2016/11/28
事例から学ぶ
佐川急便を中核に物流インフラを担うSGホールディングスでは、事業継続マネジメントと環境マネジメントの取り組みを併せて行うことで、平時から燃料への依存度を低くするとともに、災害時にも確実に事業が継続できる体制を構築している。環境負荷低減に加え、企業としてのエネルギーセキュリティの観点から天然ガス車を積極的に導入するなど、事業の効率化に加えて車両そのものを減らすことで有事の燃料調達をできる限り避ける。これまでの成果を聞いた。
編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年11月28日)


国土交通省の調べによると、全国の企業や個人間における宅配便の取扱個数(1個口30㎏以下)は年間36億1400万個にのぼる。
このうち、同社が取り扱うのは約12億個と全体の3分の1に相当する。このデリバリー事業を支えるのがグループ全体で約2万5560台ある貨物車両だ。車両の燃料を確保することは、同社の事業においては欠かすことができない。
しかし、燃料確保に関する方針は近年変化してきているという。同社リスクマネジメント・コンプライアンスユニットの幡谷剛シニアマネジャーは「BCPの観点から軽油、ガソリンなどの燃料を備蓄確保することに注力してきましたが、一方で、物流会社として、エネルギー使用の抑制など、環境への負荷低減が社会から求められていることもあり、今ではBCPと環境を切り離して考えることはできません」と語る。
京都に本社を持つ同社は、1997年の気候変動枠組条約(京都議定書)の合意以来、全社をあげてCO2の削減に取り組んできた。これらを別々に考えるのではなく、一体的に取り組むことで相乗効果を出すというのが、同社の方針だ。
震災翌日に200人を派遣

2011年3月の東日本大震災では、佐川急便の石巻や気仙沼などの営業拠点が被災する中、翌日から救援物資の輸送を開始し、3月13日には、ドライバー200人とトラック100台を東北エリアに向け派遣した。
そして震災6日後の17日からは、地域住民が営業所まで行き本人確認ができれば、荷物が受け取れる体制を整えた。
東日本大震災での対応について、幡谷氏は「物流は社会のインフラであり、被災地においては生命線であることを再認識しました」と振り返る。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-
-
-
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方