写真を拡大 軽量で燃えにくく、水に強いダンボール製の防災用帽子「アウトリーチ防災用帽子」

段ボール製品の開発や製造を行う有限会社秦永ダンボール(本社:神奈川県伊勢原市)が販売する「アウトリーチ防災用帽子」は、1個160g程度と軽量で、燃えにくく、水に強いダンボール製の防災用帽子。

材料は耐水・難燃ペーパーハニカムダンボールで、衝撃吸収に優れている。有限要素法のシミュレーションを使い、蛇腹構造カバーとハニカム材の組み合わせが、上部からの衝撃吸収率が効率的で最適であると結果が出たことを受け、折り紙の数理的視点から考案した。表面の蛇腹カバーと次の層のハニカム材が上部からの衝撃を順に柔らかく受け、最後にハニカム材が適度に潰れ、衝撃を効率良く吸収するという設計構造だ。

ハニカムとはダンボールでいう中芯の部分で、いわゆる「こし」にあたる。ハニカム材は折り畳み式や成形された形状など様々な物が存在するが、その中でできるだけコンパクトにして強度を保持するため折り畳み式のハニカム材を使用。軽量・小型で、いつでも身近に携帯できる最適な大きさになった。

強度を保持しながら、被り心地の良い頭にフィットする構造を重視した設計になっている。頭にフィットし、小さく折り畳めるよう工夫。不織布内帽子材を利用し、通気性も良くした。

落下物に対する強度は、一般的なヘルメットより高い(※)。色柄も豊富、畳めるので枕元に置いたり、バッグや、ランドセルに入れて携帯できる。子供から大人まで男女問わず使える。

従来から普及している耐火布による防災頭巾は、落下物に対する強度が低く安全性が不十分だった。東日本大震災を機に多くの小学校で導入の検討が進められている防災ヘルメットは、大きくかさばるため場所をとり、常に持ち歩ける訳ではないので、いざというときに困る可能性がある。

開発にあたっては近年注目を集める折り紙工学のスペシャリスト、明治大学研究・知財戦略機構・特任教授(東京工業大学名誉教授)萩原一郎氏と共同開発した。

アウトリーチ(outreach)とは、手をさしのべるという意味。同社では今後も災害時に手助けとなる防災グッズを開発していく。車に設置する携帯用テント、携帯トイレなどを提案する予定だ。

※ 技術的根拠
日本工業規格・産業用安全帽である作業用ヘルメットの落下衝撃吸収試験基準は1Mより5Kgの半円球48㎜を頭上部の中心に自由(誘導)落下、首にかかる衝撃荷重4.9KgN以下という試験基準がある。アウトリーチ防災帽子はこの基準をクリアしている。
日本工業規格 産業用安帽 T8131性能要件5.1.1衝撃吸収性
日本工業規格・産業用安全帽の性能要件を基準に上部からの耐衝撃性を重視し設計した。

(了)