昨日の東京の大雪。みなさん準備は万端でしたか?(photo by Satohi Ookoshi)

週明けの関東地方の大雪、普段から雪の多い地域にお住まいのみなさまから、「東京って雪に弱すぎ」「あらかじめ雪が降るとわかっているのになぜ?」「危機管理、大丈夫?」という声もたくさん聞かれました。

雪の日に地震に火事や津波ということがあれば、滑る雪道を避難しなければならないって事もあるわけですから、雪対策の基本装備は持っておいてほしいです。雪山ではない、普通の道の凍結対策で私が愛用しているのはコレ。

(画像提供:あんどうりす)

どんな靴にも装着できて、はずして持ち歩く事も可能なので、重宝しています♪

スノーブーツに装着するとこんな感じ♪(画像提供:あんどうりす)

「凍結 滑り止め 靴」で検索すると、同じようなタイプがたくさん販売されています。

予想されていることに予め備えることができてはじめて、想定外の大災害にも対応できるようになるのだと思います。次回の雪道に備えて、持っておいてほしいグッズです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回は、雪対策ではなく、あらかじめ備えておいてほしい制度についてのお話です。

年末にカラーユニバーサルデザインの記事を書きました。

■その防災情報、実は見えにくいかも!人の見え方は5通りも!
防災情報はカラーユニバーサルデザインで♪

http://www.risktaisaku.com/articles/-/4427

今回は、その最新情報です。みなさん、この記事、ご欄になりました?

消防部局採用時の色覚検査 横浜市長「必要ない」
(2017年12月7日付東京新聞より引用)

県内全二十四の消防部局のうち、六割以上の十六消防が採用時に色覚検査をしていることを指摘した民間団体の調査を巡り、横浜市の林文子市長は六日の定例会見で、「色覚検査は必要ない。消防局に改善してもらうよう話した」と述べた。同市は合否に影響しないとしながらも、色覚検査をしている。

林市長は、民間団体の調査結果を報じた同日の本紙を見て初めて色覚検査をしていることを知ったという。同局の鈴木貴晶(たかあき)・人事課長は「検査をやめるか採用後にするか、議論を重ねたい」とし、早ければ来年度の採用試験から変更すると説明した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201712/CK2017120702000136.html


一瞬だけ流れたニュースなので、記事の前提となる知識がないとわかりにくいかもしれません。現在、色弱の方たちが消防士になろうと思うと、自治体によって対応が異なるということ、ご存知でしたでしょうか?

色弱と消防業務、ホントに関係ある??

この問題は、色弱の方で、消防士になりたい方だけの問題に思われるかもしれません。でも、災害が起こった際に多くの人に関係してくる問題なので、他人事と思わず、知っておいてほしいと思っています。

災害が広域になると、他の地域から消防士が派遣されます。その時、色弱の方も採用可の地域では、器具が誰にでも見えやすい色になっていますから、他地域の消防士でも活躍できる状況が整っていることになります。でも、そうでない地域は、せっかく派遣された方が活躍できないことになるかもしれません。

東日本大震災における災害応急対策の主な課題 平成24年7月内閣府(防災担当)より引用
http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/5/pdf/3.pdf

また、上記にあるように、東日本大震災での救助の課題は各機関ごとや機関内での連携でした。

「平常時に調整できないことは、災害発生時であっても調整できない。一つでも、災害現場での調整事項を減少させるため、平常時から、各機関の役割分担や関係機関間で調整が必要な詳細な事項についても、可能な限り関係機関間で調整し、明文化しておく」

という報告書はとても重いです。ですので、平常時である今こそ、事前調整できないかを考えておいてほしいのです。

では、なぜ自治体により採用の差異があるのでしょうか?色弱の方がどの自治体で消防士になれないのかということについて、今まで全国的な調査はありませんでした。この調査を始めたのが、松戸市の市議会議員の関根ジローさんです。

