先日、台風19号の際、テレビを見ていてハッと気付いたことがありました。ある病院が停電となり、ベッドのリクライニングが電動であったために患者に食事を食べさせるのがとても困ったというのです。ベッドが食事用に戻らないというハプニングです。私は早速「停電、ガス、水道停止という設定で模擬訓練」を自宅で試みることを思いつき、2日間かけて実行したので、皆さまにお伝えします。

停電の模擬訓練

実施日:10月14日 午前11時 室温30度
実施場所:自宅台所
実施目的:昼食の料理

早速訓練を開始。停電になるとどんな事態になるか、それはおおよそ見当がつくが実際やってみないと分からない。そしてやはり想定外の事態に。その一部を次の一編の詩に書き留めてみた。

模擬訓練  奧田和子

本日 午前11時決行。模擬停電なり。
クーラーの使用を禁じ、台所に立つ。


にわかに 汗あふれ、顔面を覆い、眼球に侵入。
痛み耐え難し


さてはて、輪切り転じて乱切りに。
味付け転じて汗味に。

盛り付け転じて投げやりに。


体しなびてダイエット効果大なり。
いつしか、汗絶える。 

冷房、換気扇の電源をOFF
冷房がないため暑い、蒸し風呂。ガスは使用できる前提なので台所で煮炊きをする。そのために部屋の温度がどんどん上昇。停電だから換気扇は使えない。湿気が高く、汗が一気に噴き出す。手拭いを首に巻くが、汗が顔面を覆い目に入り染みて目が痛い。眼の前が曇ってナスを切っていたがまともに見えない。味付けのしょうゆ瓶すら見えない。汗がしたたり落ちる。皿が見えにくい。仕方なく手当たり次第に盛り付ける。何とか完成。冷蔵庫で冷やそうとしたがその作業はもちろん停電だからできはしない。例年より気温が高く10月になっても30℃超えで冷房がない。台所仕事は無理。

電気釜、冷蔵庫、電子レンジのスイッチをOFF
ご飯が炊けないので、断念する。トースターもダメ。冷やしそうめんも冷蔵庫が使えないから冷やせない。冷凍のピラフを電子レンジで温めようとしたが停電。結局、主食なしの昼食で、おかずだけ食べる。

ポット、コーヒーミルスイッチOFF
食後のコーヒーなし。午後の紅茶(備蓄品)を室温で飲む。
後片付けは食器洗い機が使えないので手洗い。

昼食づくりは大幅に制約された。水道とガスが使用できたのでなんとか野菜の煮物ができた。電気に相当依存していることが身に染みて分かった。電気が使えないとまともに料理はできない。もし、夕食の場合、早い時間に食べないと日没で暗くなる。電灯がつかないのでさらに不自由。

外出 ドライヤー、ガレージのシャッター、セコムの外出ボタンOFF
さて、散々な目に遭った午後、外出のために化粧室で髪のセットをしようとする。しかし、ドライヤーが動かない。車で出かけようとしてハタと困った。ガレージのシャッターが開かない。セコムをしているが、外出ボタンを押しても作動しない。仕方なく外出を諦める。

芝刈り機、電灯、雨戸(電動)OFF
そうだ、懸案の芝刈りでもするか!と、芝刈り機を持ち出してみる。しかし、コンセントを差し込もうとして停電だからダメ。では、読書でもしようと本を片手に部屋に戻るが、部屋はすでに暗くなりかけているからダメ。では、風呂にでも入るかと思いきや、風呂も点火しない。そんな始末で次々に予定の変更を迫られる。そんなときどうすればいいか? 模擬訓練はその対応策を考えるチャンスになる。

【解説】
これは、私の場合ですので、おそらく、もっと便利な電気器具をお持ちの方がいることでしょう。例えば、家族の介護をしておられる場合、流動食などを作るためには多様な器具が必要になります。そこで、参考までに台所で使う電気製品を挙げてみました(表)。

