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あなたの街はどのくらい安全ですか?

このような質問を受けたら、あなたはどのように答えるだろうか。「まぁまぁ安全」、「あまり安全ではない」、いろいろな答え方があるだろう。しかし、「安全」とはそもそも何に対して言うのか。「まぁまぁ」「あまり」は具体的に人口の何%ぐらいを言うのか、どのくらいの年齢層についてのことなのか――、人によって、思い浮かべるまちの姿は異なる。こうした異なる安全のイメージを統一の指標で分析するとともに、住民自らが継続的に危険を減らす取り組みを国際基準で認証する「セーフコミュニティ(SC)」制度が世界に広がっている。

セーフコミュニティ制度で27%もケガが減少

「セーフコミュニティ制度」は、事故やケガ、自殺、自傷、暴力、さらには災害などによる人的被害などを減らす取り組みを国際的な統一指標で審査し、認証するというもの。コミュニティとして体系的に取り組むことなどが条件で、日本もすでに14の自治体および区がセーフコミュニティの認証を受け、2つの自治体で認証に向けた活動が進められている。日本では一般社団法人日本セーフコミュニティ推進機構(JISC、代表:白石陽子氏)が認証取得に向けた取り組みを支援している。

セーフコミュニティの定義する危険は、もともとは事故やケガなどの外傷だったが、時代の変化とともに、自殺や自傷、暴力、虐待、さらに自然災害による人的被害などが含まれるようになってきた。「時代とともに定義は多様化しているが、一貫しているのは外的な健康阻害要因によって健康を害することを未然に防ぐということ」とJISC代表の白石氏は説明する。

セーフコミュニティ(SC)の基盤となる取り組みは1975年にスウェーデンにおいて始まったとされる。この年、スカラーボリ郡にあるファルシェーピング市では、すべての年齢層、環境、状況を対象とした包括的な手法によって外傷の発生をコントロールする試みに着手した。「個人で外傷を減らすにはいくら注意しても限界がある。地域ごと安全にすれば多くのケガが予防でき、不必要なケガをしないですむようになるということで、そのモデル都市がつくられることになった」(白石氏)。1978年に外傷に関する記録を開始し翌年に外傷の予防策に着手した。その結果、3年間で就労先・家庭、そして交通に関する受傷は27%も減少したという。この取り組みは周辺の自治体にも広がり、その後ノルウェーやオーストラリアのいくつかのコミュニティでSCへの取り組みが始まり、国を超えたSCのネットワークが誕生した。これまでの実績では、セーフコミュニティの理念に基づき体系的に取り組むことで約25%の外的要因による死亡や受傷は減らすことができることが明らかになっているという。

日本でも16の自治体や区が活動

1986年には、当時、健康課題として外傷に関心を寄せていた世界保健機構(WHO)との協力関係が構築され、1989年にはカロリンスカ医科大学にWHO協働センター(WHO CCCSP)が設置され、SC認証制度が始まった。以来、国や地域を超えてその概念と活動は広がり続け、2017年1月現在で約375のコミュニティが認証されている。2015年からは、WHO CCCSPから独立したセーフコミュニティ認証センターが同制度の運用を行っている。

日本では、2006年に京都府亀岡市がSCに取り組み、2008年3月に国内初となる認証を受けた。以来、SCは日本国内でも広がりはじめ2016年1月現在で16を超える自治体および、一部の区がSCに取り組んでいる。

http://www.jisc-ascsc.jp/sc_japan.html#top1

これが日本のセーフコミュニティだ

以下は、日本におけるセーフコミュニティの取り組みをまとめたものだ。

① 京都府亀岡市
2006年開始2008年3月認証取得
http://www.city.kameoka.kyoto.jp/shise/shisaku/safe-community/index.html

② 青森県十和田市
2007年開始2009年8月認証取得
http://www.city.towada.lg.jp/bunya/safecommunity/

③ 神奈川県厚木市
2008年開始2010年11月認証取得
http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/anshinanzen/safecom/index.html

④ 長野県箕輪町
2009年開始2012年5月認証取得
http://www.town.minowa.nagano.jp/list/sc.html

⑤ 東京都豊島区
2010 年開始2012年11月認証取得 
http://www.city.toshima.lg.jp/022/bosai/026636/

⑥ 長野県小諸市
2010年開始2012年12月認証取得 
http://www.city.komoro.lg.jp/category/bunya/machidukuri/safecommunity/

⑦ 横浜市栄区
2010年開始2013年10月認証取得 
http://www.city.yokohama.lg.jp/sakae/sidemenu/safecommunity/

⑧ 埼玉県北本市
2011年開始2015年2月認証取得 
http://www.city.kitamoto.saitama.jp/kurashi/kyodo/1/index.html

⑨ 大阪府松原市
2011年開始2013年11月認証取得 
http://www.city.matsubara.osaka.jp/index.cfm/6,0,105,html

⑩ 福岡県久留米市
2011年開始2013年12月認証取得 
https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1080shisei/2058safe_commu/

⑪ 滋賀県甲賀市
2012年開始2016年1月認証取得 
http://www.city.koka.lg.jp/8883.htm

⑫ 埼玉県秩父市
2012年開始2015年11月認証取得 
http://www.city.chichibu.lg.jp/4868.html

⑬鹿児島市
2013年開始2016年1月認証取得 
http://www.city.kagoshima.lg.jp/shimin/kikikanri/anshin/bosai/torikumi/

⑭大阪府泉大津市
2014年開始2016年10月認証取得 
http://www.city.izumiotsu.lg.jp/kakuka/sogoseisaku/sctantou/safe_community/index.html

⑮ 福島県郡山市
2014年開始 現在認証に向けて活動中 
http://www.city.koriyama.fukushima.jp/154000/safecommunity/sc_top.html

