2019/06/20
昆正和のBCP研究室
■長い目で見ることの大切さ
カスタマーサポート部門を持っている会社は、本来はその必要があって、つまり顧客満足や信頼性の向上を達成するために導入したはずである。ところがその活動の成果が見えないという理由でコストセンターのレッテルを貼ってしまったばかりに、まさに「コスト」しか見えなくなっているのだ。
BCPが抱えるコストの問題はカスタマーサポートの問題と似ている。BCPは災害から社員(およびその家族)を守り、事業への影響を最小化して顧客や取引先企業との信頼関係を維持するのが目的である。しかしBCPを作っても、すぐに災害が起こってその効果を確かめられるわけではない。経営者にとってすぐに結果の見えない活動はコストばかりかかる無意味な活動と映る。
しかしここに誤解がある。カスタマーサポートに話は戻るが、この時代、もしこの種の業務部門が存在しなかったら、あなたはその会社の製品やサービスを購入したいだろうか。問い合わせやクレームの受け付けができない会社はブラックボックスのようなものであり、とても安心して取引できるものではない。目には見えなくても直接利益の増加に貢献しなくても、カスタマーサポートはその会社に対する消費者やユーザーの信頼を確実なものにし、より多くの購買機会を醸成するために機能しているのである。
BCPがもたらす効果には3つある。一つは「社員の結束力を高める」こと。基本的な防災・減災対策ができており、社員(とくに中間管理層以上)がBCPに規定した各自の役割や部門間の有機的なつながりを認識しておくことで社員の結束意識が高まり、心置きなく日々の業務に専念できるだろう。二つ目は「顧客・取引先の信頼性向上」である。これはカスタマーサポートの信頼性と同じで、目には見えなくても「この会社となら安心して取引できる」という効果を生み出す。三つ目は「実際に災害が起こったときの会社の被害と事業への影響の軽減」。これはもはや説明を要しない。
いずれにしても、BCP/BCMの効果は中長期的に発揮されるものであり、目先のコストの対価としてその是非を判断するものではないのである。
(了)
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