ご友人が消防士を目指したものの、出身地ではなれないことがわかり、別の地域で消防士になったという話を聞かれた関根さん。地域差があるとはなぜなのかと思い、党派を問わない超党派で議員仲間を募り、学生を巻き込み、カラーユニバーサルデザイン機構さんと一緒に調査を始めました。

■カラーユニバーサルデザイン推進ネットワーク 
cudn.jp 

その結果、2017年12月までに寄せられた回答によると、調査中や未着手の都道府県が13ほどありますが、回答のあった都道府県34のうち、消防士の試験について色覚検査について見解を尋ねたところ、自治体によって以下のような違いがあることが分かりました。

1、色覚検査を求めていない消防組織の割合     39.7%
2、色覚検査を求めているが、採用に影響しない   10.1%
3、色覚検査を求めており、採用に影響する     49.4%

カラーユニバーサルデザイン推進ネットワーク cudn.jp より引用

色の見え方が違っていても

消防士になれる(1+2)  49.8%
消防士になれない(3)   49.4%
(100%にならないのは回答拒否や未回収のため)

となっており、現時点では、結論がほぼ2つにわかれて拮抗している事がわかります。この「見え方が異なる人は消防士になれない」とする根拠の法律は、労働安全基準規則の解釈にあると言われています。

職業選択の自由は憲法22条で規定されている権利ですので、職業につけないというような厳しい規制をする場合には、当然、合理的な根拠や理由が必要になります。

そのため、2001年7月16日に労働安全衛生規則が改正され、業務に特別な支障がないのに採用を制限したり色覚検査が行われることがないよう通達が出されました。

労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

基発第633号
平成13年7月16日
都道府県労働局長 殿

第1    改正の趣旨
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく雇入時健康診断は、雇い入れた労働者の適正配置や入職後の健康管理の基礎資料を得ることを目的として事業者に対して実施を義務付けているものであり、色覚検査についてもこの一環として実施されてきたものである。しかしながら、色覚異常についての知見の蓄積により、色覚検査において異常と判別される者であっても、大半は支障なく業務を行うことが可能であることが明らかになってきていること、さらに色覚検査において異常と判別される者について、業務に特別の支障がないにもかかわらず、事業者において採用を制限する事例も見られること等から、今般、雇入時健康診断の健診項目としての色覚検査を廃止する等所要の整備を行ったものである。

「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」より引用
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-42/hor1-42-41-1-0.htm 


このような通達があるにもかかわらず、事業所により、採用制限が認められるのは、この労働安全衛生規則改正のこの一文があるからとされています。

第3    その他
(1)本改正は、各事業場における個別の必要性に基づく自主的な取組みとしての色覚検査の実施を禁止するものではないが、改正の趣旨にかんがみ、職務に必要とされる色の識別能力を判断する際には、各事業場で用いられている色の判別が可能か否かの確認を行う等にとどめることが望ましいこと

 

約半分の自治体は「色弱があっても消防業務に支障がない」

要するに、職業ごとに各事業体の判断に任せるとなっているので、同じ消防士という職種であっても都道府県ごとに解釈が異なっているということです。では、どのように解釈が異なっているかというと、現時点で、消防士になることが可能な49.8%のアンケート結果によると、なぜ可能かということについての理由は、以下のとおりの、とってもあっさりしたものでした。

「色弱があっても消防業務に支障がない」

支障、ないんですね!!!!逆に消防士になることができない地域のアンケート結果の理由付けは多岐にわたっています。合理的根拠があるかどうか、みなさんと一緒にいくつか考えてみます。

こちらの表は、検査する理由の表であり、検査しても採用は可能な地域もありますので、厳密には採用不可の理由ではありませんが参考までに

主な理由は、以下のようなものだそうです。

・信号が見えないと困る、運転免許がとれないから
・消防ロープが見えないと困るから
・病人の顔色がわからないと困るから
・トリアージタグが識別できないと困るから
・炎の色により燃焼具合を判断する必要があるから


