川崎陸送株式会社

 

物流業の川崎陸送(本社:東京都港区)は、東日本大震災を教訓とし、BCP対策を強化している。緊急時用のバッテリーや自家発電装置など、電源のバックアップ体制を整え、各事業所で緊急停電を想定した実動訓練や避難訓練を定期的に実施している。

電源確保が不可欠 
川崎陸送は、災害時でも物流を止めないBCP対策の取り組みとして、停電対策に力を入れている。在庫管理から配送まで、ワンストップで物流全般を請け負う同社では、顧客の受発注データや倉庫管理が事業を継続する上で重要となる。有事の際、これらの活動を守るためには、電源の確保が不可欠となることから、電力不足や停電の備えとして、非常用バッテリーや自家発電装置を整え、定期的に停電対策の訓練を実施している。

月2回の始動訓練 
最も頻繁に実施している訓練は、非常用発電機の始動訓練となる。毎月2回、第1・第3木曜日に実施している。訓練の目的は、一人でも多くの従業員がいざという時に非常用電源機のエンジンを直ちに動かし、電源確保ができるようにすることだ。 

同社では、通信機器の電源確保として、全事業所にフォークリフト用のバッテリーを活用している。事業所に設置されるパソコン、電話、プリンターの電源を確保するため、フォークリフト用のバッテリーから、インバータ、ドラムコードを経由して、通信機器をはじめ各種機器の電源を取る仕組みを整えている。 

しかし、バックアップ電源が十分に整備されていても、普段使っていなければ、災害時には慌ててしまい適切な処置をすることは難しい。実際に、東日本大震災でも、発電機や衛星電話など準備していた防災用品が使えなかったという事例は多く聞く。 

各事業所の非常用バッテリーの設置場所には、使い方が簡潔にまとめられたラミネート加工のポスターが貼られている。訓練ではこの手順に従って従業員がバッテリーを稼働させる。実際の災害時には文書化したマニュアルを読んでいる時間はないと想定した上での工夫だ。 

訓練は、バッテリーの残量をチェックしたり、発電機を稼働させやすくする意味からも重要になる。バッテリーや発電機は、車のエンジンと同様、長い間使用していないとスムーズに稼働しないことがある。特に冬場はその傾向が強くなる。そのため、短い時間でも定期的に電源を入れることでエンジンをならすとしている。 

川崎陸送業務部部長代理の上田健一氏は「冬場では、エンジンを回すために、少しアイドリングをするようにしています。こうしたエンジンの特徴やクセが分かったのも訓練の成果です」と話す。 

さらに、自社の定期的な訓練とは別に、サプライヤーや発注先の荷主とも不定期ではあるが停電時の対応について接続の連携のとり方について訓練を実施している。自社の流通センターにあるフォークリフト用のバッテリーなどの機材を荷主の発注センターに自社のトラックで運び、システムを復旧させる体制を構築している。「受注側の自分達だけが対策をしていても、事業は継続できません」と上田氏はこの訓練の重要性を説く。この訓練でも、スムーズに事業継続体制が構築できるよう工夫をしている。例えば、トラックで運んだバッテリーは、外部から長いケーブルで立ても何に引き込むことで時間を短縮。その接、バッテリーの接続ケーブルのプラス、マイナスを間違わないようにワニ口は使わず、コネクターが1セットになっているアンダーソンタイプを使用するようにしている。

 

実動訓練、30分以内が目標 
一方、顧客の荷物を保管する倉庫がある流通センターの拠点では、停電を想定した実働訓練も年2回実施している。 

川崎陸送では、東日本震災以降、全国4つの流通センターに自家発電装置を導入している。発電機を使い、倉庫の冷蔵装置や荷物用のエレベータを動かし続けることで、食品などの荷物の温度管理や入出庫業務を継続することができる体制を整えている。 

実働訓練では、従業員の避難訓練と自家発電装置を使った事業継続体制の構築までを行う。目標は、30分以内に従業員全員の避難と電源バックアップ体制の構築することとしている。  

訓練の日時については、従業員にあらかじめ周知する。災害シナリオは、所長不在時による大規模地震における停電やブラックアウトを想定し、各事業所のサブリーダーや管理職者を中心に行われる。より厳しい状況をつくるために、あえて日中ではなく暗い夕方以降に実施する拠点もあるという。 

電源を落とすと、従業員は「避難・誘導班」「自家発電機操作班」など、事前に割り振られた緊急時における役割に従って行動する。事業継続の要となる自家発電機の操作担当者は、各拠点とも主に車のメンテナンスなどの知識がある3~4人で構成される。 

発電機の電源を入れる際、気を付けているのは事前に空調機の電源をチェックすることだ。ブラックアウトが発生した時は、基本的にブレーカーは落ちない。そのため、各電気類の電源を落とさずに、発電機を立ち上げると、とたんに容量オーバーになってしまう恐れがある。同社の訓練では、発電機に負荷を与えないよう、容量の大きい空調機の電源をすべて落としたことを確認後、発電機の電源を入れ、その後1つずつ空調機の電源を入れていく。 こうした電源確保の訓練を繰り返し実施することで、社員一人ひとりに、多くの「気づき」が生まれるという。「例えば、多くの従業員は、電話やファックスといった通信類から蛍光灯などにいたるまで、電源の容量が大体どれくらいか分かるようになった」(上田氏)災害時、。必要最低限の電源で事業継続を実現するための体制が、従業員で共有できている。 

避難誘導にも多くの工夫を凝らしている。真っ暗な倉庫でパニックにならないよう、要所要所に懐中電灯を設置。荷物エレベータには、懐中電灯に加え簡易トイレまで用意している。また、リーダーに鈴をつけてもらうことで、暗闇の中でもリーダーがいる方向が分かるようにしている。避難が確認できた後は、各事業所の責任者が、ツイッターを通して安否の確認情報を他事業所に連絡する。 

こうした訓練の取り組みを通して明らかになった気づきや課題は、月に1度、管理職者を中心に定期的に行われる安全対策の会議で報告され、情報を共有することで、各拠点で次回の訓練に生かすようにしている。現在では、ほとんどの拠点において毎回10分以内に、発電機のスタンバイも避難もできるようになったという。

 

今後の課題 
ただ、事業継続を実現する上で、まだ課題もある。昨年、関西地方で大雨が発生し、京都の工場地域周辺で停電が発生した時は、業務時間外で、停電によりビルのセキュリティのロックが開けられず、業務時間外のビルには誰も入ることができない事態となった。ビル内にある電源確保の体制も作ることができなかった。直ぐに停電は復旧し、大きな問題には至らなかったが、業務時間外の対応についての対策の必要性が明らかとなった。 

川崎陸送では、今後は、業務時間外の停電発生を想定した停電訓練や従業員の参集訓練などを実施し、有事にもストップしない物流の体制づくりを強化していくとしている。