(写真:イメージ/写真AC)

熊本地震から5年

この4月で2016年の熊本地震から5年が経過した。熊本地震は、本震のマグニチュードは7.3と、直下型地震としては1995年の兵庫県南部地震以来初めてマグニチュード7を超える大きな地震であり、熊本県益城町をはじめ、震源付近においては住宅など多数の建物が倒壊した。内閣府の資料によれば、8657棟が全壊し、3万4491棟が半壊という被害が生じている。また熊本市のシンボルである熊本城が大きく被災したことも大きなインパクトを与えた。

この地震の大きな特徴の一つに、震度7の地震が2回続けて起きた、という点がある。1回目は2016年4月14日の21時26分のマグニチュード6.5の地震であり、2回目はその約28時間後の4月16日の1時25分のマグニチュード7.3の地震である。1回目の地震でも、震度7を記録した熊本県益城町では大きな被害が出ていたと考えられるが、2回目の地震はそれをさらに上回る規模のものであり、被害を拡大したものと考えられている。1回目、2回目の地震ともに、夜間に発生したこともあり、被害の状況を把握するのに大変な困難があったことは想像に難くない。

また、この2カ月後の6月には大雨により熊本県益城町で緑川水系木山川の堤防が決壊し、洪水が発生した。地震によって堤防の強度が低下していた可能性も考えられたため、地震と大雨による複合災害が生じた、とも報じられた。熊本市およびその周辺では、2012年や2017年にも大雨による洪水が発生している。梅雨時期に大雨が降ることも多く、台風も年に3個程度は接近するという統計データがあることからも、洪水のリスクが比較的高い地域といえる。

One Concernでは、地震と洪水を対象に人工知能(AI)を活用した防災・減災を支援するRaaS(Resilience-as-a-Service、サービスとしてのレジリエンス)プラットフォームを開発しており、2019年3月からは、損保ジャパン社と民間気象予報会社ウェザーニューズ社と業務提携し、熊本市でAIを活用した防災・減災システムに関する実証プロジェクトを開始している。熊本市は、上記のように、地震や洪水の被災経験があり、防災に対する関心が非常に高かったこともあり、実証プロジェクトに協力いただけることになったものである。本稿では、その取り組みについて紹介したい。

One ConcernのRaaSプラットフォームは地震が起きた時、あるいは気象予報から洪水の発生が予測される時に、どのような被害になるのかを予測するシステム(災害対応)と、確率論的な災害リスクをレジリエンスの観点で評価するシステム(リスク評価)の2本の柱から成る。One Concernの技術の特徴としては、災害科学とAI/機械学習技術の融合によりバーチャルな世界にデジタルツインを構築し、実際の世界で起こり得る事象をシミュレーションにより再現しようとする点にある。ここでは、熊本市で実証プロジェクトを行っている、災害対応システムの概要について示す。