大地動乱の時代
我々は本当の噴火の姿を知らない!

 

「2011年3月の東北地方太平洋沖地震(3.11)以降、国内の火山活動が活発になっているとの情報が独り歩きしているが、実は、1年間の噴火火山数で見ると、そのような傾向は裏付けられない。しかも、近年起きている噴火はどれも小規模なものばかりだ。しかし、3.11と同じ規模の津波を引き起こしたとされる894年の貞観地震の前後では大規模な地震や噴火が頻発している。我々は噴火の本当の姿を知らない―」
火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏が、火山活動の盲点を語る。

(編集部注)この記事は、「リスク対策.com」2016年1月25日号(Vol.53)に掲載したものをWeb記事として再掲したものです。(2016/05/03)

 

 

不完全な火山監視
活火山とは「概ね過去1万年以内に噴火した火山か、現在、活発な噴気活動のある火山」と定義しています。我が国には、全世界の活火山数の7パーセントにあたる110の活火山が分布しており、このうち、気象庁が24時間体制で監視している「常時観測火山」は47あります。しかし、2014年9月の御岳山の噴火以降、八甲田山、十和田、弥陀ヶ原についても地震活動や噴気活動が活発化しているため、観測点の設置を進めており、近くこの3火山も常時観測火山に組み込まれる予定になっています。残りの活火山は、人工衛星を使ったり、地震予知のための観測網を使って監視していますが、火山としての観測体制は十分にできていません。

47を常時観測火山に選んだ理由は、あらかじめ噴火の切迫度を決めることは難しいため、最近100年間に噴火を繰り返している23火山をまず選び出しました。次に、最近100年ぐらいの間に、火山の下で地震活動など異常事態が起きたことがある18火山を選んでいます。地震計が発明されたのが明治時代ですから、地震活動が起きたかどうかの判断は最近100年程度の期間に限られます。あとは、今は異常は見られないが、過去の噴火履歴からして噴火の可能性が考えられるものが3火山。そして、噴火をした場合の社会的影響が非常に大きい3火山を加えました。実はこれは、富士山を入れるために考えた口実のようなものです。ですから常時観測火山は、決して噴火が切迫しているとの理由で選んだものではないということです。切迫度を測るための中長期の予測手法というのは確立していません。

 

小規模な噴火しか経験してない

 

噴火は、溶岩流を流すだけでなく、噴石を伴ったり、火砕流を起こしたり、大量の火山灰を降らせるなど様々な災害を引き起こします。土石流や融雪による泥流が起きることもありますし、2000年の三宅島噴火のように火山ガスを出すこともあります。特に噴石、火砕流、融雪型火山泥流などについては、現象が生じてから短時間で居留地域に影響を及ぼし、住民や観光客などの生命に危険が及ぶ可能性もあります。被害の軽減を図るためには、噴火の兆候をとらえ、住民らを迅速に避難させることが重要です。しかし、この兆候をとらえることは簡単ではありません。

 

最近の日本で起きている火山噴火を振り返りますと、2000年3月の有珠山噴火から、14回の噴火が起きています。直近は2015年6月の箱根山の噴火です。噴火と呼びたくないような小さな規模ですが、火山学の定義上は噴火と呼ばざるをえません。では、最近の噴火により、どのくらいの量の石、あるいはマグマを吹き出したかというと、2000年3月の有珠山は1万6000人を一斉に避難させるような噴火でしたが、このときの噴火規模は100万トンの噴出物を出した程度で、日本の噴火の中でも小規模でした。やや大きいのが2000年6月の三宅島噴火で3300万トンでした。東日本大震災の直前2011年1月26日に噴火した霧島の新燃岳は5000万トンの中規模噴火です。最近で1番大きいのは2013年11月20日から続いている西之島の噴火で、これは今4億トン以上になっています。それ以外は本当に小さい。つまり、我々が記憶にある噴火というのは、ほとんどが小さな規模ばかりなのです。

なぜ御岳山は予知できなかった!?

