「家具転倒防止対策の支援強化」についての説明する武井区長(左) (画像提供:港区)

港区区長の武井雅昭氏は26日、区の家具転倒防止対策を強化すると発表した。区営住宅や区立住宅などについて家具転倒防止機器取り付けによる原状復帰義務を免除したほか、これまで高齢者や障がい者世帯を対象にしていた家具転倒防止器具の無償取り付けを、妊産婦を含む世帯とひとり親家庭までに拡大。さらに壁や家具などを傷つけることなく固定することができる器具など、助成品目に新たな器具を追加した。総事業費は約1770万円。

※原状復帰義務とは‥通常の建物賃貸借契約では、賃貸借契約終了後には、賃借人は物件を「原状に回復して」明け渡さならければならない旨が規定されている。ただし、家具の設置による床・カーペットのへこみなど、通常の住まい方をする上で発生するものなどに関しては原状回復の義務はないとされている。

一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会が作成する「原状復帰のガイドライン」によると、賃貸住宅の借り手が所有するエアコンの設置による壁のビス穴などは「通常の住まい方で発生するもの」と見なされ、借り手に原状復帰義務はない。

一方で、大地震などの災害時に家庭内でけがを防止するために重要とされる家具転倒防止器具の取り付け時に発生する穴などに関しては、現在は借り手側に原状復帰の義務があり、家具転倒防止普及の妨げの一因とされてきた。港区では、賃貸住宅の転倒防止器具の取り付けを普及させるため、区営住宅など区が管理する賃貸住宅で原状復帰義務免除を開始した。

同区防災課は「今回の取り組みは非常に大きな一歩だと考えている。エアコン取り付けの壁のビス穴が原状復帰義務を免除されているように、家具転倒防止機器による原状復帰義務免除も全国に広がってほしい」と意気込む。

東京消防庁によると、近年の地震によるケガの原因の3割から5割が家具の転倒・移動・落下によるものとされている。港区では2006年から区内全世帯に対して転倒防止器具を無償で助成するなどの取り組みを続け、現在では6割の住民が対策を施しているという。

■関連記事:賃貸住宅でも、家具転倒防止のためのネジ穴を当たり前の世の中に(丸の内総合法律事務所弁護士/中野明安氏)
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■関連記事:地震対策に必須の建造物の耐震化と家具固定。でも賃貸物件では家具の固定ができない?(あんどうりすの『防災・減災りす便り』)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2033

■~震災時に自宅でけがをしないために~家具転倒防止対策の支援を強化します!(港区報道発表資料)
http://www.city.minato.tokyo.jp/houdou/kuse/koho/houdouhappyou/documents/20170426_kisyahappyou_4.pdf

■原状回復基礎知識 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会
http://www.chinkan.jp/live/recovery/

(了)