年末年始の大渋滞、どうにか避けたい! ※画像はイメージです

年末年始の高速道路の渋滞に頭を悩ませる親世代の読者も多いだろう。しかし渋滞を1つの「リスク」と捉えれば、事前の準備行動と能動的に情報を収集することによって軽減できる可能性は高い。日常の中で危機意識を醸成するためにも、そして年末年始を快適に家族で過ごすためにも、渋滞回避をミッションとしてクリアしてほしい。渋滞を科学する『渋滞予報士』として活躍する、東日本高速道路株式会社(以下、NEXCO東日本)の外山敬祐氏に、賢い渋滞の回避方法を取材した。

NEXCO東日本の渋滞予報士、外山敬祐氏

『渋滞予報士』とは、2007年からNEXCO東日本が発足させた「渋滞を科学するスペシャリスト」のこと。現在の外山敬祐氏で5代目になる。その使命はズバリ「高速道路の渋滞を減らすこと」。渋滞予測や渋滞原因のメカニズムを広報することで、渋滞を軽減している。

「予報士」とは同社が付けた愛称で、外山氏は同社の関東支社交通技術課に所属。渋滞の原因となる道路のハード対策の企画立案から、ドライバーへの正しい知識の普及まで広く渋滞軽減に取り組んでいる。もちろん同社は道路拡張などのハード部分も成果を上げているのだが、やはり1人ひとりのドライバーの心構えにより渋滞が緩和する可能性が高いという。外山氏に、渋滞回避の3つのポイントを聞いた。

もしかしたら原因はあなたかも?『サグ』のメカニズムを理解しよう

【渋滞回避の3つのポイント】
1、「サグ」のメカニズムを理解して速度低下を防げ
2、アプリなどの情報
を活用して賢く渋滞を回避
3、何をおいても安全運転!


渋滞予報士の外山氏は「渋滞の原因に事故や工事をイメージする人は多いが、実は全体では2割にも満たない。約8割は交通集中と呼ばれるいわゆる自然渋滞だ。その自然渋滞をさらにみると、渋滞は『上り坂・サグ』と呼ばれる場所で約6割も発生している。すなわち、NEXCO東日本関東支社が管轄する道路の全体では渋滞の約5割は『上り坂・サグ』で発生しているのです」と、渋滞の一番の原因について説明する。

写真を拡大 『サグ』のメカニズム(資料提供:NEXCO東日本)



サグとは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のこと。英語の「sag」が語源で、もともとは橋や天井などの中心にできる「たわみ」のことを指す。上図のように、サグは上り坂であることにドライバーが気づきにくく、無意識のうちに速度低下を起こす。

ほんの少しの速度低下でも、後続車との間隔が狭まるため、後続車はブレーキを踏む。その次の車はさらにブレーキを踏むので「減速波」が発生。そのブレーキの時間は後ろに行けば行くほど長くなるので、最後の車は0キロ、いわゆる停車状態に陥るのだ。

外山氏は「渋滞を抜けるときに、「渋滞の先頭には何も事故など起きていないのに、なぜあんなに混んでいたんだろう?」と思うことがよくあるでしょう。それはサグが原因なのです」と話す。

写真を拡大  速度回復表示板を見たら、「速度が低下しているかもしれない!」ことを理解しよう (資料提供:NEXCO東日本)

よく高速道路の電光掲示板で「速度低下に注意」や、「速度回復願います」といった表示を見ることはないだろうか。これは車両がサグに差し掛かった時に、無意識に速度が低下しないように注意しているものなのだ。

ただし、正直なところ「速度低下に注意」と言われると「速度を落とさなければいけないのか?」と考えてしまう読者も多いのではないだろうか。しかし高速道路を預かる会社として、スピードアップをむやみに助長するような表現をすることは難しいことも理解できる。現在のところ、これが精いっぱいの表現なのだろう。

外山氏は「サグ部に差し掛かったら、速度低下を起こさないように走行してほしい。そのために、他にもさまざまな仕掛けをしています」とする。

例えば、神奈川県の川崎浮島JCT(ジャンクション)から千葉県の木更津金田ICを結ぶ東京湾アクアラインは、ほとんどがトンネルの中であるうえにほとんどが上りと下りの勾配で成り立っている。当然、緩い勾配から急な勾配に差し掛かった時に速度は低下するが、そこに同社が設置したのが「ペースメーカーライト(PML)」だ。

写真を拡大 PML(ペースメーカーライト)により、アクアラインの平均所要時間が約6分短縮した(資料提供:NEXCO東日本)

トンネル側面のLEDライトを進行方向に順次点灯させる対策で、交通状況に応じて光の流れる速度を切り替えることで、ドライバーに適切な速度を誘導するものだ。PLMを設置したところ、交通量はあがっているにもかかわらず路線全体の渋滞損失時間は2割減少し、平均所要時間は2割(約6分)短縮したという。
「まず、サグのメカニズムをドライバーの皆さんに理解していただくことが大切」(外山氏)

「急がば回れ」?アプリなどを活用して渋滞を回避せよ!

