高槻市役所本館は耐震工事中に大阪北部地震に見舞われたが、大きな被害はなかった(7月26日撮影)

BCP策定後初の危機

6月18日の大阪北部地震で最大の震度だった6弱を記録した大阪府高槻市。大阪市と京都市のほぼ中間に位置し、人口は約35万人。ベッドタウンとして発展してきた。震度6弱は高槻市がBCP(事業継続計画)策定後、最大の地震となり、死者2人を出した。被災自治体としての対応を取材した。

高槻市は風水害防災行動計画とは別に、BCPを地震に特化して2016年に策定した。同市を走る有馬-高槻断層帯による地震で最大震度は7を想定。冬の夕刻に発生した場合、最大で死者数1081人、負傷者数4166人、避難所で6万409人が生活する見込みを立てている。

高槻市の最大地震被害想定(出典は全て高槻市資料)

業務は地域防災計画に基づいた災害関連業務と、通常業務に分類。通常時は災害関連では耐震化の推進といった防災・減災に資する予防施策を主に行っている。発災すると災害関連業務は応急や復旧業務にシフトする。物資搬送や避難所設置、見舞金の配布やり災証明書の発行も含めた災害救助法に基づく業務が中心となる。通常業務は住民票発行や死亡届の受理、火葬といった、災害時に需要が見込まれる業務を優先し、その他の業務をストップさせる。また災害時に優先される通常業務は、災害時に備えて積み立てている救助基金の取り崩しもあるという。

発災後3時間以内に応急業務として災害対策本部を設置するほか、避難所の開設や管理運営、優先度の高い通常業務として救急救助活動を実施。1日以内では応急業務で避難所への食料などの物資供給やボランティアの受け入れと配置、通常業務は広報事業、3日以内で応急業務として被害情報の調査や被災関連証明書の発行などが行われる。

最大被害想定時の職員参集と必要人数の予測。時間が経つにつれ人員が不足する

市役所は耐震工事中

市職員の参集は発災後3時間、1日、3日、1週間で想定人数を出している。3時間以内で2333人のうち参集率45%の1053人、1日以内と3日以内は53%の1228人の見込み。3時間以内であれば必要人員の804人を上回るが、必要人員が1日以内は1338人、3日以内は1748人となり、だんだん不足していく。ここを他の自治体からの受援で対応していく見込み。また、避難所そばに住む職員は避難所に駆けつけ開設にあたる。

写真を拡大 大阪北部地震発生後3日間の主な市の対応

大阪北部地震当日、震度5強以上で設置される災害対策本部がすぐ設置され、発災後47分後の午前8時45分には濱田剛史市長が出席し第1回災害対策本部会議が開催された。その日のうちに都市ガスは市のほぼ全域で止まり、断水が約20万人に影響していること、寿栄小学校でのブロック塀倒壊などで死者が2人、負傷者が40人出ていることなどを確認した。寿栄小学校について午後3時と同8時に記者会見を行っている。

職員はだいたい半分が市内在住。市内在住の職員はほぼ来られたほか、市外の職員も車を利用するなどして出勤。市役所勤務者1314人のうち午前11時段階で938人、午後4時では1041人が参集した。また、ピーク時には107カ所の避難所に613人が避難したが、BCPの通り近くに住む職員が避難所に駆けつけたという。

ただし、市職員向けの安否確認システムを導入していない。また、避難所向けに最大で想定している約6万人分の備蓄はあるが、市役所で職員向けの備蓄はしていない。さらに市役所本館は2017年10月から耐震工事に入っている。連絡網はあり、当日午前中には電話などで全員の確認が取れたこと、生活物資の不足が深刻化しなかったこと、市役所の被害が軽微というのは不幸中の幸いだが、「安否確認と備蓄は大きな課題として残った」と高槻市総務部危機管理室主査の加藤聡氏は振り返る。今年度から備蓄を進めていくほか、マンホールトイレも2019年から整備予定。職員の安否確認も見直しを図る。耐震化は2019年12月に完了予定だが、この地震の影響で延びる可能性もあるという。

当日予定されていた受援の会議

もう一つの課題が他自治体などからの受援の体制作り。大阪府の職員は発災直後の午前中に駆けつけたほか、国土交通省のリエゾン(災害対策現地情報連絡員)も来て対策会議に参加。国交省からはTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)も当日に駆け付けた。自衛隊も給水や入浴支援、屋根に被害のあった住宅のブルーシート張りの支援を行った。関西の自治体で構成する関西広域連合や熊本市など他の自治体からは延べ約2000人を受け入れ。住宅危険度判定やり災証明書発行の業務に携わった。

「地震当日、実は発災後の受援体制構築とBCP見直しに関する会議を予定していた」と加藤氏。BCP見直しは今年度、受援体制の構築は2019年度を予定していた。今後、各部課の業務の検証や今回の地震の反省もふまえ、受援体制について改めて構築をしていく方針だという。

市民には発災後に市のホームページのほか防災アカウントを作っているツイッター、防災行政無線で給水など役立つ情報を発信。避難勧告を知らせるための戸別訪問も行った。災害関連専用の市民向け電話番号も開設。加藤氏は「市民からの問い合わせは発災後2~3日はブロック塀など危険箇所の指摘やガスや水道の停止、2週間くらいたってり災証明書の発行に変わっていった」と振り返った。

危険判定の通知書が貼られた住宅(7月13日撮影)

住宅修理やブロック塀撤去に補助

住宅の被害は7月23日現在、り災証明書の発行申請は約1万4000件あり、全壊5件、半壊134件のほかは一部損壊。一部損壊はほぼ即日発行が可能で、加藤氏は「最近はスマートフォンが普及し、多くの市民が住宅の写真を撮っており、偶然即日発行になったケースが多い」と説明した。国の支援は半壊以上が対象であることから、高槻市では住宅修理に独自の補助も実施。費用が30万円以上50万円未満では3万円、50万円以上では5万円を補助する。

ブロック塀が倒れた寿栄小学校前に設置された献花台。右奥の白い覆いが倒れたブロック塀のあった場所(7月13日撮影)

またブロック塀については学校では撤去など応急処置を完了。学校以外の公共施設でもチェックを行い、撤去費用を予算付けする。さらに7月13日からは撤去に民間への補助も開始。高さ80cm以上の塀で最大20万円、対象通学路では30万円を補助する。

平成30年7月豪雨では、地震で立ち上げた災害対策本部がそのまま対応にあたった。地震で地盤が緩んでおり、警報基準が通常の7割に引き下げられたほか、7月5日の午前5時25分に避難準備・高齢者等避難開始をJR東海道本線以北住宅地域と北部山間地に、初となる避難指示を同日午後10時45分に北部山間地に、翌6日午後12時5分にJR以北住宅地域に発令するなど、こちらでも対応を迫られた。

「風水害には慣れているが、地震には慣れていない。大阪北部地震で初めてBCPで対応することになった。概ね対応は順調だったが、課題を検証し、BCPの見直しにつなげたい」と加藤氏。注目されたブロック塀撤去の推進に加え、行っていなかった市職員対象の備蓄や安否確認システムの導入、受援体制の構築などが早急に解決すべき課題となりそうだ。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介