2019/06/16
企業をむしばむリスクとその対策
□解説:不正のトライアングル(3要素)
不正が起こるメカニズムについては、アメリカの犯罪学者であるドナルド.R.クレッシーが唱えた「不正のトライアングル(3要素)」理論が広く知られています。クレッシーは実際の犯罪者を調査し、不正は次の3つの要素が全てそろった場合に起き得るという結論を導きました。
① 動機:不正を起こすに至る「きっかけ」
クレッシーは「他人と共有できない問題」が動機になり得ると言っています。ローンの支払いにお金が必要であるといった事情や、社内での自身の処遇に対する不満などがそれに該当するでしょう。また、動機の中には「プレッシャー」も入るといわれており、「売上や納期に対するプレッシャー」なども不正行為の動機になり得ます。
② 機会:不正を起こすことができる「チャンス」
機会には「現金の出納を一人の担当者のみで行っている」といった「不正を行おうと思えばできる」機会と、「業務のチェック機能がなく、野放しの状態である」といった「不正を行っても気付かれない」機会の2種類があります。
③ 正当化:不正を行う上での都合のいい「言い訳」
字面だけを見た場合、不正の要因の一つが「正当化」とはどういうことだ?と思われるかもしれませんが、ここでいう正当化とは、自分にとって都合のいい理由をこじつけ、不正行為自体を正当化してしまうことを指します。クレッシーは、「動機」があり「機会」があったとしても、それだけでは不正行為は行われないとしています。なぜなら人間は不正を行う動機と機会があっても「こんなことをしてはマズい」「やっぱりやらない方がいい」という良心の呵責に苦しむからです。しかしながらこの場面で「横領ではなく、少しのあいだ借りるだけ」や「上司の指示だから仕方ない」という理由を付けて、良心を捨ててしまうことが「正当化」に当たります。
不正のトライアングル(3要素)のポイントは、3つの要素が全てそろったときに不正が行われるという点です。裏を返せば3つのうちのどれか1つでも要素を消すことができれば、不正は行われないと考えることができるのです。
企業をむしばむリスクとその対策の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方