特別対談  

西澤雅道氏 前内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当参事官室総括補佐

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矢守克也氏 京都大学防災研究所教授

(左)西澤雅道氏 (右)矢守克也氏
2014年の災害を振り返ると、2月には関東甲信地方を中心に記録的な大雪が観測され、7、8月には台風11、12号や活発化した梅雨前線により西日本各地で局地的な集中豪雨が起こった。9月には長野県と岐阜県にまたがる御嶽山で噴火が起こり、11月には長野県北部で最大震度6弱、マグニチュード6.7を記録する地震が発生した。このように規模の大きな災害が度重なる日本であっても、防災教育や防災訓練は形骸化しやすく、その効果が疑問視されてきた。地区の防災力を強化するために、どのような防災教育が求められるのか。地区防災計画学会副会長の矢守克也氏(京都大学防災研究所教授)と会長代理の西澤雅道氏(前内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当参事官室総括補佐)に聞いた。  

正解をつくる練習
災害が多い日本といっても、同じ地域で災害が繰り返されるケースは限定的で、多くの地域は被災経験がありません。そのような中で、意欲的に防災に取り組むにはどのような教育が必要でしょうか。

西澤:矢守先生は防災教育分野で有名な「クロスロード」ゲームの作成に力を注いで来られました。このゲームは、「正解がない」というのが特徴ですが、各地でとても盛り上がっています。このような仕組みを考えるに至ったきっかけを、まず矢守先生からご説明いただければ幸いです。

矢守:阪神・淡路大震災をきっかけに考えたのがクロスロードゲームです。「正解がない」問題に対して、自ら考えてもらうというのが目的です。自ら考えなくては、決して主体的に防災に取り組めないからです。

具体的には、クロスロードでは「Yes」、「No」の二者択一の設問に答えていきます。例えば、3000人がいる避難所で、あなたが自治体の職員や自主防災組織のリーダーだとして、2000人分しかない食料をすぐに配るかどうかを「Yes」「No」で答えてもらいます。

「クロスロード」のプレー場面 (写真提供:京都大学防災研究所教授 矢守克也氏)