消毒用エタノールの抗菌・抗ウイルス効果

エタノールは容易に細胞の膜を透過します。しかも一定以上の濃度では、細菌の細胞膜など脂質を含む膜やタンパク質を変性させる作用で殺菌作用を示します。

効果はあるが一過性(写真:写真AC)

またウイルス、特にウイルス粒子表面に、コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどのように脂質を多く含むエンベロープをもつウイルスに対しては、エタノールがエンベロープの主構成成分である脂肪に反応して、これを破壊することにより感染力を消失させることが分かっています。

エタノール濃度が60%以上あれば有効であると厚生労働省は認識しています。消毒用エタノールの消毒効果は一過性であり、揮発してアルコール濃度が下がれば効果も消失します。抗菌・抗ウイルス作用は持続しません。

消毒用エタノールの使用にあたって

実際に消毒用エタノールを手指の消毒のために使用する場合には、次の点を改めて熟知しておく必要があります。

1.効能又は効果
手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療機器の消毒
2.用法及び用量
消毒用エタノールをそのまま希釈せずに消毒部位に塗布する
3.使用にあたっての注意事項
1)刺激作用を有するため損傷皮膚及び粘膜に使用してはならない【禁忌】
2)眼に入らないよう注意すること。誤って入った場合には水でよく洗い流すこと
3)広範囲又は長期間使用する場合には、蒸気の吸入に注意すること。なぜなら、エタノール蒸気に大量に又は繰り返しさらされた場合、粘膜への刺激、頭痛等を起こすことがある
4)皮膚面の同一部位に反復使用した場合には、脱脂等による皮膚荒れを起こすことがある
5)血清、膿汁などのタンパク質を凝固させ、内部にまで浸透しないことがあるので、これらが付着している医療器具等に用いる場合には、十分に洗い落としてから使用する必要がある
6)金属器具を長時間浸漬する場合には、腐食を防止するために0.2 ~1.0%の亜硝酸ナ トリウムを添加する必要がある
4.消毒用エタノールの副作用
1)過敏症、発疹など出現することがある
2)皮膚に刺激症状の出現することがある
5.保管上などの注意
1)密栓し、火気を避けて冷暗所に保存すること
2)保管している容器のキャップを取るときは、液が飛び出さないように容器の肩部を持ちキャップを開封すること

以上より、消毒用エタノール使用に際し、留意せねばならない注意点が少なからずあることが分かります。特に皮膚の敏感な人の手指消毒には消毒用エタノールの使用は不向きで、アルコール成分を含まない安全性の高い別の消毒剤の使用が推奨されます。