6月1日から改正消費者契約法が施行(イメージ:写真AC)

はじめに

読者の皆様は、民法という法律の存在をご存じかと思います。民法は、総則、物権、債権、親族、相続という5つの「編」から成り立つ法律で、私人間(しじんかん)の生活関係全般に関するルールを定めています。民法のこういった性質に照らし、同法は私法の一般法であるといわれます。そして、その特別法として位置づけられているのが、今回取り上げる消費者契約法です。

民法のうち、債権の中の契約については、対等な当事者間の自由な意思に基づく合意を前提として制度設計されています。しかしながら、現実の社会では、契約当事者間に情報や交渉力等の格差があり、また、自由な意思決定が阻害された形で合意がなされる場合があります。

こういったケースに対応すべく、民法の規律を補充・修正する特別法として、消費者契約法が設けられているのです。

「特別法は一般法に優先する」というフレーズがあるのですが、同一の事実関係について、一般法と特別法のいずれもが適用可能である場合には、一般法に優先して、特別法が適用されることになります。

このため、民法・消費者契約法の関係では、一般法たる民法の規律に優先して、特別法たる消費者契約法の規律が適用されることになり、これをとおして「消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」(1条)という消費者契約法の目的の達成が図られることになります。

一消費者としても、事業者としても、消費者契約法は身近な法律(イメージ:写真AC)

日常生活において私たちは買い物をはじめとして多くの取引(契約)をしながら暮らしており、一消費者としても、BtoCのビジネスを展開する事業者としても、消費者契約法は身近な法律であるといえます。また、本年6月1日より改正消費者契約法が施行されたことや、いわゆる霊感商法に対応するための規律が改正・施行されたことなどもあり、消費者契約法はいま注目を集めているといえます。そこで、今回、消費者契約法の概要についてご説明します。

消費者契約法の適用範囲について

消費者契約法においては、「消費者」と「事業者」との間に締結される「消費者契約」に関し、事業者の努力義務、消費者の取消権、消費者契約の条項の無効等の諸規定が置かれています。「消費者」「事業者」「消費者契約」という文言が、同法の適用範囲を画する機能を果たしており、その理解が重要となります。各文言の定義は下表のとおりです。

これらの文言の意義に照らすと、個人事業者が法人と契約する場合には、「消費者契約」に該当しませんので、消費者契約法は適用されません。一方、「消費者」と「事業者」との契約であれば、売買契約であるか否かといった契約の類型は問われず、あらゆる契約が「消費者契約」として、同法の適用対象となります。