2019/09/24
知られていない感染病の脅威
日本にウイルスが侵入する可能性
ウエストナイルウイルスを媒介する蚊は主にイエカの仲間ですが、日本脳炎ウイルスを媒介するコガタアカイエカやヤマトヤブカなどが日本国内に生息しており、これらの蚊もウエストナイルウイルスを媒介します。本ウイルスは、カラス、スズメなどの鳥類をウイルスの増幅動物としますが、これらの野鳥は、日本の都市部に多数生息しています。
従って、ウエストナイルウイルスが日本に侵入した場合、本病の流行を引き起こす環境は、すでに整っています。さらに日本とアメリカとの頻繁な人と物の交流を考えると、日本への侵入の可能性は極めて高いと言わざるを得ません。
極東ロシアでウエストナイルウイルス感染鳥が確認された2005年当時、筆者はたまたま鳥取県衛生環境研究所に評価委員として協力していました。鳥取県は、日本海に面する他県と共同で、シベリア方面から飛来する渡り鳥により、日本国内にウエストナイルウイルスが侵入する可能性を念頭に置き、県内で死亡した野鳥や大山山麓の森林地帯などに生息する蚊からのウエストナイルウイルス検出を試みる研究を実施しました。その結果、ウエストナイルウイルスは分離されませんでしたが、日本脳炎ウイルスが多数分離されました。日本脳炎の流行が国内では起きていないのに、と日本脳炎ウイルスが密に分布していることに驚いたことを記憶しています。
このような調査は、早期に結果が出るものではなく、地味ですが、ウエストナイル熱の防疫対策を考える場合、その重要性は高く、継続される必要があると考えています。
(了)
- keyword
- ウエストナイル
- ウエストナイルウイルス
- 脳炎
- 感染病
- 感染症
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方