようになりました。社会の秩序と人びとの安心・安全を守るうえで、警備員の役割は大きくなり、責任は重いものとなっています。空港や港湾、駅などの公共施設では、警察官と連携して警備を行うことも多く、警察官が近くにいないときには一般の人から通報を受け、警備員がまず現場へ駆け付ける時も少なくありません。しかし、警備員はあくまでも警備員です。警察官ではなく、民間人なのです。万一の事態に遭遇した場合に備えて警棒を持ち、実技の訓練を徹底的に受けていても、私たちと同等の権限しか持たない民間人なのです。

駐車違反の取り締まりや刑務所内警備を行っている警備員にはその狭い領域内でのみ有効な権限が付与されていますが、これは特殊な警備形態です。警備員は、警察官のような強制力を持った取り調べや立ち入り調査、職務質問などは一切できません。私たちと同じ民間人としての権限しかありませんので、現場における尋問などは警備員が行ってはいけません。

警備業法第15条 (警備業務実施の基本原則) 
警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。

警察官と似たような制服を着用し、人々の監視や犯罪抑止業務に当たる警備員は、ともすれば警察官と同等の権限を持っていると自身で誤解し、警察官のようにふるまう者もいます。警備員が民間人としての権限以上の行為を抑制し、警察官と同等の権限は持たないことを警備員自身に理解させるため、警備業法の基本原則が存在しています。

権限と権利の限界

テレビで「万引きGメン」と呼ばれる施設巡回警備員の活躍を描いたドラマがありますよね。ドラマでは、警備員が万引き犯を裏の事務所に連れていき、「名前は?」「家族は?」「なぜ万引きしたのか?」といった質問シーンがよくありますが、実際は警備員が尋問などを行うことは禁じられています。これらは任意の同行であり、強制力はありません。とはいえ、万引きした人をそのまま帰すことはできないので、警察官が到着するまで、事務所で待ってもらうということになります。

刑事訴訟法第214条 (現行犯人を逮捕した場合の措置)
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕した時は、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

214条に明確に記載されているとおり、現行犯人逮捕の権限は私たち民間人にもありますが、その後の調書取り、身体検査、所持品検査などを行う権限は一切与えられていません。ドラマのような強制力を持っての取調べ類似行為は現実には警備員に許されていません。

警備員は、その業務上、警察官よりも先に危険な(危険そうな)人物と出くわすことはありますが、警察官のように職務質問をする権限はなく、武器を持つ権利もありません。不審者を発見し攻撃されたとしても、自身を守るべき武器を携帯していないため、素手で相手に立ち向かわなければなりません。

現金輸送や貴重品運搬業務に就く警備員は、警戒棒の携帯が認められていますが、相手がナイフや銃を持っていたら警戒棒だけを武器にして無傷でいられるでしょうか? 危険と隣り合わせで私たちの安心と安全を守ってくれている警備員が日本中にいます。

戦々恐々ハロウィン

いつの間にか日本にも根付いたハロウィンが今年もやってきます。悪霊を払い、秋の恵みに感謝するためのハロウィンですが、日本では仮装した人々がアルコールを飲んで暴れたり、道路を占領して車の通行を妨害したり、店の看板を壊したりするエリアがあります。

2018年のハロウィンでトラブルが相次いだ渋谷区は、今年のハロウィン対策に1億円以上かけ、公共の場所での飲酒禁止を決定し、近隣店舗には酒類販売の自粛などを要請し、渋谷駅前のスクランブル交差点や付近に警備員100人以上を配置すると発表しました。

このように、身近なところや危険なエリアには警備員が配置されます。事件・事故を未然に防ぐため、また起きてしまった時の対応のためにも警備員が必要です。決してイベントの邪魔はしないように静かに立哨している彼らの存在を確認して初めて私たちは安心してイベントを楽しむことができます。警備員が一人も見当たらないと逆に不安になることもありますよね。権限もなく、武器も持たない彼らですが、その存在意義はとても大きいのです。

さて、ハロウィンですが、警備員や警察の世話にはならないように皆さんも大いに楽しんでください。

(了)