■監視体制に課題  
2003 年1月、 火山噴火予知連絡会 は、 「おおむね1万年以内に噴火した火山、 および現在活発な噴気活動の ある火山」 を活火山と定義し108 を指定した。 2011 年(平成 23) 6 月に新たに 2火山が選定され、 現在国内の活火山の数は 110となっている (図1) 。

2007 年 12 月1日からは、 気象庁が 噴火災害軽減のため噴火警報および 噴火予報の発表を開始。 全国の活火 山を対象とし、 火山ごとに警戒等を必 要とする市区町村を明示して発表することにしている (図 2) 。  

 

噴火警報の名称は、「警戒が必要な範囲」が火口周辺に限られる場合は「噴火警報(火口周辺)」「警戒が必要な範囲」が居住地域まで及ぶ場合は「噴火警報(居住地域)」として発表し、海底火山については「噴火警報(周辺海域)として発表する」(図3)。 噴火警戒レベルが運用されている火山では、あらかじめ地元の火山防災協議会で合意された基準に沿って、気象庁は噴火警戒レベルを付して噴火警報予報を発表し、地元の市町村等の防災機関では必要な防災対応(入山規制、避難勧告等)がとられることになっている。 2009年(平成21)6月には、年今後100年程度の中長期的な噴火の可能性および社会的影響を踏まえ、「火山防災のために監視観測体制の充実等の必・要がある火山」として47火山が選定された。

 

 

■数百年噴火していない火山も危険 
2000年3月の有珠山噴火では、地震活動が活発化したことから、直前に噴火を予測する緊急火山情報が発表され、これを受け周辺住民の避難が行われたことから一人の犠牲者も出さなかった。2009年2月の浅間山の噴火では、噴火警戒レベルを上げ、これにより道路規制などが行われ噴火被害を最小限に抑えることができ、いずれのケースでも噴火予知は機能した。 しかし、火山の観測ができているからといって、火山噴火予知がすでに確立しているというわけではない。 火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は「観測体制が整っている火山なら直前予測することが可能だが、以47外の火山については今のところ監視されておらず、こうした数百年噴火していない火山が突然噴くこともある」と警笛を鳴らす。また、噴火が予測できたとしても、規模や、いつまで継続するか、どう推移するかなどを予知することは極めて難しいとする。

 

■専門家の不足と監視体制の課題 
観測にあたる専門家が不足していることも課題だ。 「気象庁には約140名の職員が、火山と名のつくポジションにいるが、大部分は火山学に関しては非専門家。アメリカは、USGS(米地質調査所)に火山学の専門家が集中し、さらに世界各国の噴火現場に職員を派遣し、トレーニングを積ませ、ノウハウも蓄積している。日本が火山大国ながら気象庁に火山学の専門家が乏しい状況で監視観測を続けているのは大きな欠点。火山学の専門家集団を気象庁に取り込むべき」(藤井会長)。 監視調査の体制にも問題がある。・日本は、気象庁が主に噴火の前兆となる地震を計測し、国土地理院がGPSで地殻変動を計測し、各大学が、それぞれの研究テーマに基づいて火山を選び計測をするなど系統的になっていないのだ。 一方、海外では、アメリカはUSGS(米地質調査所)イタリアならINGV、(伊地球物理-火山学研究所)、フィリピンはPHIVOLCS(フィリピン地震火山研究所)インドネシアはPVMBG、(地震地質災害軽減センター)と国家機関に一元化されている。
地震の調査・研究については日本でも地震本部(地震調査研究推進本部)という政府機関が存在し、複数の省庁をとりまとめているのに対して、火山についてはそのような政府機関は存在しない。藤井会長は日本の火山に関する観測・調査体制も見直す必要があると説く。 政府の中央防災会議には、地震や津波、大規模水害に関する専門調査会が設けられているが、火山噴火は含まれていない。今後、系統的な火山の観測・調査を実現するには、中央防災会議に火山専門調査会を設け、省庁横断的に取り組める体制のあり方を検討し、新しい体制を整える必要がある。

 

■遅れている自治体の取り組み 
自治体の取り組みも遅れている。火山ハザードマップが作成されている火山は、気象庁指定の110の活火山のうち40にとどまる。火山防災のために監視観測体制が必要な火山として常・時観測されている47火山について見ると、火山でハザードマップが作成36されていることになるが、残る11火山については、まだ具体的な取り組みが始まっていない(右表)さらに、。地域防災計画の作成現況をみると、活火山がある26都道府県のうちで火山災害対策編を作成しているのは9都県にとどまり、他は一般災害対策編、風水害対策編で記載し、火山災害対策をとりあげて特に記載していないのも4県あるという(宇都宮大学中村教授調べ)。 

 

専門家や資金のない自治体が主体でこうしたハザードマップをつくることは難しい。藤井会長は「ハザードマップをつくるにも基礎となる噴火履歴データが不十分では作りようがない。国が中心となり、それぞれの火山がどれくらいの頻度で、どのような噴火をしたか、ボーリングなどを活用して調べる必要がある」と話している。