シエンプレ株式会社とリスク対策.comの共催セミナー『企業価値を損なう、SNSリスクに備える「予防」と「初動」の実践論~レピュテーションダメージを防ぐリスクマネジメント体制の構築~』が11月26日に都内で開催され、SNS活用で生じる“炎上”に関するデータ、法務、実務の第一人者3名が、それぞれの専門的知見に基づき最新動向と対応策を解説した。

SNS炎上「大きな社会的コスト」

第1部の基調講演では、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授(経済学博士)でシエンプレ顧問を務める山口真一氏 が『データが解き明かす炎上リスクの「真実」 ~企業価値を毀損するメカニズムとは~ 』と題してSNS炎上の典型パターンとメカニズムを解説した。

冒頭、山口氏は「企業や官公庁によるSNS活用は今や必須」と述べ、その経済効果が広がる一方でリスクも大きくなっていることを指摘。2024年のSNS炎上発生件数は合計1225件(シエンプレ発表)と「平均して毎日数件の炎上が発生している」という実態を紹介した。

また、炎上の影響として、炎上対象企業が提供する製品・サービスの購入控えや、採用への応募控えが数十パーセントにのぼったことや、マクロ的な影響では「炎上が怖くて何も情報発信できない」「コンテンツが作れない」といった「表現の萎縮」に繋がっており「大きな社会的コストである」と指摘した。

続いて山口氏は、SNS上で炎上を起こす人の割合がネットユーザーの約40万人に1人に過ぎないとのデータに触れ、「社会を代表しているものではない」と強調。それにも関わらず、そうした人の声が大きくなる理由として「ネットは能動的な発信しかない言論空間。極端に強い意見を持っている人は大量に発信するという偏りがある」と説明した。また、炎上を書き込む理由では「許せなかったから」「失望したから」といった個人の正義感によるものが中心で「個々人の価値観で人を攻撃している」のが実態であると説明した。

そのほか、炎上の仕組みとして、ネットとマスメディアの共振現象が起きていることや、インフルエンサー、飲食店の客などの第三者、デマを流すアカウントが拡散する役割を果していることにも触れた。

“サイレントマジョリティ”に向けて情報発信を!

 このような炎上リスクに対する予防のポイントについて、山口氏は「コンテンツ作成への多様な人の関与」(関与するメンバーの心理的安全性を確保する必要性)や「専任チーム設置・ツール活用」(専門家との連携)、「透明性のあるコミュニケーション」といった7点を挙げた。

 また、炎上が発生した場合の対処では「事実関係の公表に徹すること」と述べ、「炎上している時に何か情報を発表すると、アンチからものすごい誹謗中傷を受ける。しかし、そこには黙って聞いていて納得する“中庸”の人たちがいる。ぜひ、そういった“サイレントマジョリティ”に向けて正しい情報を迅速に発信することを心掛けてほしい」と強調した。

 

“コンプライアンス”の変化、公益通報者保護法改正にも対応を

第2部の特別対談では、西村あさひ法律事務所パートナー弁護士の沼田知之氏がゲストスピーカーとして登壇し、『危機対策本部の「初動」における法的論点と実践 ~誰が、いつ、何を判断すべきか~』をテーマに、直近のSNS炎上事例4件での初動対応についてケーススタディを行った。シエンプレのシニアリスクコンサルタント・桑江令氏がモデレーターを務め、質疑応答形式で進行した。

ケーススタディ1 バイトテロ

コーヒーチェーン店でのバイトテロの事例

桑江:単純なバイトテロ被害ではなく、デマに巻き込まれた場合の炎上に対する初動は?
沼田:まずは正しい情報を伝えること。カウンターリリースを打っていくことが最初になる。投稿をした人が悪意をもってやっていたとすると、それに対して法的な措置を講じる必要があるのかを中期的に考える必要がある。

桑江:初動対応で危機管理本部として一番重要なところは?
沼田:調査において正常性バイアスをなるべく排除することが大事。法務やリスク部署の方、客観的な立場の人、リスクをきちんと判断できる人が対応するというのがポイント。情報の出し方では、事実確認の段階であったとしても“速報”であるということをきちんと分かる形で提示をすれば、万が一事実と違ったとしても、それほど大きなダメージを受けない。

