災害時に、みんなが安心して利用できるトイレを設置するには、何を準備したらよいのだろうか?写真は「阪神・淡路大震災により避難所になった学校体育館の内部。神戸市中央区」(神戸市 - 阪神・淡路大震災「1.17の記録」より)

災害時のトイレ問題について、今回が最後となります。
まず前編、中編はこちらから。

■間違っていませんか?災害直後、トイレに水を流すのはNGです!
(災害時のトイレ問題 15の最新事情 【前編】)

http://www.risktaisaku.com/articles/-/2236

■災害時のトイレ「いちかばちか流しちゃえ!」はダメ!きちんと話し合って計画を立てよう(災害時のトイレ問題 15の最新事情 【中編】)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2245

最終回は、避難所のトイレの問題についてです。衛生・感染症対策や男女のトイレ問題など、最新の知見をお届けします♪

13、衛生・感染症対策

衛生面も含めた快適なトイレ環境については、本稿の前編に登場した防衛医科大学校救急部兼防衛医学研究センター准教授の秋冨慎司先生のご意見が反映された、とてもわかりやすい資料が2016年3月に国土交通省から発表されています。皆さんもう読まれましたか?

出典:「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/common/001121937.pdf
出典:「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省HP) http://www.mlit.go.jp/common/001121937.pdf

企業の方は、業者にトイレ掃除をおまかせというところも少なくないかもしれません。そうすると、これらの衛生グッズがどこにあるかわからないかもしれません。備蓄と訓練が必要になりますね!

14、マンホールトイレだけじゃない。役にたつ国土交通省資料

ところでこの資料、「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」とあるのでつい「マンホールトイレ?うちは関係ない」と思われてしまって、見ていない方もいるかもしれません。でも、すべての方に見てほしい、避難所のトイレ運営全般に役立つ資料になっています。

出典:「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省HP) http://www.mlit.go.jp/common/001121937.pdf

例えば、

人目につきやすい場所に設置!

出典:「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省HP) http://www.mlit.go.jp/common/001121937.pdf
 

安全上大事ですよね。
 

男女別を基本とし、男女の出入口の向きを変えるなど、動線を分けて設置する
 

そうそう。向きが一緒だと防犯上不安になりますから。
 

車いすでもアクセスできる配置


バリアフリーやLGBTQの方でも気兼ねなく使える誰でもトイレの発想、災害時に少なくて問題になっていました。小学生から中学生までの男の子と女性保護者が近くまで行けるトイレというのも、防犯上大切です。配置って、結構大切です♪

容易に開けられない。中と外に照明〜シルエットがみえない~。

出典:「マンホールトイレ 整備・運用のためのガイドライン」(国土交通省HP) http://www.mlit.go.jp/common/001121937.pdf


簡単に開いてしまうトイレなんて入れないし、トイレに行きたくなくなりますよね。こんな風にかゆいところに手が届く、すてきなガイドラインです♪秋冨先生に質問するたびに、ガイドラインに書いてますよと笑顔でおっしゃった意味がよくわかります。

もう1つ、国土交通省ガイドラインのここにも注目してほしいです。
 

「女性用トイレを男性用トイレよりも多くする」
ということや、

 

 

 


「女性や要配慮者等に意見を求め、安全性や快適性を高めることに努める」

と書いています。

これは、かの難民支援の国際基準である「スフィア基準」を彷彿させる文章ではないですか♪

 
スフィア基準(https://www.refugee.or.jp/sphere/)ではこう書かれています。
• 衛生の促進に必要な物品について男女両方および広い年齢層の被災者から意見を聴く。特に適切な生理用品について女性や少女に意見を聴く。(P.86-89)
• あらゆる年齢層の男女および多様な脆弱な人々から支援に関する意見を聴く。発言しにくい障壁があれば取り除く(P.51-53)

難民支援の国際基準では、女性というだけでなく少女やあらゆる年齢層、多様な人から意見を出しやすいようにと配慮されています。マンホールトイレのガイドラインでは「少女」とは書いていませんが、「要配慮者」とあるので少女を含むあらゆるの気持ちにも配慮してくれてますよ!専門家の意見も大事だけど、一番現場で困ってる人の声を大事にするガイドラインっていままでなかったように思います。ほんとに画期的♪

被災地でトイレのことは「女性から言い出しにくかった」との声があがるたびに、災害対策の先進国であるべき日本ももっとなんとかならないかなあと思っていたので、こんなに素敵なガイドラインができたことが嬉しいです!

15、「避難所のトイレ、どれくらいの数が必要なの?」の基準も提供

 

マンホールトイレの設置基準数は「50〜100人に1基」と明記されているのも、嬉しいです。今まで明記されていなかったので、マンションなどで準備しにくかったという実情がありました。

50人に1基だと、1人1日6回(女性は5回〜10回)行くとしたら、1日300回使用されることになり、入退室時間を入れて1人平均5分利用するとしたら、1500分は使用中になります。

24時間は1440分なので、深夜も休みなく利用されて初めて、待ち時間なしが50人に1基のイメージです。実際は利用時間が重なるので、順番待ちは50人に1基でも発生するということになります。

マンホールの話題だからとか、省が違うからと参考にしないのはもったいないです。各地の避難所やマンション、職場で活用できる場面がたくさんありそうですね!

おまけ 最後におすすめ

災害時のトイレについて、編集部にはひどい状態のトイレ写真があります。見たら「なんとかしなくては」と真剣に考える人が、絶対に増えると思われる写真だそうです。

でも、同じような写真を持っている方も、とても公開できないとおっしゃいます。トイレだけではなく、裏山が・・公園が・・空き地が・・という惨状写真も公開しにくいです。そうなってしまった人たちが特に問題があるように見えてしまっても困ります。

そうではなく、事前の備えがなければ、どこでもだれでも起こりうる問題です。事実を伝えにくいので、なかなか教訓が伝わりにくいところかもしれません。イメージを持てた方から人に伝えていってほしいと思っています。

本稿の中編でも登場した弁護士法人リーガル・プロ代表で弁護士の鹿瀬島正剛氏(http://www.legal-pro.jp)から、希望を持てるお話をうかがいました。熊本地震では火事が少なかったのですが、避難所では口々にみなさんが「ブレーカーを落としてから逃げてきた」と話していたそうです。過去の地震の教訓を各自が思い出し、生かしたのですね。

次の災害には、熊本の皆さんを見習って、今度こそはトイレの教訓を生かしませんか?

そのためには、今回ご紹介した講師の方々の話をぜひ、生で聴いていただきたいと思います。思わず笑顔になる話や涙ぐむ話から、裏話もたくさんお持ちの皆さまです。リスク対策.comでもまた、災害とトイレについて何かイベントがありそうです♪お楽しみに♪

それでは皆さま、トイレを備えてよいお年をお迎えくださいね♪

(了)