2019/10/30
アンサンヒーロー・警備員の社会的地位向上を目指して
権限と権利の限界
テレビで「万引きGメン」と呼ばれる施設巡回警備員の活躍を描いたドラマがありますよね。ドラマでは、警備員が万引き犯を裏の事務所に連れていき、「名前は?」「家族は?」「なぜ万引きしたのか?」といった質問シーンがよくありますが、実際は警備員が尋問などを行うことは禁じられています。これらは任意の同行であり、強制力はありません。とはいえ、万引きした人をそのまま帰すことはできないので、警察官が到着するまで、事務所で待ってもらうということになります。
刑事訴訟法第214条 (現行犯人を逮捕した場合の措置)
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕した時は、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
214条に明確に記載されているとおり、現行犯人逮捕の権限は私たち民間人にもありますが、その後の調書取り、身体検査、所持品検査などを行う権限は一切与えられていません。ドラマのような強制力を持っての取調べ類似行為は現実には警備員に許されていません。
警備員は、その業務上、警察官よりも先に危険な(危険そうな)人物と出くわすことはありますが、警察官のように職務質問をする権限はなく、武器を持つ権利もありません。不審者を発見し攻撃されたとしても、自身を守るべき武器を携帯していないため、素手で相手に立ち向かわなければなりません。
現金輸送や貴重品運搬業務に就く警備員は、警戒棒の携帯が認められていますが、相手がナイフや銃を持っていたら警戒棒だけを武器にして無傷でいられるでしょうか? 危険と隣り合わせで私たちの安心と安全を守ってくれている警備員が日本中にいます。
アンサンヒーロー・警備員の社会的地位向上を目指しての他の記事
- 第4回:エッセンシャルワーカーとしての警備員
- 誰でもできるけど、簡単にはなれない
- 武器を持たず、権限もない危険な任務
- 知ってほしい「縁の下の力持ち」の存在
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月21日配信アーカイブ】
【5月21日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:日本海溝・千島海溝地震
2024/05/21
-
医療機能の維持を可能にした徹底的なハード対策非常時の代替ライフラインはチェック表で管理
元日の能登半島地震で激震に襲われた恵寿総合病院では、地震後も業務を止めることなく、充実した医療を提供し続けた。10年をかけて整備してきた、徹底的なハードとソフト対策の成果だった。
2024/05/20
-
目まぐるしい状況変化 懸命に向き合った3カ月
市立輪島病院は能登半島地震で被災しながらも、懸命の処置により、運び込まれる負傷者や感染症に苦しむ患者の命をつなぎました。超急性期・急性期を乗り切ると医療需要は急減し、代わって介護機能の維持が深刻な課題に浮上。発災から介護医療院開設までの約4カ月、病院で何が起きたのかを同院事務部長の河﨑国幸氏に聞きました。
2024/05/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方