⑯ さいたま市
2016年開始 現在認証に向けて活動中

※JISC白石陽子氏調べもとに当サイトが加工

厚木市や久留米市で高い効果

こうしたセーフコミュニティの取り組みによる成果を積極的に公表している自治体もある。厚木市では、市内での交通事故の減少に向けて、小学生や高齢者を対象とした交通安全教室や自転車用ヘルメットの着用運動、自転車利用のマナーキャンペーンなどの取り組みを実施。セーフコミュニティに取り組む前の2007年から2015年までに46.3%も事故件数が減少したとしている。防犯対策においては、治安が悪いと感じられている本厚木駅周辺でのパトロール活動や青色回転灯搭載車によるパトロールの実施により犯罪件数(刑法犯認知件数)は41.1%減少。市民の意識についても、治安が悪くなったと感じる人は2007年から43.8%も減少し、逆に、良くなったと感じている人が10.7%ポイント増加した。その他、高齢者の転倒による外傷も10ポイント程度減少している。

福岡県久留米市でも、交通事故がセーフコミュニティへの取り組み前後(2011年~2014年)で9.8%減少。市内における学校の安全対策のモデル校ではケガの発生件数が43.2%減少(〃)、犯罪の認知件数は26.1%減少、防災の取り組みは自主防災訓練の参加者が2.3倍に増加するなど高い効果を出している。

 

安全な取り組みは、観光客や居住者へのPRになるだけでなく、産業誘致をする上でも大きなプラス材料になる。「国際的な友好都市との交流が積極的になっている地区もある」と白石氏は語る。

セーフコミュニティ認証のための指標

セーフコミュニティの認証を取得するためには、7つの指標を満たす必要がある。

  • 指標1.分野の垣根を超えた協働を基盤とした推進組織を設置する

    指標2.両性・全年齢、あらゆる環境・状況をカバーする長期プログラムを継続的に実践する

    指標3.ハイリスクの集団・環境および弱者を対象にしたプログラムを実施する

    指標4.根拠に基づいた取り組みを実施する

    指標5.外傷が発生する頻度とその原因を記録するプログラムを実施する

    指標6.プログラムの内容・実施行程・影響をアセスメントするための評価基準を設定する

    指標7.国内外のSCネットワークへ継続的に参加する
  •  

指標1の分野の垣根を超えた協働では、例えば、警察と消防、自治体防災担当など各分野での安全を推進する組織が協働するということ。指標2では、すべての住民を対象にしたプログラムを構築してPDCAサイクルを回すということ。指標3は、高齢者の事故が多いコミュニティなら高齢者向けのプログラムを実施するなど、リスクが高い人々・環境にフォーカスするということ。例えば、年齢別・要因別に外傷や事故件数を分析することでリスクが高い部分を明確にすることができる。

人的被害データの分析例 出典:JISC 白石氏

指標4は、すべての事故や外傷、災害による人的被害のデータを分析することでケガや事故などの根拠を得る必要がある。そのためには緊急搬送や交通事故のデータを分析し、どこで、どのような被害が多く発生しているかを明らかにする必要がある。指標5・6は、その文章どおり、日常的な事故や災害の発生要因を調べて記録すること、プログラムの効果を評価し改善していくことを求めている。

安全を管理する仕組み

セーフコミュニティは、必ずしも安全な街であることを証明するものではないと白石氏は指摘する。「認証を受けると安全というように受け止められることがあるが、そうではなく、危険な要素や身体的な精神的な危惧が管理されている状態」とする。「自分の住む街での犯罪発生率が全国平均より低いからといって、それがすぐに認証につながるわけではないし、認証を受けたからといって安全な街であるということでもない」(白石氏)

また、セーフコミュニティは、必ずしも自治体の行政区単位で取り組むものではなく、コミュニティとして取り組むべきものであることも白石氏は強調する。つまり、物理的な地域だけでなく、共通の関心事、専門的な組合や連合なども対象になりうる。ただし、「日本では、推進役となるのは通常、行政で、また、数値的なデータも行政の協力なしでは管理できないため、行政区単位での取り組みが多くなっている」(同)。最終的に目指すのは、コミュニティが主体となって住民自らがプログラムを推進することだという。学校だけを対象にしたセーフスクール制度も国内外で広まりつつある。

【セーフコミュニティを進める上で重要な点】

1.地域に耳を傾けること-何がもっとも重要な問題かを地域の住民たちが自分たちで決める

2.地域レベルで、取り組みを調整する

3.住民の傷害・事故予防の大切さについて認識を高める

4.傷害予防には、国レベルの政策も含む

5.高い関心を持つ団体や組織が地域の取り組みを支援する

6.地域の全メンバーを巻き込んで取り組む


東日本大震災以降、自然災害に対するコミュニティの意識は高まりつつあるが、一方で、子どもや高齢者の事故、あるいはいじめや自殺などへの対処も大きな課題になっている。さまざまな危険に目を向け、コミュニティ全体でこうした危険を減らしていくセーフコミュニティの取り組みは、今後の安全な街づくりを進めていく上で大きなヒントになりそうだ。

一般社団法人日本セーフコミュニティ推進機構代表の白石陽子氏
参考:
・安全なまちづくり 日本版「セーフコミュニティ」の進め方(立命館大学衣笠総合研究機構 白石陽子氏)
・一般社団法人日本セーフコミュニティ推進機構ウェブサイト http://www.jisc-ascsc.jp/
・セーフコミュニティあつぎ~世界に誇れる安心・安全なまちを目指して~(厚木市危機管理部セーフコミュニティくらし安全課)
・みんなで取り組む安全安心のまちづくり セーフコミュニティ国際認証都市久留米市(久留米市協働推進部安全安心推進課)

(了)