※画像はイメージです (画像:PixtaBay)

先日、ホイールローダーや油圧ショベルなどに乗って公道を走るために必要な、
大型特殊自動車免許を取得した。

取得理由は、これからも起こり続けるさまざまな災害などに消防団員として出動した時に、現地に配備されたさまざまな重機や建機を借りて、災害復興支援できるようになるためだ。

もちろん、重機や建機を操縦するには、労働安全衛生法に基づく車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転技能講習を受け、建機部分(土砂を掘削するためのバケット等)を操作修了証を取得しなければならないが、大型特殊自動車免許を取得しておくと、講習時間の短縮と講習料金が安くなることを知ったため共有したい。

■講習種別と日程など(コマツ教習所)
https://www.komatsu-kyoshujo.co.jp/KkjReservation/Subjects/SubjectList.aspx

上記ページの車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習は、普通自動車免許や大型自動車免許を持っていても38時間(6日間)かかるが、大型特殊自動車免許を所持していれば、14時間(2日間)で済む。時間もコストも短縮できる。

■車両系建設機械の各部の名称、解体用車両系建 設機械の名称・対象、規則等改正事項等について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002p5fs-att/2r9852000002p5th.pdf

大型特殊自動車教習は、普通免許を所持していれば視力検査と適性検査を受けてから2段階で各3時間、合計6時間の技能教習をし、問題がなければ卒業検定を受ける。

視力検査の基準は大型特殊免許の場合、両眼0.7以上・片眼0.3以上。もし片眼が0.3未満である場合には、もう1つの眼の視力が0.7以上、かつ視野が左右150度以上なければならない。もし、その視力に満たない場合、運転時に必ず眼鏡やコンタクトの使用が義務付けられる。

運転適性検査では、IQテストのように数種類の同じ図形を指定時間内に多く選んだり、アンケート形式で、運転に際して自分にどのような癖があるのかなど、下記のような項目をチェックされたりするが、安全に運転するために自分の運転適性を判断し参考にするためのもので、この検査結果で不合格になることはない。

【行動について】
1.状況判断力 2.動作の正確性 3.動作の速さ 4.行動抑止性

【性格について】
5.神経質傾向 6.回帰性7.感情高揚性8.攻撃性 9.非協調性10.自己顕示性
11.情緒安定性等


大型特殊自動車の教習時間は6時間であることから、休みなどを調整して、事前にうまく予約を取れば4日間で取得することができると思う。ネット予約やキャンセル待ちなど上手く利用すれば、もっと短縮できるかもしれない。費用は約11万円くらいかかる。

教習では大型特殊自動車の教習車(コマツ WA100)であるホイールローダーの運転特性や安全運転のコツを学ぶ。

■特定特殊自動車排出ガス 2011年基準適合車 - コマツ WA100-7
http://www.komatsu-kenki.co.jp/products/download/pdf/wheel_loader/WA100-7.pdf

以下、卒業検定を受ける際のイメージトレーニングにも使えるようにWA100の乗車から発車準備要領を示す。なお、WA100もいくつかバージョンが有り、下記の内容はWA100-7の車両で教習を受ける場合に有効である。すべての車種に通用しないかもしれないが参考までにご紹介したい。

乗車から発車準備要領

1、車両の進行方向に向かって右側からアプローチし、前方のバケット、中央の車両下部、車両後方の安全確認を行う。

2、ドアノブを下に引いて左方向に開放し、カチッとロックするまで開放する。

3、自分の手荷物は車両内左手の空きスペースに置く。

4、右の手すりにつかまりながらステップを上って操縦席へ乗り込む。

5、乗り込んだらドアを閉めて、窓を3分の1開放する。

6、シートに座ったら、シートの前後調整、ハンドルの上下調整(調整レバーはハンドルバーの右下にある)、前方右上のバックミラー、両サイドのミラー、後部ミラーの目視確認。

7、ハンドル左手にあるギアレバーをN(ニュートラル)にして、右足でブレーキを踏んだ状態で、右手のバケット操作レバーの下にあるキーを右に回してエンジンを掛ける。

8、赤いバケット操作レバーのロックハンドルを上げてロックを解除し、グレーのバケット操作レバーをゆっくりと手前に引いて、右タイヤの上部と同じ高さまで上げて止める。

9、グレーのバケット操作レバーをゆっくりと左に倒してバケットを停止するまで上に向ける。このときにレバーを思いっきり左に倒したままにするとバケットが勢いよく手前に倒れ、衝突音がするため注意。

10、赤いバケット操作レバーのロックハンドルを下げてロックする。

11、左側のハンドサイドブレーキを下ろして、ハンドル左側のギアをF(フォワード)にし、右サイドミラー、方向指示器、左右の後方を目視して、教官の指示に従って発進する。


なお、教習所内は、普通車、普通二種、自動二輪、大型牽引、バスなども同時に教習を受けているため、カーブで止まっていたり、公道では考えられない先の読めない行動をするため、十分に余裕を持って予測運転することが求められる。

教習所内道路運転要領
(大型特殊車両(ホイールローダー)の運転要領)


・運転席は車体の中央にある。

・ハンドルに遊びが殆ど無い。

・内輪差、外輪差が全く無い。前輪に合わせて後輪が動く。

・速度が出ない。

・ハンドルは左手でノブを軽く握って操作し、右手はアームレストに置き、運転中は使わない。

・走行前、走行後にはアームの上げ下げとバケットを引く・倒す操作がある。

・走行時、地面から40cm程度の高さでバケットが引かれている必要がある。

・ホイールローダーの教習中は、時速20km以下で走行する。

・スピードを出しすぎると道路に凹凸があった場合、サスペンションがないため激しく上下にバウンスしたり、ふらつき(減点)の原因になってしまう。もし、バウンスし始めたら、直ちにアクセルを緩めて速度を落とすことで通常走行に戻すことができる。


