ソフトバンク 初期費用ゼロで既存建物にも供給可

 

燃料電池を活用して、電源の冗長性を確保しながら事業継続性を高める新たな電力サービスが国内で始まっている。SBパワーマネジメント株式会社と米国のブルームエナジー社は今年7月、共同出資でブルームエナジージャパン株式会社を設立。ガスタービンのような燃焼を伴わない燃料電池の発電による電力供給、販売事業を開始した。ガスタービンなどと比べて小さく、既存の建物にも導入が容易。初期導入費用ゼロで、10年、20年先も月額固定という斬新な料金プランを打ち出した。

 

騒音少なく省スペースで設置可能 
ブルームエナジージャパンは米ブルーム社が開発した燃料電池「ブルームエナジーサーバー」を、電力需要のある建物の敷地に設置し、そこで発電した電力を供給する事業に乗り出した。 

燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて電気を取り出す電池の一種。ブルームエナジーサーバーは、都市ガスなどを燃料に用いる。従来のガスタービンを利用した発電装置は大規模で騒音が大きく、利用発電効率が20%~40%台と低く、化石燃料を燃焼するためCO2も大量に発生する。これに比べて、本燃料電池は小型で騒音も小さく、発電効率は最高60%以上。商用では最高クラスの性能を誇る。さらに発電時のCO2も少ない。 

都市ガスは中圧ガス管で調達する。中圧ガス管は、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも耐震性に優れていることが実証されている。燃料電池本体は「大型の冷蔵庫」(幅1.14m×奥行き1.3m×高さ2.1m)とほぼ同じサイズの箱形の装置が2つセットになったものを1基とし、それが複数基連なって構成されている。4基連なった100kWタイプで30㎡、7基の200kW出力のタイプが50㎡の広さに収まり、コンパクトな敷地があれば設置できるため、企業の空きスペースを有効活用することができる。

騒音も小さい。最大でも車が多く往来する大通り程度の70dB以下。通常平均で30~40dBと気にならない程度で駆動する。従来のガスエンジンと比べると格段に静かなため、ワーキングスペースのすぐ隣に設置しても問題がないという。屋上や道路の高架下のデッドスペースなど、設置可能な潜在導入箇所はかなりの数に上るとする。


利用料金20年固定プランも用意 
最大の魅力は初期導入費用がかからない点だ。中圧ガス管の敷設費なども含め、携帯電話の支払いのように月々の料金に上乗せされる。月々の料金に関しても、20年契約を軸とした長期プランで月額料金が変わらないものを用意した。燃料費の増減などにより料金が変動する現状の電力料金体制では、顧客に不安を抱かせてしまうためだ。 

具体的な金額については、地域のガス料金や設置条件によって左右されるため一概に算出できないが、同社では「電力会社の系統電力料金と比較しても、競争力のある価格を提示できる」としている。 

 

福岡市のMタワーが第1号 
日本での導入第1号はソフトバンクモバイルの入居するMタワー(福岡市早良区)で、10月末頃までに設置工事が完了する見通し。顧客想定として、まずは電力の不足が危機的な状況に直結しやすい病院などで導入を進めていきたいとしている。500kW前後の産業向け電源の国内市場はまだ小さいが、これを求める事業者は相当数に上ると見る。本燃料電池は、電力会社が担う系統電力と常時併用する形で電力供給をしていくことを堤としている。 

ブルームエナジージャパン代表取締役社長の三輪茂基氏は「まずはベース電源の一部をブルームエナジーサーバーに置き換えることで、複数の電源を備えるメリットを体験してほしい」と話している。

※米ブルーム社社会貢献度の高いクリーンな電力の安定供給を目的として2002年に設立され、既にウォルマート、グーグル、コカ・コーラなど多くの優良企業に導入実績がある。そのほか電力供給を止めてはいけない重要施設であるデータセンターや病院、庁舎などで導入され、すでに米国において過去5年間で累計7億kWhを超える電力を供給している。

 


ソフトバンクエネルギー事業への挑戦

インタビュー:ブルームエナジージャパン代表取締役社長三輪茂基氏

 

「日本の電力のクオリティーは、世界でも際立って高い。ただ、送電網で送られてくる電力だけに頼るには事業継続性などの点で問題があり、系統電力と自家発電タイプの併用が有効であることは理解が得られると思う」。 

「時代のキーワードは、大規模集中型から小型分散型になっている。そうした動きが加速する中で、ソフトバンクとしても何か果たせる役割があるのではないかと模索していた時に、弊社の孫がアメリカで出会ったのがこの事業」と三輪氏は続ける。 

「単に電力市場が魅力的だから市場参入するのでは、ソフトバンクグループとしてやる意味がない。“常識に敢然と立ち向かい、常識を翻して新たな常識を打ち立てる”それがソフトバンクグループの企業理念」(同)と、挑戦し続ける姿勢は孫正義氏と変わらない。 初期費用ゼロという常識破りの発想もソフトバンクの遺伝子だろう。 

「なぜ電力市場は料金体系が柔軟でなく、住宅ローンのように先々までの料金を保証するプランがないのか疑問だった」と三輪氏。電力の料金メニューに選択肢がほとんどないことがずっと気にかかっていたと言う。 

今回の燃料電池を使った電力サービスを三輪氏は「電力業界のホワイトプラン」と呼ぶ。革新的な料金プランで激震を起こし、業界全体の料金値下げを引き起こした携帯電話を思い浮かべるが、三輪氏は同じことを電力市場で起こそうとしているのではないと指摘する。 

「我々は、電力会社さんと競争する気は一切ない。お互いに足りない部分を補っていける関係」(三輪氏)。ホワイトプランは、常識を覆しても社会の為になろうとする同社の精神を象徴する言葉だ。 

三輪氏は「ソフトバンクの事業は、常に社会に変化を与えてくることができたと思っている。この事業により、企業が安定した電力を確保できることで安心して事業を続けられることで、社会への貢献につなげたい」と話している。