2020/10/31
事例から学ぶ
ディスコ(東京都大田区)
2009年のH1N1新型インフルエンザ以降、徹底した感染症対策に取り組んできたことで、マスク不足や消毒液不足などの大きな課題もなく事業継続をしている企業がある。半導体加工装置を製造するディスコだ。5Gへの対応で例年より需要が高まっている半導体業界とあって、工場はコロナ禍でもフル稼働状態。従業員数は国内だけで4000人以上いるが、10月中旬時点でいまだ感染者はゼロ。広島事業所では公共交通機関を使わない通勤体制を実現するため、3月からそれまで工場間移動で使っていたマイクロバスを朝夕の社員の送迎に利用し、7月には東京〜広島間の移動手段として1800万円を投じて大型バスまで購入した。同社の感染症対策を取材した。
中国武漢市で原因不明の感染症が広まっているとの情報が同社に入ったのは2019年12月の暮れ。正月休み明けの2020年1月8日には、全社員にメール連絡で「原因不明の肺炎が流行する兆しがある」と注意喚起した。1月半ばに新型コロナウイルスの感染拡大と判明すると、即座にマスク着用や手指消毒の徹底について周知した。
2009年からの「ピンクマスクルール」
同社は、2009年の新型インフルエンザ以降、マスクと消毒液不足で大騒動になった課題を再び繰り返すことがないよう、感染症対策を日常の中に落とし込むための取り組みを続けてきた。マスクは全従業員の半年分を備蓄し、2009年5月から全社員に出社前の体温測定を義務付け、毎朝自社のウェブフォームに記録させている。感染症の種類にかかわらず、発熱があれば、その情報はリスクマネジメント部門、保健師、部門長に飛ぶ。発熱中は当然、出社は禁止だが、それだけではない。
インフルエンザの場合は、治癒後の出社時は常時ピンク色のマスクを着用することを義務付けていて、一人でもピンクのマスクの着用者がいると、同じ部門の人間は会議室など密室空間では全員マスク(白色)を着用し、他部門の者が同席する会議でもピンクのマスクを着用している人がいれば、他の全員が白いマスクをするなど、独自ルールを決めて感染防止を徹底してきた。受付や会議室前には当時からマスクが常備されている。
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