写真を拡大 北関東道経由のほうが、遠回りでも所要時間が少ないことが観測された(資料提供:NEXCO東日本)

上図のように高崎ICから川口JCTに向かう場合、渋滞の状況により一番遠回りの【ルート3】北関東道経由のほうが関越道を直進する【ルート1】よりも30分速いという事例が観測されている(2016年1月2日(土)10時~14時に高崎ICを通過した事例)。

外山氏は「NEXCO東日本が提供するアプリ「ドラぷら」やホームページでは、半年先までの道路の渋滞予測を発表しているほか、料金についても最新の情報が掲載されています。ぜひチェックして、年末年始の渋滞緩和にご協力をお願いしたい」とする。

「ドラぷら」ホームページのスクリーンショット http://www.driveplaza.com/
「ドラぷら」アプリはこちらからダウンロードできる http://www.driveplaza.com/dorapura_app/

「渋滞予報」は、過去データの積み重ねだ。簡単に言うと、過去2年分の道路の渋滞状況と、「直近の日付と曜日が同じになる年」の計3年分を重ね合わせて算出するのが基本パターン。道路状況は曜日と休日の組み合わせに大きく左右されるためだ。

半年先まで予報しており、今現在でもホームページやアプリを起動すれば年末年始の渋滞状況を確認できるので、ぜひチェックしてほしい。渋滞を避けるには、なんといっても渋滞発生のピーク日や時間帯をずらしてもらうのが最も有効だからだ。

写真を拡大 「どらトラ」の渋滞予報カレンダーより。http://www.drivetraffic.jp/ 画像は2017年1月3日16時の渋滞予想。

外山氏は「例えば木更津市では、渋滞が発生する夕方に車で帰るのではなく、夕食のクーポン券を発行することで夜まで市内にとどまってもらい、地域振興と組み合わせた渋滞軽減に努めている。ちょっとしたアイデアで渋滞のピークを一人ひとりが回避すれば、渋滞は軽減されるはず」と強調する。

木更津市の「週末木更津計画」パンフレット

■土日祝日限定ヨル得アクアライン渋滞すいすいプロジェクト
(NEXCO東日本:「ドラぷら」HP)
http://www.driveplaza.com/sapa/event_campaign/detail/aqualinepro-yorutoku2016.html

また、同社ではドライバーに伝えたい広報情報に加え、今年から交通状況に関する情報もTwitterで発信している。もちろんドライバーが随時チェックするわけにはいかないが、家族で移動している場合はぜひ助手席に座った方が、運転アシストに活用してもらいたい。

NEXCO東日本Twitter https://twitter.com/e_nexco_kanto



 

高速道路を遠回りした場合でも、料金は起終点間の最安値になる可能性も

昨年9月、国土交通省は首都圏の高速道路料金の改正案である「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」を発表。2016年4月1日から施行されているのをご存じだろうか。この料金改正の大きなポイントの一つは、「ETC車の場合、出発地から目的地まで、どの経路を利用しても、起終点間の最短距離の料金となる」というところだ。これは渋滞解消のための背策の一つで、簡単に言うと「高速道路を遠回りした場合でも、料金は起終点間の最安値になる」というものだ。正確には以下のページをご確認いただきたい。

■首都圏の新たな高速道路料金
http://www.driveplaza.com/info/detail/syutoken_seamless/fee.html

2. 起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現へ

都心部の渋滞等の課題に対して、圏央道や外環道の利用を促すために、ETC車の場合、出発地から目的地まで、どの経路でご利用いただいても、起終点間の最短距離の料金となります。(当面は料金体系の整理・統一における激変緩和措置を考慮し、最安値とします。)
ただし、首都高速経由の料金の方が高い場合には、首都高速経由で走行しても料金は引下げません。(走行経路どおりの料金になります。) 

(NEXCO東日本HP:「ドラぷら」より)

最後は何といっても「安全運転」!

そして最後のポイントは、当たり前かもしれないが「安全運転」だ。年末年始などの交通混雑期は、高速道路上での事故の約半分が渋滞時に発生しているという。

外山氏は、「事故を起こさないためには、心と時間にゆとりのある「安全運転」が一番。しかし渋滞に巻き込まれると、心に余裕がなくなり、注意力も散漫になる。この年末年始はぜひ賢く渋滞を回避し、安全運転で良い1年のはじまりを迎えてほしい」と話している。

(了)