2020/01/22
中小企業の防災 これだけはやっておこう
3.従業員の自宅における防災
地震がいつ、どこで発生するかを正確に予知することは、今のところできません。つまり従業員が勤務しているときに地震が起こるとは限らず、夜間や休日など自宅にいるときに地震に見舞われることも十分考えられます。
これまで、企業の防災を考えるなかで、勤務中の従業員を守るためのさまざまな対策を検討してきましたが、その一方で、もし従業員が自宅で家具の下敷きになりケガをしてしまうと、企業の復旧や事業継続に参加することはできません。また従業員自身が無事であっても、家族が負傷したり、亡くなったりすると、従業員が速やかに職場復帰することも難しくなるでしょう。
首都直下地震クラスの大きな揺れに見舞われたとき、従業員やその家族の身を守るのは、防災に関する知識や備蓄です。企業は自社の従業員が自宅においても身を守れるように、次の項目について社内教育を進めておくことが求められます。
(1)住まいの耐震性
大きな揺れによって建物が倒壊した場合、そこで生き残ることは難しくなります。特に建築基準法施行令改正(1981年5月31日)以前に建築された建物は、大地震に対する安全性が低いと考えられています。耐震診断を受け、必要な耐震化工事を行うことを検討します。
自治体によっては、耐震診断や耐震化工事に必要な費用を補助する制度を設けている場合がありますから、確認するとよいでしょう。また、これから自分の住まいを選ぶ従業員に対しては、建物の耐震性について啓発します。
(2)家具や電気製品の転倒防止
近年の地震による負傷者の30%~50%は、家具や電化製品の転倒や落下、移動によるものとされています。自宅の家具、また冷蔵庫などの大型電気製品などは、大地震が起こると必ず倒れるものと考え準備を進めます。
家具類の転倒・落下・移動対策としては、次のようなことが考えられます。
・納戸や据え付け収納家具などを使い、できるだけ生活空間に家具を置かない(特に、寝室には背の高い家具を置かない)
・タンスや食器棚などは、壁に固定する
・書棚は壁に固定するとともに、重い書籍は下の段に入れる
・家具は、万が一倒れても、出入り口をふさがないように置く
・机の上のパソコンは粘着マットなどの上に置く
・窓ガラスは、強化ガラスに入れ替える、あるいは飛散防止フィルムを貼る など
(3)水・食料の備蓄
大きな地震が起こると、電気・ガス・水道などのライフラインが停止するとともに、物流が乱れることにより、食料品などさまざまな物資の入手が困難となります。
発災後は、当面自宅にとどまり生活することを余儀なくされますので、救援物資が届くまでの間、家族が過ごせるように水・食料などを備蓄しておくことが求められます。
それぞれの家庭においても、最低3日分、できれば1週間以上、持ちこたえられる量を準備します。
【ここがポイント】
被災時にも、企業の重要な経営資源である従業員を守るためには、事前の準備が極めて重要です。
1.従業員の安全配慮義務を果たす
2.安否確認は手作業ではなく、システムを活用する
3.従業員が自宅でも身を守れるように防災教育を行う
【参考文献】
「今までなかった!中小企業の防災マニュアル」(労働調査会、筆者編著)
(了)
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
-
-
-
家庭の防災は企業BCPとつながっている
昨今は社員の自主防災力向上に努めている企業も多いでしょう。この時期は災害時のルール周知に余念がないと思いますが、ポイントとして提案したいのが、家庭の防災と企業BCP のつながりをしっかり伝えること。「家庭と会社は別」と考えがちですが、家庭の防災力を上げないと企業の事業継続力も上がりません。メッセージを出すよいタイミングです。
2024/05/02
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方