この他、電気器具を使えなくて困ったものもまとめてみました(表)。

ガス、水道停止の模擬訓練

次に、ガス、水道を使わないという設定の模擬訓練を以下行う。停電はすでに解消したので電気は使用可という設定。
実施日:10月27日 午前11時 室温23度
実施場所:自宅台所
実施目的:昼食の料理

買い置きの食パンでサンドイッチを作る。卵をゆでようとするが水とガスがない。仕方なく戸棚の奥からホットプレートを出し、溶き卵をほろほろ卵にする。冷蔵庫からキュウリを出し、洗おうとするが水道が出ない。幅広に切ってホットプレートでざっと焼く。トマトはお手拭きで拭う。ともにざっと切る。パンはホットプレートで焼く。ホットプレート“さまさま”である。出来上がり! 紙皿に乗せる。これでは野菜が足りないので、野菜ジュース缶を缶ごと飲む。

以上のことから、水道が出ないことを予想して、野菜類は買ってきて冷蔵庫に入れる前に洗ってラップに包んでおくと困らないと気付く。卵も暇なときにゆでておくと使い勝手が良い。お茶などの飲み物類も一昔前のように手作りにして冷やしておくとよいことが分かる。ペットボトルを買うのは環境汚染の原因になるので、備蓄品以外は手作りでしのぐとよい。ガスと水道が出なくても停電より困らないことを実感したお昼時であった。

パックご飯、冷凍ピラフ、冷凍炒めご飯、冷凍餃子、冷凍シュウマイ、アルファ化米などは、電子レンジを使うと短時間でご飯の用意ができる。電子レンジが使えないときはホットプレートを利用する。両器具は焼く、煮る、炒める、蒸すなど広範囲の料理が可能で便利。

トイレで困る 
トイレに行く際、水道が出ないので困った。午前2回、午後2回、夕方2回、就寝前1回、朝までに1日計8回トイレを使用した。全て簡易トイレ(災害用備蓄品)をトイレの内枠にセットして使う。ビニール袋を広げると中に凝固剤、殺菌剤、芳香剤が入っていた。3回に1回取り替え3袋使用した。在庫が減ったのでトイレ内に在庫状況を書いて貼っておくとよいことに気付いた。

なるべくトイレットペーパーを少なめに使うようにした。汚い話だが、使用済みのトイレットペーパーは小さめで使用済みの買い物袋を再利用し、使用後、袋の口をきつく縛る方法で別処理した方がよいことが分かる。

トイレの後の手洗いはウエットティッシュで拭き、その後アルコールで丁寧に拭いておく。

風呂はどうする?
一番困るのは風呂だ。これはガス使用の場合は使用不可能だが、水がないので、我慢するしかない。しかし、どうしても汗をかいて体がべたつくときは、製氷室の溶けた水を利用してタオルをぬらし体を拭く。設定では、電気が回復しているので、湯沸かしポットで湯を沸かし洗面器に入れてタオルを浸しよく絞って体を拭く。乳児や幼児、病人には適している。

風呂は熱源と水道の両方が使えないので困る。大型の風呂は大いに困る。なるべく家族風呂でなく1人用の風呂が災害時にはありがたい。水を大量に消費する風呂は家庭用には好ましくない。

模擬訓練を通じて気付いたこと

以上、2日間を犠牲にして1日目は「停電の模擬訓練」、2日目は「ガス、水道停止時の模擬訓練」を試みました。普段想像した以上に厄介で、苦しいものでした。

災害時には停電、ガス、水道停止の3拍子が同時に起こることが多いです。災害時に初体験すると、慌てたり、想定外だと愚痴をこぼしたりしがちなので、余裕のある時に各自・家族ぐるみで模擬訓練に挑戦してみてはいかがでしょうか。貴重な訓練になること間違いなしです。

こうした訓練は、企業、病院などいろいろの職域で実際にやってみると思わぬ気付きがあり、本番で困らないのではないかと思います。

(了)