福岡・北九州市のTOTO本社。奥に工場、隣に「TOTOミュージアム」がある

住設機器製造・販売のTOTO(福岡県北九州市、清田徳明社長)は今年度「新共通価値創造戦略TOTOWILL2030」を掲げ、2030年に目指す姿に向け新たなスタートを切った。トイレや洗面・浴槽など主力の水まわり製品は海を越え、前年度決算では売上の4分の1が海外事業。拠点や社員が各地へ広がるなか、同社はBCP・危機対応と一体となったリスクマネジメント活動を展開する。カギは、多岐にわたる部門間・拠点間での情報の共有、一元化。仕組みと取り組みを聞いた。

TOTO
福岡県北九州市

事例のPoint
❶情報共有を迅速化し潜在リスクを早期発見
・メンテナンス担当者の報告書を共有。「焦げ」などのワードがあれば直ちにリスク責任部門へアラート

❷危機事象の緊急連絡を社員に義務付け情報を一元化
・危機事象が発生した場合、リスク管理統括室へ24時間以内に一報を入れることを全社員に義務化。情報を集約して経営層への報告窓口を一本化するとともに、危機事象をデータベース化して未然防止・再発防止に役立てる

❸危機を機会に変えたコロナ禍でのグローバル活動
・拠点間の物資支援など、コロナ禍での活動を皆が視聴しやすいようにDVDで共有。普段顔の見えない社員同士が企業理念のもとで気持ちを一つにし、目線を合わせる機会に

中国・アジア、欧米などに供給網・販売網を広げるグローバル住設事業は連結売上高約5800億円、社員はグループ・関連会社を含め約3万3800人におよぶ。拠点は国内44(うち工場20)、海外32(同19)、ほかショールームが計112カ所。リスクマネジメントのカギは、多岐にわたる部門間・拠点間での情報の共有、一元化だ。

リスクマネジメントの推進体制と対象とする重大リスク、活動サイクルはのとおり。事業継続にかかるリスクを年度当初に洗い出し、影響度と発生頻度からマトリクス評価を行って、それぞれ未然防止・低減活動を推進。その状況を年4回、副社長を委員長とするリスク管理委員会にあげてモニタリングする。

重大リスクについては、一つ一つに責任部門を決めている。製造物責任やリコールといった製品系であればお客様本部、個人・機密情報漏洩などのIT系であれば情報企画本部といった具合。それぞれが責任をもって未然防止・低減活動を推進し、結果をリスク管理委員会に報告、許容範囲を超える事象が発生すれば影響の最小化を図り再発防止策を講じる。

一連のカギは、前述したように情報の共有と一元化。特にPDCAの「D」において、各責任部門が他の部門・グループ会社らといかに情報を共有しながらリスクの未然防止・低減を進めていけるかにある。

潜在リスクを早期発見する情報共有体制

例えば製造物責任違反やリコールは、売上への影響が大きいうえブランドの毀損にもつながる重大リスク。それがここ10 年顕在化していないのは、ISOにもとづく品質管理システム、製品開発時の設計審査、出荷時の検品システムが効いているのに加え、使用段階の不具合を素早くキャッチする体制の役割も大きい。つまり潜在リスクの早期発見だ。

グループのメンテナンス会社が日々行っている保守点検で不具合が発覚したら、全国どこであってもリアルタイムで責任部門のお客様本部へ連絡が届く。いわば現場担当者があげる日報の共有だが、ネットワーク上に入力した報告書に「焦げ」などのワードがあれば直ちにヒットし、アラートを飛ばす仕組みが特色だ。

「例えばお客様が浴室内でタバコを吸って浴槽が焦げてしまった、と。担当者がそうした報告を入力すると『焦げ』という単語に反応し、自責・他責を問わずお客様本部にすぐ情報が行く。使用段階の製品を見守る仕組みは以前からありましたが、現在はより速やかになっている」。リスク管理統括室リスク管理グループリーダーの桐谷峻介氏はそう説明する。