①信号が見えないと困る、運転免許がとれないからという点について

運転免許がないと救急車や消防車を運転できないわけですから、確かに困りそうです。でも、この論拠は、合理性がないのです。なぜなら、色弱者であっても運転免許はとれているからです。信号がみえないのではと心配されるかもしれませんが、信号の色の順序は決まっているので、識別で困ることはないのです。いまでも色弱者は運転免許がとれないという誤解されている方もいるそうですが、そんなことはないと知っておいていただければと思います。

②消防ロープが見えないと困るからという論拠について

画像提供:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構

消防用ロープ、様々なカラーのものが使用されています。けれども、前回ご紹介したように、見えやすい色を採用することで、ロープ問題は解決しそうです。救助される方も、見えやすい方が安心ということもありますよね!

③病人の顔色がわからないと困るからということについて

病人の顔色が赤みを増したり、青ざめたりという状況が解らないと救急対応が遅れて心配ということがあるのかもしれません。でも、実は医師免許は、色弱の方も取れます。看護師も大丈夫です。消防士だけNGとするなら、より高度な合理的根拠の立証が必要ということになります。

④トリアージタグが識別できないと困るから

東京消防庁で実際に使用されているトリアージタグ(出典:Wikipedia Photo by  Genppy)

トリアージタグには赤や緑が使われています。これが見えにくいとなると困りそうです。しかし、このタグ、厳密な色指定はないのです。赤を、よりみえやすいオレンジに近い色にすると市民の誰にでもみえやすい色になるわけですから、タグのほうを変えた方がよいことになります。実際、防災士や市民のみなさまもトリアージ訓練に参加されていますので。また、必ず、色のところに番号がふっていますし、色の順序も決まっています。とすると、識別は難しくありません。これだけの理由で、消防士になれないとするには合理的根拠はないかなと思われます。

⑤炎の色により燃焼具合を判断する必要があるから

これについては、実際にどこまで識別を重視しているかによることになります。ただ、すでに半数の自治体では、全く支障がないとしています。その地域はどうしているのか気になります。

ということで、いくつか検討しましたが、その他にも理由があるのかもしれません。その場合も、具体的に検討していければいいですね。なにせ、半分は大丈夫ってことなので。また、最初に紹介した横浜市のように、検査を実施していることすら気づいていなかったケースが他にもあるのかもしれません。

消防士というのは、クラレが毎年小学生1年生のこども対象に調査している なりたい職業で、毎年トップ5にランクインする人気職業です。

消防士は、男の子のなりたい職業トップ5にランクインする人気職業!

「2017年版 新小学1年生の「将来就きたい職業」、親の「就かせたい職業」(男の子編)」(株式会社クラレ調べ) より引用 http://www.kuraray.co.jp/enquete/occupation/2017/boys.html

それだけじゃなく男の子の親がつかせたい職業でも、昨年、6位から5位に人気が上昇したそうです。

「男の子の親の「つかせたい職業」トップ10」(株式会社クラレ調べ) より引用 http://www.kuraray.co.jp/enquete/occupation/2017/boys.html


こんなに人気で希望者がいるのに、地元では夢をかなえられない・・?そして災害時の連携も考慮にいれるとどうなのか?「一つでも、災害現場での調整事項を減少させるため」(前述 内閣府)みなさまの地域ではどうなっているか、事前に調べて考えていただければと思っています!

みなさまの地域がどうなっているか知りたければ、調査済みの所はこちらにて。理由とともにわかります♪

資料提供:カラーユニバーサルデザイン推進ネットワーク https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jN3cKby63NDtR7fLPDA6g8Py97aWemkQlapRrTJ4B-I/edit#gid=1572033520

 

広域災害前の時間がある時にこそ、みなさまの地域の大切な消防がどうなっているのか、議論が広がればいいなと思っています!

(了)