 

噴火の兆候については、2015年5月の口永良部の噴火で、警戒レベル5になって住民が避難したことは記憶に新しいと思いますが、この時は、気象庁の地震計があったにも関わらず、噴火が始まった9時50分までは何も記録されていません。要するに予知ができなかった。山頂部には地震計がいくつも置いてありましたが、2014年8月3日の噴火で全部が動かなくなってしまいました。気象庁は近づくと危ないからといって一切修理をしないで山麓部に設置された1基を使ってモニタリングをしていたわけです。この地震計では事前の兆候である地震は観測できなかった。しかし、ある大学で無人ヘリを使って山頂に簡易型の地震計を置いて観測していたところ、山頂に置いた地震計は、数日前から山頂部だけで感じるような地震が増えていく様子が記録されていました。火口付近に観測点を置いて、しっかり観測していれば、今回のような水蒸気噴火であっても前兆を捕まえることはできるという1つの例です。

 

一方、2014年9月の御嶽山の噴火では、9月27日の噴火より前の9月10日、11日に山の下で50回を超えるような地震が2日間観測されました。この地震があった時になぜ噴火警戒レベルを2に引き下げて、火口周辺警報を出さなかったのかと、気象庁が責められているわけですが、彼らを弁護するわけではないですが、1つの根拠は、御嶽山では2007年に非常に小さな、山頂に行ってみたら火山灰があった程度の噴火を経験していることです。そんな小さな噴火でも、1カ月以上前に地震が増え、一旦下がってからまた地震が増えた時点で噴火が起きました。地殻変動で数㎝山も膨らんでいます。こんな小さな噴火でも地震が増えるだけでなく、山が膨らむ地殻変動を伴うと彼らは思い込んでいたので、地震が起きても、噴火警戒レベルを1のままにしていたのです。それが災害につながってしまった1つの要因です。ただ、明らかに前兆現象といえるものはありました。噴火の11分前に発生した火山性微動です。

そして7分前になって山が膨らんだことが観測点でも確認されました。このあたりで気象庁もあわてて警報を出そうとしたのですが、もう数分しか残っていないので、警報を出す前に噴火が始まってしまったということです。

 

被害が拡大した理由は直後の行動
御岳山の噴火では、火口からたくさんの石が飛んできて、山頂近くにいた多くの方が犠牲になりました。ゴルフボールぐらいの大きさのものから、数十㎝ぐらいのものまで。犠牲者が増えた理由は、まずは噴火のタイミングです。天気の良い日で絶好の登山日和で、さらに悪いことにお昼のちょっと前でした。皆、見晴らしのいいところに弁当を持って行って食べようとしていた時間帯です。もう1つの原因は噴火の最初にクライマックスが来たことです。1番激しい状態が、噴火とほぼ同時に起きたわけです。1979年に御嶽山では史上初の噴火を起こしましたが、この時は最初に火山灰がブワッと吹き出すぐらいで、それから数時間が経って今回のような石をバンバン吹き出す噴火に変わりました。登山客が山頂にいっぱいいましたが、皆灰が降って来たので、急いで下山し、結果、1人のけが人も出ませんでした。

今回は山頂近くにいた数百人のうち60人ぐらいの方がお亡くなりになったわけですが、かなりの数の方は、噴火と同時に山小屋の中に駆け込みました。山小屋の主人も小屋に入れと言って、それに従った人たちは1人も亡くなっていません。

変な煙がでている、変な雲が出ているというので、写真撮影をしたり、場合によってはそれを背景に記念撮影までしていた方もいました。それが数十秒から1分位経ったところで、空から火山灰が降ってきたのです。一瞬のうちに真っ暗になったはずです。昼間でも自分の手が見えないほどの暗さだったことでしょう。山小屋の前に立っていたとしても、どこに山小屋があるのかもわからない状態ですから、逃げようがないのです。噴火があると、どういう現象が起こるのかを、しっかり理解していると、それなりに身を守ることができる場合もあります。

 

警戒レベル1でも噴火する

噴火警戒レベルは、気象庁が発表するものでレベル1からレベル5まであります。これは住宅地に危険が及ぶのはどのくらいかということで考えられた警戒レベルです。居住地の周辺に影響が及ぶので避難の準備をしたり、あるいは避難しなければいけないという場合にはレベル4、レベル5ということになります。

