知られざる面白いものがあります

今年は、ハザードマップの重要性が話題になりましたね。台風が来た際、初めてハザードマップを読んだ!という方も声もお聞きしました。そして、洪水や浸水被害があった地域を見るとハザードマップの想定内だったというケースも知られるようになりました。

でも…

地震や水害が起きる前に見た方がいいのがわかっているけど、なかなか見られないのが、ハザードマップでもありますよね。なぜって、これを言ったら怒られそうだし、苦労して作成した自治体の皆さんごめんなさいなのですが、自治体や行政が作っているものは、どうしても、つまらなくなりがちです。間違いがないように、正確に、すべての情報を網羅しようとするので、どこが重要かの強弱がわかりにくくて、いってみれば、できの悪い参考書というか、網羅しているだけの教科書みたいな感じです(言ってしまった 汗)。

正確性の担保はとても重要な事なんですけどね!

さて、私は全国で防災の講演をしていることもあり、毎日、いろいろな地域のハザードマップを読んでいます。いろいろな所のハザードマップを読むので、中には「これは!」っていう面白いものも発見します。でも、地域の人にとっては、それが唯一のハザードマップなので、良さに気づいていない事がほとんどなのです。ハザードマップの性質上、他府県に発信されたり紹介されたりってほとんどないみたい。なので、全国には知られていないおもしろいハザードマップの一部をご紹介します。

若さとわかりやすさの高松市

まずはこちら。香川県高松市のハザードマップ。

表紙はこれです。

高松市がキラキラしています(笑)
そして表紙の4人、「この人たちは?」ということで、目次を開くと、こんな紹介が出てきます。

ハザードマップの地図についてはとりあえず、赤になっているか白いかだけを見て、その他の解説は読まないでスルーってこともありがちですが、こんな形で地域の大学生が紹介されているハザードマップの解説だと、思わず読んでしまったりしませんか?

大学生のみなさま、吹き出しセリフでいろいろ登場されます。

「この対策が重要です」とか一言入っているだけで、解説も読めてしまうっていうのがあるように思います♪

さらに、大学生が登場していないページでも、「“高松は大丈夫”は、大きな間違い」って書いてあるのでドキッとしますよね。

「大丈夫」神話がある地域では、行政も一緒になって、うちは災害が少ない地域ですとアピールしがちな場合も多い中、データに基づいてしっかりした情報発信をされています。

実は、東日本大震災直後、高知や徳島では、津波被害想定から防災への関心は強かったですが、香川県は、普段から雨も少ない地域だということもあって、安全神話が強めという印象でした。

今でも地元の防災関係の方にお聞きすると、防災意識低めであることを指摘されますが、今年はひと月に4回も香川県に講演で入ったこともあって、今、変わりつつある旬な地域かもという印象です。

また大学生だけではなく、高校生も登場したり、地域の人もハザードマップの解説に登場します。「自主防災リーダーに聞く!ズバリ!!あなたのまちの防災活動を教えてください!!」というタイトルのあとに書かれていると、ただ自主防災リーダーが紹介されているだけの場合より読んでしまう気がするんですが、どうでしょうか?

そして、地元の方が登場することで、災害対策が自分ごとになる気がします♪
平等や公平を重視する行政のマップでは、冒険的な取り組みは難しいかもしれませんが、こんな前例もあることも知っておいていただければと思います。地域の大学生も含め多様な人と一緒に行動していけるといいですよね!

親しみやすさがプラスに

高松市はどうしてこういうハザードマップを作ろうと思ったのか知りたくて、危機管理課にお聞きしました。「たかまつ防災マップは、南海東南海地震等の大規模災害が発生した際に、住民の的確な避難行動につながるよう、平成26年度(2014年度)に作成されたものです。高齢者はもちろん、若者等にも興味を持ってもらう必要があることから学生にも御協力いただき、少しでも防災を身近かに感じられるよう取り組んだ結果、現在の形にとなりました」というお話でした。

写真を拡大 高松市ハザードマップより

監修された香川大学 創造工学部防災・危機管理コース教授 長谷川修一先生にもお話をうかがうことができました♪ 長谷川先生によると、「高松市の防災マップは、愛媛県松山市に本社がある印刷会社のセキ(株)が受注して作成されたため、防災マップの専門業でなかったため、親しみやすい視点が加わったように思います。専門家から見ると、防災マップに物足りなさを感じておりますが、まずは防災マップに関心を持ってもらおうことが大事だと、提案を受けて協力しました」とのことです。

ただ、残念なこともあったようです。

「各家庭に配布後、防災マップが大量に資源ごみに出されたようなので、中身を見ないで処分する人が多いのが残念です」。

全国的にもめずらしいマップだったにも関わらず捨てられちゃったのですね。残念です。

このマップを通じて、住民に考えてほしいことを長谷川先生にお聞きしたところ

「自分が災害に会う可能性があることを知ってもらいたいと思います。また、なぜハザードマップで危険と表示されているのか、危険の表示がないのはなぜかを考えてもらいたいと思います。ハザードが表示されていないのは、調査されていないため、ハザードマップがまだ作成されていないためだけかもしれないので、ぜひ市町村の担当者や専門家を呼んで解説してもらい、さらには防災マップを使ってまち歩きをしたり、避難訓練をしてほしいと思います」

