日弁連シンポジウム

 
写真を拡大南相馬市長 桜井勝延氏

日本弁護士連合会主催のシンポジウム「教訓を活かすために 災害関連死を考える」が9月2日、東京の弁護士会館で開催された。南相馬市の桜井勝延市長は「南相馬市の現況と復興に向けて」と題した基調講演を行い、南相馬市の被害状況を報告した。

6月18日時点の同市の死亡者数は1094人、そのうち震災関連死は458名。年齢別では80代が209人、90代が129人に上ったという。桜井市長は「原発30キロ圏内の病院が使用できなくなり、1300床のベッドをゼロにされた。介護施設である特別養護老人ホームも自ら避難場所を探さなければいけなかった」と、災害関連死が拡大した原因を訴えた。

また、南相馬市の復興を妨げる要因として生産年齢人口(15才~65才)の減少を挙げた。市街避難者を加えた流出人口の約8割が50代以下。放射線への不安から、年少児を持つ若い世代が避難したため急速な高齢化が進んでいるという。桜井氏は「原発事故で家族が分断され、人が減り、あらゆるところでコミュニティが成り立たなくなっている。これでは地域のセキュリティを守るのは困難だ」と復興の難しさを語った。

このほか、基調報告として元南相馬市立総合病院医師の原沢慶太郎氏とNPOさぽーとセンターぴあ代表の青田由幸氏がそれぞれの取り組みを報告した。原沢氏は南相馬市の在宅医療の経験から、避難行為と災害関連死のリスク要因について言及。避難者を支える社会の仕組みの必要性について話した。青田氏は、当時南相馬市から避難できず自宅などに残された高齢者や障害者を支援した経験から、自治体が障がい者の情報を把握し、支援団体と連携することの必要性を訴えた。

パネルディスカッションでは原沢氏、青田氏に加え弁護士の小口幸人氏が参加。小口氏は「災害関連死の問題は、教訓となるだけではなく、現在進行形の問題であるこという認識を共有したい」と、改めて問題の重要性を強調。シンポジウムのコーディネーターを務めた岡本正弁護士は「災害関連死認定のために地方公共団体の審査会が所持する資料は、被災者の命や健康を守るための情報が詰まった貴重な資料だ。国などで分析をして、将来の防災や人命救助に役立てるデータを抽出することが必要」と話している。