ほとんどの火山では出されたことがありませんが、口永良部ではレベル5が出されて全島避難になりました。桜島でも一旦レベル4に上げたことがありますが、ほぼ一瞬だけでした。それ以外はほとんどの場合レベル3までです。レベル3は、火口から居住地区まで数㎞から4㎞ぐらいの範囲は危ないかもしれないが、それより遠ければ上から火山灰が降って作物が影響が受ける程度で人命には影響がないというレベルです。

ただし、問題はレベル1の時で、「平常」という言葉を使ったことで、平常というのは噴火が起きない状態だと思われてしまったかもしれないとの反省があり、今は「活火山であることに留意」という言葉に変えました。ですから活火山である以上、いつ何時でも、噴火が起こるかもしれないことに注意すべきです。 

この噴火警戒レベルが作られてから、多くの人が「噴火警戒レベルがあるのだから、気象庁は予知をしてレベルを上げて噴火前に知らせてくれるだろう」と思い込んでしまっていますが、実は違います。この噴火警戒レベルを引き上げる時には、噴火が発生してから上げることもあるし、あるいは噴火の恐れがあることがわかって上げることもあります。つまり、予知ができないこともあることを前提にしているわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前兆現象はいつわかる!?

 

火山噴火を予知するためには前兆となるような現象を捉えることが重要になるのですが、1977年の有珠山の噴火は、地震が前兆現象で31時間前です。1983年に三宅島が噴火したときには、地震が発生したと思ったら1時間半後には山が割れて真っ赤なマグマが数百m吹き上がり溶岩流が流れ出ました。ほかについても、数時間から数日ぐらいでないと前兆が現れていません。逆の言い方をすると、何カ月も前から何月何日に噴火するなんてことは決して言えません。よく週刊誌に何月何日が富士山のXデーというようなことが書かれますが、あれは肩書が立派な人であってもまったくのデタラメだと思って下さい。ただし、今は富士山は静かな状態ですが、来年の今頃、もしかしたら噴火しているということはあり得ます。

 

 

 

 

 

火山活動は活発になっていない

 

御嶽山の噴火があってから気象庁は、ホームページが見にくいという批判を受けて、書き換えました。気象庁ホームページの冒頭の1枚目のページに登山者のための火山情報というボタンを作っています。そのボタンを押すと、今どの火山で、どういう警戒レベルが出ているのか、あるいは予報が出されているのかがひと目でわかります。日本中で火山が活発化しているように見えるのか、マスコミからは頻繁に「3.11以降、火山が活発化しているでしょう?」と聞かれます。しかし、実際に活発化していることを証明することは非常に難しいことです。1年間に噴火している火山の数が増えているというのは比較的にわかりやすいですが、噴火が継続している日数で見るのか、噴火そのものの数で見るのかによっても違ってきますし、規模の小さい噴火というのは、昔でしたら数え落としているため比較できません。気象庁の場合ですと、1930年以降のデータでしたらなんとか使えますが、それ以前はダメです。

世界的にも同じで、基本的には戦後のデータでなければ使えません。実際に数えてみると15世紀ぐらいから噴火した火山の数が増えていますが、それは人口の増加率に完全に比例しています。 

ちなみに、1984年以降を対象に、年間の噴火火山を数えてみると、決して増えている傾向にはなく、全体のばらつきの範囲内であることがわかります。

しかし、活発化していないといっても、我々が最近経験した噴火はごく小規模なものばかりであることを念頭に置いておく必要があります。では、もっと大きな噴火が来るだろうかというのが次の問題ですが、例えば西之島よりも規模が大きかった1990年からの雲仙普賢岳の噴火でも火砕流が5㎞、土石流が7㎞~8㎞までしか影響が及んでいません。一方、アメリカワシントン州のセントヘレンズが1980年に噴火したときは火砕流は10㎞以上までいって、火災サージと呼ばれるものが20㎞を超えるところまで行きました。雲仙普賢岳とほとんど同じ時期に噴火したフィリピンのピナツボ火山では、火砕流が20㎞まで流れ出ました。