桑江:法的措置をとる企業側が注意する点は?
沼田:法的措置をアナウンスすることのメリット・デメリットを考える必要がある。自社が批判にさらされやすいという自覚があるのであれば、敢えてそこに突っ込んでいくことを自制するほうが会社の戦略・戦術として正しいケースもある。

ケーススタディ2 記者会見

テレビ局による芸能人のコンプライアンス違反に関する会見の事例

桑江:記者会見を行うことになった場合に企業が注意すべき点は?
沼田:まずは記者会見を本当に行うべきなのかの判断が非常に大事。炎上が起きているようなケースでの記者会見は、基本的にプラスになるものはほぼない。どれだけ減点されないかという発想が大事。また昨今、コンプライアンスという概念が示す範囲が広がってきており、社会的な期待感や要請に対してきちんと応えているか、という点も求められるようになってきている。今回のような会見では、ハラスメントに対して自社がどういうポジションをとるのかをきちんと示すことが非常に重要になってくる。

ケーススタディ3 異物混入

牛丼チェーン店で異物混入が相次いで発生した事例

桑江:法的な観点から初動で一番重要視するところは?
沼田:まず大事なのは事実関係の把握を急ぐこと。被害が拡大する状況にあるのかどうか。既に出荷している製品の中に異物が混入している可能性があるのであれば、情報をリリースをすることがある種の社会的義務になる。もう少し視野を広げてみると、社内での情報共有、情報のエスカレーションを日頃からルール化してやっていき、その報告を監査がチェックする必要がある。最近では、決算への影響から監査法人が調査を要請してくることもある。

桑江:話題になる前に開示する/しないの判断基準は?
沼田:一律に何か基準があるというものではない。公表することが被害者のプライバシー侵害などの問題になるケースもある。一般的な話として、例えばクレームを言ってきている人がSNS等で発信しそうな人かどうかは大いに重要なポイントだ。

ケーススタディ4 社員トラブル

食品企業の元契約社員が公益通報によって退職を強要されたとして会社を提訴した事例

桑江:内部リークを含めた発信に対して注意すべき点は?
沼田:公益通報者保護法がまもなく改正され、不利益取り扱いについてより厳格なサンクションが課されることになる。努力義務から法的義務になるものも多いので、内部通報で入ってきた情報に対してはきちんと気を付けて対応しなければいけない。

桑江:公益通報に該当するかどうかの線引きは?
沼田:公益通報者保護法の要件を満たしていないから業務妨害と捉えて断固たる措置をとるという発想は、なかなか取り得るものではない。クレーマー的な通報者も多いので、特に窓口担当の方は苦労されてネガティブな感情を持つことが多く、経営者もそういう目で見ている人は多いと思うが、そこはパラダイムシフトすべき。公益通報者に対して不利益を与えることは極力避け、非常に慎重に対応すべきだろうと思う。

自社対応の限界―リスクへの対応をサポート

第3部では、シエンプレの桑江令氏が登壇し、『SNSリスクマネジメント体制を「機能させる」ための体制とテクノロジー』と題して、実効性のあるリスクマネジメント体制の作り方と、明日から検討できる具体的なソリューションを紹介した。 

桑江氏は、企業が炎上から身を守るための行動として「予防」「監視」「備える」の3つのフェーズがあり、それらを実施する中で、自社対応だけでは(1)身内の甘さと情報アップデートの困難、(2)24時間365日の監視は不可能、(3)判断の遅れ、という3点の限界・リスクに直面することを説明した。

その上で、桑江氏はシエンプレが提供するサービスとして、毎月最終水曜日に1カ月の事例解説を行うランチタイムウェビナー(無料開催)や、一般社員・広報向けのSNSリスク研修があり、これらによって情報アップデートの課題に対応できることを紹介。

また、「監視」フェーズに対応した「Web/SNS深層モニタリング」では、モニタリングツールの導入支援、設定、アラートのチューニングなどを行った上で、同社の専任スタッフが随時リスクを判断して連絡する、ツール/有人のハイブリッド体制を構築できると説明した。

さらに、「備える」フェーズへの対応では、「リスク管理文書作成支援」サービスにおいて、従業員向けガイドライン、炎上対応マニュアル、想定リリース文書など、同社が推奨する10個の文書の作成支援を行っているほか、Google Mapにおける口コミ分析やオーナー返信代行のサービスも提供しており「サービス品質の向上やレピュテーションにも繋がる」とメリットをアピールした。