と教えていただきました。

ここ、私も強調したいところです。

赤いところは現在わかっている想定の数字でそうなっているだけで、白は安全という意味ではないですからねー。想定を超えたり、想定されてないケースだと白も危険な場所になるのです。

足立区は動画で説明

さて、次は洪水ハザードマップです。これは東京都江戸川区の「ここにいてはダメです」が有名です。過去記事にも書きました。

避難の合言葉は「ここにいてはダメ」と「551」?
https://www.risktaisaku.com/articles/-/17742

今回は、同じ想定が出ている江東5区内の足立区のハザードマップの解説動画をご紹介します。

足立区の解説動画は足立区以外の方ても見てほしいです。というのも、洪水ハザードマップの図の見方のコツがわかりやすいのです。


足立区洪水ハザードマップ(通常版・字幕入、出典:YouTube)

どんなことが紹介されているかというと、

岡山県倉敷市真備町と比較して

川に囲まれた地形はよく似ていることが指摘されています。

そして荒川が氾濫した場合の北千住駅の水没がAR(拡張現実)で説明されているので、実際の地域がどうなるかイメージしやすいです。

ハザードマップの浸水区域だけをチェックする方が多いですが、

それだけでなく、クロスチェックは、家屋が倒壊する可能性のある地域であることが書かれています。この「家屋倒壊等氾濫想定区域図」は、2016年9月に国土交通省が公表した資料が反映されているハザードマップには記載されているのですが、まだまだ知られていないので、このように動画で説明してくれているとわかりやすくていいなと思っています。

それから、浸水継続時間についても説明されています。

また、台風19号後の荒川流域で講演した際、多くの人がチェックしていなかったとおっしゃっていた重要ポイントについても紹介されています。

講演の際、地域のみなさまにお聞きしたら、東京の雨はチェックしたけど、上流の埼玉の雨については確認しなかったという人がほとんどでした。ここは盲点になりやすいのかもしれません。

世田谷区の危機管理課の報告会でお聞きした事例(多摩川)でも、避難所に避難した後、台風が通過して雨が止んだので自宅に戻った方がいらっしゃったそうです。上流の雨によって水位は後からあがってくるので、雨が止み晴れていたとしても氾濫、増水、浸水の危険であることをイメージできていないということですよね。川は時間差で水位があがる、上流の雨に注意というのは、川遊びの基本の基本なので知っていてほしいです。

さて、荒川については、もうひとつお勧め動画があります。


フィクションドキュメンタリー「荒川氾濫」 H29 3 改訂版(出典:YouTube)

この動画の想定は荒川上流に3日間降水量500ミリを超える雨が降ったケースですが、台風19号では、総雨量が三峰山頂雨量観測所で595ミリ、名栗雨量観測所で562ミリでしたので、このドキュメンタリーの通りになっていておかしくない雨量でした。

動画ではどこが治水上不安がある場所なのか説明されています。

具体的な場所で書かれていてリアルです。


動画のコメント欄にはこれを見たから避難したというものもありました♪ 早期避難をうながすことができる訴求力、すごいです。

想定雨量や内水氾濫を知ろう

さて、ハザードマップでしっかり確認してほしいことあります。想定されている雨量です。

最新のハザードマップは、たとえば荒川だと72時間632ミリ、多摩川だと48時間588ミリというように、その川の想定雨量がちゃんと書かれてケースが増えているのですが、これについては、残念ながら小さく書かれているわかりにくいハザードマップがほとんどなのです。

しっかり目立つように想定雨量が書かれていて、かつ内水氾濫についても洪水と同様に意識できるよう書かれているハザードマップが横浜市の各区のハザードマップです。

洪水では1時間に90ミリ、内水氾濫では1時間に76.5ミリのときにハザードマップの被害が起こる想定です。想定雨量の数字がわかりやすいと自分で考えて行動しやすいので、こんなハザードマップが増えるといいなと思っています。

ちなみに洪水と内水氾濫の違いは、横浜市の水環境キャラ、かばの「だいちゃん」が解説してくれています。

ところで、ご自身の地域のハザードマップがわかりにくければ、川の名前で検索すると国土交通省の資料でおもしろいものが見つけられるかもしれません。

鳥取で講演した際、見たのがこの資料でした。

川の特徴がわかりやすくまとめられていて、

過去の歴史も書かれていたので、こういう、物語性のある説明って読みやすいし頭に入りやすいなと思いました。

最後に過去に氾濫したことのある場所を探しやすいハザードマップが、神奈川県川崎市の浸水実績図です。

表に名前だけ書かれていて地図で表記されていないものはわかりにくいですが、これは検索もしやすいです。

実は、まだまだ紹介したいものがあるのですが、今年で区切りよく終わらなくなるので、このへんで!

地域によってハザードマップの雰囲気が全く違っていたり、または離れた地域でも作成業者が同じだと解説部分が同じマップになっていたりするんですよ!

みなさまのハザードマップを年末年始、今一度見直していただけるといいなと思っています。災害時に見にいってもフリーズして読めない場合もありましたから、あらかじめチェックしたり、ダウンロードしておくことをお勧めします!

(了)