2023/01/12
防災・危機管理ニュース
2023年版の「グローバルリスク報告書」が、世界経済フォーラムから発表された。今回の報告書では、第1章で、現在の危機(すでに発生しているグローバルリスク)がもたらす影響のうち多くの人が短期的(2年間)に展開すると予想している最も深刻なグローバルリスクについて考察。第2章では、今後長期的(10年後)に最も深刻になると思われるリスクを取り上げ、新たに発生あるいは急速に加速する経済、環境、社会、地政学、技術的なリスクについて考察している。さらに、第3章では、中期的な未来を想定し、前章で説明した新たなリスク間の関連性が、2030年までに天然資源不足を中心とする「ポリクライシス」へと発展する可能性を探っている。
このうち、今後2年間の短期で見ると、最も深刻なリスクは物価高騰などによる「生活費の危機」だと指摘。現在、世界規模のパンデミックと欧州で起きている戦争がエネルギー、インフレ、食料および安全保障の危機を再び前面に押し出していることから、こうした危機がさらなるリスクを芋づる式に引き起こし、その結果から生じた不況リスク、苦境にある企業の負債の増加、継続する生活費の危機を招くとしている。また、虚偽情報や誤情報による社会の二極化、急を要する気候対策の停滞、全体として結果がゼロにしかならない地経学上の争いが、猛威を振るうと予測している。
今後10年のリスクについては、世界が気候変動の緩和策や適応策でより効率的に協調を始めなければ、地球温暖化と環境の破壊が続くことになると警鐘を鳴らしている。特に高リスクのトップ10のうち上位5つを占めるのは、気候変動の緩和策と対応策の失敗、自然災害、生物多様性の喪失、環境の悪化で、特に生物多様性の喪失はこれからの10年で最も急速に悪化するグローバルリスクのひとつとみ見ている。これらと並行して、危機によってリーダー層および地政学的なレベルで対立が高まり、そこからかつてない次元の社会不安が引き起こされ、医療や教育や経済の発展に対する投資が消失したために、社会の一体性がさらに損なわれているとしている。最終的には、激化する対立は地経学を武器とするリスクだけに留まらず、再軍事化リスクにも繋がり、ここでは新興テクノロジーが利用され悪意あるプレイヤーが台頭してくるとも指摘している。
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