その備蓄、本当に必要ですか?(Photo AC)

もう一度見直そう、あなたと企業の備蓄品 

企業の備蓄を見直す前に、あなた自身の備蓄品を見直してみてはいかがだろうか?会社にいる時間を1日8時間とすると、24時間のうちの3分の1。さらに年間トータルでみると、企業に年間120日の休日があるとして、実は会社にいる時間は1年間のうちの2割強程度にしかならない。企業が備蓄しているだけでは、あなた自身が生き延びるためには不十分なのだ。守られる側から守る側に回るために、もう一度自分自身の備蓄を確認してほしい。

防災やBCPに携わる従業員として、備蓄には事業者が備える「企業備蓄」「家庭内備蓄」、さらに個人で備える「携帯備蓄」の少なくとも3種類を考えたい。

東京都内に勤める会社員の平均通勤時間は片道約1時間と言われる。確実な統計はないが、経験的に仕事中の外出や外食などを考えてみると、平日の1日のうち、4〜6時間程度は平均して会社でも家庭でもない場所にいると考えられる。

災害はいつどこで発生するかわからない。いつどこで被災しても困らないよう、外出するときにはカバンの中に以下のものを備えておきたい。

個人が携帯する備蓄の例

・500mlペットボトル
・カロリーメイトなど非常食
・携帯用簡易トイレ(3回分)
・呼子笛
・携帯用抗菌おしぼり
・レジ袋やビニール袋
・ティッシュペーパー
・アルミブランケット
・携帯(LEDライト)
・モバイルバッテリー
・家族の連絡先と写真
・医薬品(持病の薬やばんそうこうなど)
・ハサミやカッター
・メガネ・コンタクトレンズ

もちろん、これらすべてを常時携帯するのは現実的ではない。自分にとって何が必要かはそれぞれの立場によって異なるため、まずは自分が必要と思う物を考えることが必要だ。すべてバッグに入れていても、たまたま持ち歩いていない時に被災することもあり得る。ビル内での移動時に、エレベーターの中で数時間閉じ込められたらどうするか?

例えば、バッグの中に入れておくものとは別に、財布の中にビニール袋をたたんで入れておく、停電に備えてキーホルダーや携帯に笛やLEDライトをつけるだけでも最低限の対策は可能になる。 

日常的に使うものと併用することで量を軽減することも考えられる。例えば最近では業務用のICレコーダーにラジオが付いているものもある。LEDライトは小型でも性能がいいものも出ているし、スマートフォン用のモバイルバッテリーに非常用LEDライトが付いたものもある。このように、なるべく普段使いしている物のなかで、少しずつ防災を意識して選択することが長続きする秘訣と言える。 

持ち運びしやすい携帯備蓄の例として、例えば黒いビニール袋があげられる。災害時にエレベーターに閉じ込められた時には、排泄物をその中に入れておくことができる。レジ袋も簡単に携行できるが、これも使いようによっては止血にも使えるほか、三角巾としても使用できる。乳幼児を連れている場合であれば、タオルやハンカチと組み合わせて簡易のオムツを作ることもできる。 

「家族の写真」は、危機管理教育研究所の国崎信江さんのすすめによるもの。被災して家族と離れ離れになってしまった場合、写真を持っていれば「この人を探しています」と言いやすく、家族を探せる可能性が高くなる。携帯電話に写真を納めている方も多いかもしれないが、やはりバッテリーが切れやすいのでプリントされているものを携帯していた方が無難だろう。また、普段から子どもの写真を持ち歩いていれば、迷子になったときなどにも活用出来る。気軽にできる備蓄品の1つとしてお勧めしたい。 

もちろん、個人用の「携帯備蓄」にも正解はない。毎日の生活のなかで、災害時を想像しながらすこしずつ中身を見直し、何よりも「継続する」ことが重要なのだ。

リスク対策.com編集長の大越が普段持ち歩いている携帯備蓄品。内容は常に見直している。