日本でも、今からちょうど100年前、1914年に桜島の大正噴火というのがありました。溶岩流を出して、大隅半島と桜島との間の海峡を埋めてしまったために陸続きになったとされる噴火ですが、最初の日だけ爆発的な噴火をしているにもかかわらず、火山灰は桜島から発して東京にも降っていますし、仙台にも降っています。火口から40㎞離れた場所で30㎝以上の積灰があったのです。ですから、日本で大きな噴火がないということはありません。

このような大きな噴火だけを取り出してみると、各世紀に4回ないし6回はあります。ところが20世紀は1929年の北海道の駒ケ岳が最後で、それ以降大きな噴火はまったく経験していません。ですから、ここで休んだ分、これから先の21世紀などの数十年の間にいくつか大きな噴火がどこかで起こる可能性があると思った方がいいでしょう。

貞観地震と富士山の大噴火

 

マグニチュード9を記録した東日本大震災は、200㎞×500㎞という巨大なブロックが一瞬のうちに数十m日本列島の下で動き、それに引きずられて日本列島全体が、広いところでは数m、少ないところでも1㎝ぐらいは動いています。富士山の真下あたりでも2㎝ぐらい動いています。このような規模の地震が起こるときには、世界の過去の例からすると間違いなく震源地から1000㎞以内ぐらいのところで火山噴火が起きています。これには例外がなかったので、日本でも必ず起こると思ったのですが、実際は起きませんでした。

3.11の後、北海道から九州に至る22の火山で、それまで噴火もしていない、地震活動もなかったところで一斉に地震が起こり始めました。そのうちのいくつかは噴火するかもしれないと思ったのですが、しませんでした。噴火をしたのは桜島と新燃岳だけですが、これらは3.11前から噴火をしていたので、地震の影響とは言えません。富士山の直下で3月15日にマグニチュード6.4の地震がありましたが、これも噴火には至りませんでした。唯一3年以内に噴火したのが西之島ですが、これは東京から1000㎞、震源地から1500㎞ぐらい離れているので本当に3.11の影響かどうかというのは判断が難しいところです。ただし、2004年のスマトラの地震では、1000㎞離れた火山が数カ月後に噴火を開始し、別の震源域から200㎞しか離れていない火山が、地震から6年後に突然小さな水蒸気噴火をし、その2年後にはマグマ噴火に移り変わって、毎日火砕流を出す噴火がいまだに続いている例もあります。つまり、時期に関しては3年以内になかったから安心ということは決して言えないということだけは注意していただきたいのです。

地震に噴火が誘発されなくても火山噴火というのは起こりえます。

3.11が起きたこと自体、すでに日本列島の力が非常に怪しい状態になっていて、いつ何事が起きてもおかしくない状態かもしれないということです。このような時代は歴史上でも時々あることです。日本でも大地動乱の時代と呼ばれる時代が9世紀の後半にありました。今回の3.11の地震とほとんど同じ場所で869年に貞観地震が起きていて、規模もほとんど同じです。その18年後の887年には南海・東南海の付近で三連動の地震「仁和地震」が起きています。この時期には実は地震だけではなく、火山噴火も非常に活発だったことがわかっています。富士山が史上最大の噴火である「貞観の噴火」を起こしたのもこの時期(864年から866年)で、ほかにも神津島、伊豆大島、三宅島、新島、鳥海山など多くの火山が噴火しています。ですから今後、数十年以内に富士山を含む複数の火山で活動が活発化することは十分想定するべきです。

 

 

 

次の富士山爆発は大規模?
富士山の過去3200年間の噴火回数を数えてみると、全部で100回程あります。平均すると30年間に1回噴火していたことになります。実際、奈良・平安時代というのは数十年おきに噴火をしていたことが古文書でも記録されています。規模を見ると、貞観噴火が過去最大で、1707年の宝永の噴火はその半分ほどの規模だったと推測できます。それ以外は、小規模な噴火ばかりです。そして、宝永噴火を最後に今は300年以上休んでいるわけですが、統計的に考えれば、次に起こる噴火は小規模噴火である確率が高いことは推測できます。ただし、確率が高いことが起こるわけではありません。最近200年間に世界中で富士山の宝永噴火よりも激しく大きな噴火をした例を挙げてみますと15の噴火がありますが、このうち11の火山が数百年間休んでいて噴火した火山です。数百年以上休んでいた火山が爆発的な大きな噴火を起こす可能性は高いと思います。

