グループ支援や専門家派遣

 

各都道府県でも中小企業へのBCP策定支援が活発になっている。複数社を集めて合同研修を行うグループコンサルティングや、専門家の派遣、指導者の育成、モデル様式の提供などが行われている。背景には、中小企業が自ら資金を投じてまでBCPを策定することができないなどの事情がある。

 

■指導者を育成<静岡県>

 

東海地震や東海・東南海地震の発生により大きな影響が懸念される静岡県では、早くから中小企業のBCP策定支援に取り組んできた。同県の支援事業の特長は、産学官民の連携により、複数の仕組みを組み合わせ、継続的に支援をしていること。

 

代表的なものがBCP指導者の養成。大学機関やNPOと連携し、BCPの策定が支援できる指導員を養成し、その指導員を、BCPの策定を希望する中小企業に派遣する。平成20年度から開始し、これまでに中小企業診断士など76名を指導員として登録した。さらに、中小企業がBCPを策定しやすいよう、東海地震、東海東南海地震など地域特有の災害に配慮した・「静岡県事業継続計画モデルプラン」をつくり、ホームページなどで公表。BCPの知識が十分になくても取り組みやすいよう具体的なテンプレートなども盛り込まれている。また、産官学民によるBCPの普及啓発と、実効性を高めていくための研究会も設置。常に情報交流をすることで、継続的にBCPに取り組める仕組みを整えている。

同県では、信用保証協会が、BCPを策定している企業に対して、大地震などの激甚災害発生の際、事業の再建に必要な資金を迅速に手当てすることができる「災害時発動型保証予約システム(BCP特別保証)」を開発するなど、行政以外でも中小企業に対するBCP策定支援が積極的に行われている。保証内容は基本的には「激甚災害保証制度」と同じ。補償限度額は2億8000万円で、うち8000万円が無担保となる。資金の使途は事業の再建に必要な運転資金、または設備資金で、保証期間は10年以内。被災後、事業の停止によって資金繰りが厳しくなっても、この制度により、早期に資金調達ができるという仕組みだ。

■雇用対策でBCP策定支援<東京都・茨城県>
ここ数年増えてきているのが、国の緊急雇用対策事業の補助金を活用した支援策。自治体が民間事業者(コンサルティング会社)に事業委託し、そのコンサルティング会社が一定期間、新規雇用者を確保しBCP指導者として育成する。コンサルティング会社は、教育した指導者と共に中小企業に対してBCP策定を支援することで、BCPの普及と雇用対策を同時に達成させる一挙両得をねらったもの。鳥取県を皮切りに島根、東京、茨城などが同事業を採用している。 

東京都では、平成22年度からBCP策定支援事業を開始しており、これまでに100社を超える中小企業が実際にBCPを策定した。初年度は35社、23年度は75社・団体が同事業に参加。24年度も現在75社・団体が参加しBCPを策定している。参加費は無料だが、トップ経営者が参画することや、経営者、事務局、現場推進メンバーの組織全体で取り組むことが条件となっている。具体的な支援方法は、初回が集合研修で、残る4回が個別訪問によるコンサルティング。訪問コンサルティングは初回から3回で、BIA(重要業務分析)やRA(リスクアセスメント)、BC戦略の決定までを行い、4回目は演習を行う。演習後には課題を抽出し、BCP文書を改善。さらに、各社がその後も継続的にBCPを維持・向上していけるよう、年間の事業計画の中に、マネジメントレビューや、内部監査、演習などを落とし込むことまでを支援する(22年度、23年度実績より)。 

茨城県では、東日本大震災の教訓を踏まえ、県内中小企業向けのBCP策定支援事業に乗り出した。23年度は16社が同業に参加。今年度は40社が参加し、BCPを策定している。支援方法は1日で合同研修を集中的に行い、その後2カ月ほどかけて電話やメール、訪問などBCP策定を支援していく。最後には希望する企業に対して訓練支援まで行う。

 

■様式を策定<大分県・新潟県>
大分県では、県の単独事業として、BCPの策定支援を実施。23年度にモデル事業として業種別に5社を選定し、コンサルティング会社に委託してBCPの策定支援を行い、その5社のBCPの内容(社名は非公開)をPDFで公開するとともに、業種別にBCP策定のポイントを紹介している。さらに、各企業がこれを参考にBCP策定に取り組めるよう、BCPの中で使われているテンプレート類をすべてダウンロードできるようにした。今後は、県内の商工団体と連携し、同テンプレートを使ってBCPを策定してもらうよう呼びかけていくという。 

新潟県では、県と県内企業、商工会議所、NPO法人らが「新潟県企業のBCPを作成する研究会」を立ち上げ、今年1月に製造業向けの見本となるBCP様式を公開した。今後も業種を広げたり、役立つ様式などを公開していきたいとしている。 

中小企業庁のBCP策定運用指針でもさまざまな様式がダウンロードできるが、このほかの県でも、各地域の実情により適したものや、わかりやすいものを独自に策定する動きが進められている。

■東北地方のBCP
東日本大震災で大きな被害を受けた東北では、中小企業のBCP策定支援を緊急課題として新規に事業を立ち上げる動きも出ている。 

青森県では、BCPを策定したいという企業を集めたBCP策定実践塾を立ち上げる予定だ。数回にわたり講師をまねき、BCPへの取り組みを促していきたいとする。 

山形県では、これまでもBCPの普及セミナーなどを開催してきたが、3.11を受け、新たに専門家派遣制度と、企業間の連携についての研究費などの支援、普及啓発セミナー等、支援策を3本柱に体系化し直した。専門家派遣制度は、希望する企業に対して都や県内から専門家を派遣する。1回あたり4万円の講師謝礼と旅費が必要になるが、3分の2は外郭団体の財団法人が負担する。1社あたり最大5回の派遣が受けられるという。ただし、今のところ実績はない。県産業政策課では「多少の負担でも、財政状況が厳しいことからなかなか申し込みにつながらないのでは」と推測している。 

宮城県では、平成20年度から23年度まで、BCPの策定・充実に取り組む中小企業に対して専門家を派遣する制度を行ってきた。東日本大震災では、この制度を利用してBCPを策定していた複数の企業が、地震や津波で被災しながらも早期に事業を復旧している。