2023/08/08
防災・危機管理ニュース
【ガジアンテプ(トルコ)時事】半年前のトルコ南部を震源とする地震で甚大な被害を受けたシリア北部の反体制派支配地域では、国連の主要な越境支援がロシアの妨害で7月10日に停止されたことにより人道危機が一段と深刻化しつつある。シリア反体制派指導者のアブドルラフマン・ムスタファ氏は7日、「支援停止が続けば今後1、2カ月で食料は枯渇する。餓死者も出るだろう」と危機感を示し、国際社会に一刻も早い支援再開に向けた行動を呼び掛けた。
◇現在は備蓄でしのぐ
ムスタファ氏は活動拠点のあるトルコ南部ガジアンテプでインタビューに応じた。シリア北部の反体制派支配地域には住民約400万人が暮らし、なおテント暮らしの被災者も多い。40度を超える酷暑が続くものの「現時点では支援停止前の備蓄があり、何とかしのげている」と述べた。
ただ、枯渇まで「時間との闘い」であることを強調。食料のみならず衣料品や医薬品など「あらゆる必要物資」の支援が止まったと指摘。食料だけでは「冬の寒さに耐えられない」と訴えた。
ロシアを後ろ盾とするシリアのアサド政権は、同政権が関与する形での支援再開なら認める構えだ。しかし、ムスタファ氏は「政権に従わない市民を平然と化学兵器で殺害する」アサド政権が間に入れば、支援が反体制派側に届かなくなると危機感を示す。
ムスタファ氏は7日、国連人道問題調整事務所(OCHA)の支援責任者とガジアンテプで会談し、ロシアやアサド政権に依存しない形での支援態勢を速やかに構築するよう要請した。
◇反体制派にも疑念
国連の支援は主にトルコ南部ハタイ県からシリア北西部イドリブ県に抜けるルートで行われてきた。しかし、7月10日以降、トルコ側のジルベギョズ検問所では「このルートを頻繁に行き来していた国連のトラックの車列は姿を消した」(現地のタクシー運転手)。一方、OCHAなどによると、トルコ南部キリス県とシリア北部アレッポ県を結ぶ別のルートでの支援はなお続いている。
ただ、キリス県の検問所付近で取材に応じたトルコ南部とシリア北部アザズを行き来するシリア人男性(40)は「アザズを支配する反体制派武装組織は被災者向けの支援物資をトルコより高い値段で一般市民に販売している」と証言。食料などが本当に必要とする被災者に必ずしも届いていないと厳しい見方を示した。
被災地での物資分配について、ムスタファ氏は「関与していない。現地の組織に任せている」と語った。
〔写真説明〕7日、トルコ南部ガジアンテプでインタビューに応じるシリア反体制派指導者のアブドルラフマン・ムスタファ氏
〔写真説明〕トルコ南部ハタイ県とシリア北西部イドリブ県を結ぶ国境にあるトルコ側のジルベギョズ検問所=6日
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- シリア
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
釜からこぼれた亜鉛で火災 BCPが初動の背中押す行動指針をもとに「大げさな対策」無駄に終わっても賞賛
1月1日の能登半島地震でシーケー金属の本社工場ではメッキ用の釜からこぼれた亜鉛が原因で火災が発生した。同社は消防団の協力を得て鎮火させるとすぐに、事業再開に動き出す。復旧活動にはげむ従業員の背中を力強く押したのは、東日本大震災の被災経験をもとに策定したBCPの社員行動指針だった。
2024/05/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月21日配信アーカイブ】
【5月21日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:日本海溝・千島海溝地震
2024/05/21
-
医療機能の維持を可能にした徹底的なハード対策非常時の代替ライフラインはチェック表で管理
元日の能登半島地震で激震に襲われた恵寿総合病院では、地震後も業務を止めることなく、充実した医療を提供し続けた。10年をかけて整備してきた、徹底的なハードとソフト対策の成果だった。
2024/05/20
-
目まぐるしい状況変化 懸命に向き合った3カ月
市立輪島病院は能登半島地震で被災しながらも、懸命の処置により、運び込まれる負傷者や感染症に苦しむ患者の命をつなぎました。超急性期・急性期を乗り切ると医療需要は急減し、代わって介護機能の維持が深刻な課題に浮上。発災から介護医療院開設までの約4カ月、病院で何が起きたのかを同院事務部長の河﨑国幸氏に聞きました。
2024/05/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方