都市機能が完全に麻痺する
富士山の300年前の宝永噴火が今起こるとどうなるか。宝永噴火のときの降り積もった火山灰の厚さを今の地図の上に載せると、神奈川県をはじめ東京や千葉の一部でも8㎝もの火山灰が積ることがわかります。横浜は16㎝です。灰といっても石の粉、石の粒です。新幹線の小田原-横浜間では20㎝以上の火山灰の中にレールが埋もれてしまうことになります。東名高速の御殿場あたりは1m以上の小石に埋もれてしまう。

中央高速は安全だと思われるかもしれませんが、たまたま富士山の南東に火口が開いたことを想定しているからで、もし貞観の噴火のように北西側で開いた時にはかなりの影響が出ますし、東京都の都心も被害が激しくなります。成田空港や羽田空港も、10㎝程度の積灰になりますし、厚木基地も火山灰が降り積もり、航空機や救援機は使えないことになります。首都圏に及ぼす影響は、ほかにもいろんなことが考えられます。まず道路が全部使えなくなるでしょう。恐らく交通はほとんど麻痺します。鉄道も無理です。数㎜の火山灰でも止まらざるをえない。溶けませんから、取り除くしかありません。停電も考えられます。電線に火山灰が付くと、火山灰は石の粉ですから重いので電線が垂れ下がって切れてしまう事故がアイスランドやニュージーランドでは何回も起きています。

 

 

さらに、都心の電力は湾岸部の火力発電所で賄われているわけですが、火力発電所が集中しているのは、1番火山灰が厚く溜まる地区です。フィルターがついているから大丈夫かもしれませんが、細かい火山灰が舞うとフィルターはすぐに目詰まりを起こしてしましますから、パワーダウンします。フィルターを交換しようとして発注しようにも交通網が機能していないので、そのうち停電になる。首都圏は流通系で破綻し、日本中のサプライチェーンがすべて寸断される。さらに、火山灰が降り積もると、雨により土石流が起こります。江戸時代に土石流災害が起きた場所を見ると、火山灰が10㎝以上降り積もったところだったことがわかります。当然、河川へ流れ込むことも考えられます。

 

日本の火山監視体制の問題点
火山噴火予知自体がまだ発展途上の学問ですので、そう簡単に予知はできません。1つの理由は、我々の寿命が100年ぐらいでも、敵(火山)は100万年あるわけです。そして、我々は、わずか100年間しか観測をしていないわけです。

一方で、日本の火山監視体制は異常な事態にあります。多機関が共同して行っているといえば、聞こえはいいのですが、ヘッドクォーターもない多機関の集合体になってしまっています。予算請求にしても各省庁からバラバラに独立にやられているわけです。地震の場合は地震本部が存在していて、これは文科省に事務局があって、一応取りまとめ機能はありますが、火山観測にはありません。このようなことは日本だけで、アメリカやイタリアなどの先進国で火山がある国、あるいは発展途上国でもインドネシアやフィリピンでは一元的な地震火山庁のようなものを持っています。火山噴火予知が難しくても、まずはしっかりと体制を整えることを進めていくべきです。
(12月11日、日本保険仲立協会研修会の講演をもとに取材)

 

藤井敏嗣(ふじい・としつぐ)
環境防災総合政策研究機構環境・防災研究所所長、火山噴火予知連絡会会長、山梨県富士山科学研究所所長、東京大学名誉教授。東大大学院理学系研究科地質学専攻博士課程修了後、東京大学理学部地質学教室助手を経て、東京大学地震研究所助教授、同教授。東京大学地震研究所長および東京大学理事・副学長を歴任し、現職。