北米、欧州、アジアなど世界が熱波や豪雨の猛威にさらされている。命に危険が及ぶ高温が続き、山火事や記録的な水害も発生。世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は「地球温暖化の影響で異常気象の頻度は増しており、残念ながら『新たな日常』になりつつある」と警鐘を鳴らす。
 ◇米西部で連日43度超
 米メディアによると、西部アリゾナ州フェニックスで18日、43.3度(華氏110度)を超えた日が19日連続となり、1974年の「18日連続」の最長記録を破った。
 米国では6月下旬以降、西部から南部にかけての広い地域で、熱が同じ場所にこもり続ける「ヒートドーム」と呼ばれる現象が発生。フェニックスなど各地で熱中症とみられる症状での死亡例が報じられている。
 山火事の被害も甚大だ。カナダ政府の関連団体によると、全国で現在、約900件の森林火災が起きており、うち6割は「制御不能」。煙は国境を越えてたびたび米シカゴやニューヨークに流れ込み、大気汚染を引き起こしている。
 一方、米東部では、バーモント州で今月9、10両日だけで2カ月分に相当する降雨を記録。ニューヨーク、ペンシルベニア両州などでも今月、洪水による死者が相次いだ。
 ◇欧州、過去最高更新か
 欧州では、スペインやイタリア、ギリシャなどが猛暑に見舞われている。2021年8月にイタリアのシチリア島で観測された欧州の最高気温48.8度が、近く更新される可能性もある。
 英BBC放送によると、シチリア島では18日、60代の男女が家の中で死亡しているのが見つかった。イタリアの他都市やスペイン各地でも、熱中症関連とみられる死亡例が相次いでいる。
 欧州は昨年も熱波が襲来し、医学誌に最近発表された研究によると、5月末から9月初旬にかけて6万人以上が高温の影響で亡くなった。比較的冷涼だった欧州でエアコンが普及していないことも、被害に拍車を掛けたとみられる。
 ギリシャではアテネ近郊などで山火事が収まらず、火の手は住宅地にも。スイス南部でも森林火災が続き、住民が避難を余儀なくされた。
 ◇中国「巨大サウナ」に
 アジアも猛烈な暑さに見舞われている。中国では北西部の新疆ウイグル自治区トルファン市で16日に52.2度を観測。気象当局によると、7月中旬としては国内最高記録となった。地表温度は80度に達し、ネット上では「巨大なサウナのようだ」といった書き込みが見られた。
 首都北京でも猛暑が続く。6月下旬には3日連続で40度を超え、屋外活動の自粛や熱中症への注意が呼び掛けられた。中国メディアによれば、北京で1951~2022年の72年間に40度を超えたのは計6日だけだが、今年だけで既に4日に達した。
 韓国では、今月の豪雨で死者が40人を超えた。日本も今月、九州北部で記録的な大雨となり、9人が亡くなった。
 温暖化の影響を研究している英インペリアル・カレッジ・ロンドンのフリーデリケ・オットー上級講師は「温暖化により熱波の発生確率は高まり、より深刻化する。豪雨の確率も上昇する」と説明している。 
〔写真説明〕広大なカナダの森林で広がり続ける火災=撮影日不明(西部ブリティッシュコロンビア州当局が10日提供)(AFP時事)
〔写真説明〕山火事の消火のため出動したギリシャの消防隊=19日、アテネ近郊(AFP時事)
〔写真説明〕海水浴客であふれるイタリア・シチリア島の海岸=16日、メッシーナ近郊(AFP時事)
〔写真説明〕豪雨で水没した韓国のバス=16日、中部・清州(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)