以下に、卒業検定用の攻略法を示す。

1、優先道路走行中はレフトキープで左側の縁石に沿って走る。私はバケットの左上部と縁石が重なるように見える位置で走るとちょうど良かったが座高にもよると思う。

2、信号のない交差点には、菱形のダイヤマークが有り、このひし形(ダイヤマーク)の部分のすぐ内側ギリギリをタイヤが通らなくてはならない。バケットは超えてもいいが、タイヤがひし形の部分を踏んで大回りしたり、もっと手前を小回りするのは道交法違反となり、卒業検定の際、減点の対象となる。


道路交通法 第6節 交差点における通行方法等(第34条 2)
自動車、原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。


3、方向転換は所定のエリアで行われるが、バックする前の理想停車位置、バックしながらハンドルを切り始める目印となるポールが立っているため、簡単に行える。ただ、バックする際は、両側の後方を目視で安全確認し、長方形の枠内に車両を入れながら、タイヤをまっすぐに戻す必要が有る。

4、停止する際は、後ろの停止白線を超さないように停止すること。もし、壁に見立てた簾のような後部ポールに当てると減点になってしまう。

5、踏切は一旦停車し、左右を確認して踏切内で停止しないように渡りきるが、教習中のさまざまな車が優先道路を通るため、踏切を渡りきるまで、走行妨害しないように安全の見極めが必要。

6、カーブは必ず減速し、間違ってもカーブで加速しないこと。曲がりきったら少しずつ加速する。

7、教官から「指示速度15km」と言われたら、時速15km以上を出すと減点になる。

8、直線での進路変更は、バックミラー、方向指示器、後方目視確認の順で安全確認し、交差点の30m前から曲がる方向へ指示器を出しておく。

9、発着点に戻る際は、縁石から30cm以内をキープし、左折の方向指示器を出したまま徐行して停止。停止ラインのところには目印となるポールが立っている。

10、停止したら、ハンドブレーキを引いて、ハンドル左側の発進ギアをニュートラルにする。

11、ブレーキペダルを踏んで、赤いバケット操作レバーのロックハンドルを上げてロックを解除し、グレーのバケット操作レバーをゆっくりと右に倒してバケットを前に倒す。バケットを下に向けたら、レバーを左に倒し、バケットを整える。赤いバケット操作レバーのロックハンドルを下げてロックする。

12、バケットを整えたら、操作レバーを前に倒し、バケットを地面に付ける。

13、エンジンを停止し、何ドルロックレバーを解除し、ハンドルを上げる。ギアをR(リバース)に入れる。


14、車両を降りる前に窓を閉めて、後方確認し、ドアのロックレバーを引き上げて、ドアを全開する。

15、手すりにつかまりながら、車両に正対しながら梯子を下りてドアを閉める。


必ず、クリアしなければならない卒業検定の必須項目は、次の3つ。

・指示速度
・方向転換
・踏切停車

私が記憶している限りでは上記の内容で、ほぼすべてだと思うが、抜けているところもあるかもしれない。また、車種バージョンや教習所によっても多少異なるのかもしれない。

今回、私が実際に取得した大型特殊自動車運転免許の体験に基づき、攻略法的な内容を参考までにご紹介させていただいたが、もし皆さんの中で、重機や建機の資格取得に興味がある方は、資格取得同好会のようなグループを使って、地元の試験場や教習所に合った攻略方法を具体的に仲間同士で考えたり、攻略法の動画を作成したりするなど、中古の重機を購入して災害対応訓練や操作要領の継続訓練や人命救助のための応用訓練などができるよう組織に提案したりしても楽しいと思う。何よりもさまざまな資格を取得すれば自分の身を助けることには間違いない。

また、危険物や消防設備士、毒劇物、昇任試験なども攻略研究会を作って、お互いに共有しながら、自分たちを高めていけるとよいと思う。健康的な時間とエネルギーの生かし方だと感じる。

私は今年中に、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転技能講習や大型自動車、大型二種、普通二種なども取得したいと考えている。

今回の記事を書いていて、大変残念だったのは小松製作所のホームページやYoutubeの動画リストに、商品であるWA100の操作マニュアル的な動画が一切なかったことだ。

通常、操作が必要な機械類を制作販売しているメーカーであれば、購入検討者や初心者の安全のためにもわかりやすい動画オペレーションマニュアルがあってもいいのではないかと思う。

これからさらに地球温暖化が進み自然災害も増え続けることもわかっていることから、大型特殊車、重機、建機の需要は高まることは誰でも予想できる。

特に消防、自衛隊、警察等に所属し、災害現場で人命救助活動する人達にとっては、ストレス無く、これらの免許取得率が高めることで、多くの人命を救ったり、早く被災者の方々の生活を立て直すことができるのではないだろうか?

調べたところ、Komatsu USA Corp.の動画サイトには、各種重機や建機の操作方法、オペレーションマニュアル、安全教育ビデオ的な動画が200種類ほど紹介されている。ぜひ、日本語版の動画も作成してほしいところだ。
 
■Komatsu USA Corp.の動画サイト
https://www.youtube.com/user/KomatsuAmerica/videos

いずれにしても、災害現場でどのように重機や建機を生かすべきか等、関係機関の目的に応じて、安全に活用するための教育ビデオ的な動画アーカイブがあってもいいと思うが、これからの消防・防災関係者の課題かもしれない。

今の世の中、いつ何がどうなるかわからない。何があっても生きていけるようにありとあらゆる実力を身につけ、機が熟したときには生かせるように保持、向上していきたい。

Good Luck!

(了)


一般社団法人 日本防災教育訓練センター
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