2019/05/07
安心、それが最大の敵だ
軍部からマークされる
技監青山は軍部当局からマークされていた。青山を支えた技術官僚鈴木雅次は述懐する。
「内村鑑三の流れをくむ青山さんの高邁(こうまい)なヒューマニズムが2.26事件前夜にあたる軍部順応の世相に、入れられなかったのは当然である。そして内務省首脳部の一員として、反戦的と思われる言行に対し、激しい批判の起こるけはいがした。よって、先生(注:青山)が技監として発言される公の文章などにつき、事前に下見する役が第二技術課長であった私に当てられてきた。戦後の今から考えると、先生のお言葉(反戦思想)こそ、永遠の真理として正しかったのだ。それに対し時流に迎合しての浅薄な訂正を思い出すと、冷汗が出る」。
青山の具体的な反戦的言動を鈴木は記していない。青山も語っていないが、青山が横暴を極める軍部に批判的であったことは事実で、令嬢らには「人殺しをする陸軍の職業軍人や人を平気で裁く裁判官などには娘を嫁がせたくない」と語った。クリスチャンであるだけで特高警察や憲兵隊の監視の対象になったファシズムの時代である。青山の周辺は相当に当局から調査されたに違いない。とくに青山が心を痛めたのが、信仰を同じくする無教会主義クリスチャンに対する弾圧であり、反戦を訴えるキリスト教関係図書の相次ぐ発禁処分であった。弾圧の手を下したのは内務省警保局である。
「戦時下抵抗の研究―キリスト者・自由主義者の場合―」(同志社大学人文科学研究所編)によれば、無教会主義者で弾圧(出版物の発禁、発行停止、検挙、処罰など)を受けた知識人には、矢内原忠雄、藤沢武義、伊藤祐之、金沢常雄、政池仁らが挙げられている。東京帝大教授矢内原忠雄は青山の信仰上の友であった。昭和12年(1937)12月、矢内原は右翼教授陣の策動もあって辞表を提出し、大学を去らざるを得なくなった。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方