【ニューデリー時事】20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の開幕を9日に控えたインドの首都ニューデリーは多数の治安要員が配置され、警戒が高まっている。政府は発展ぶりをアピールしようと施設の近代化や街の美化に取り組み、貧困層が住むスラム街を「目隠し」で覆う措置まで取った。
 丸みを帯びた真新しい建物の周囲で、銃を携えた治安部隊員が目を光らせている。建物は「バーラト・マンダパム」と名付けられたサミット会場の複合施設。約270億ルピー(約480億円)を投じて既存施設を全面改築し、7月に完成した。
 モディ首相は落成式で「全世界はこの場所からインドの発展と成長ぶりを目の当たりにするだろう」と、出来栄えを称賛した。
 報道などによると、当局はテロなど不測の事態に備えて首都に治安部隊や警官ら計約13万人を投入。厳しい交通規制を敷くほか、サミット前日の8日から閉幕する10日まで公休日とし、政府機関をはじめ学校や会社、インド門といった観光名所も閉鎖する。
 海外の目を意識してか、中心部の路上生活者は保護施設に移し、空港につながる大通りに面した南部のスラム街は周囲を緑色のネットで覆った。
 スラムでリサイクル店を営むサイード・マリクさん(42)によると、覆われたのは今月3日から。当局は理由を説明しなかったというが、「各国の代表団から見えないようにして、街をきれいに見せたいのだろう」と推察する。
 家事業務で生計を立てている住民のアジェイ・クマールさん(42)は「サミットはインドが偉大だと示せる大きなイベントで、私もうれしい。でも、政府には少しだけ貧しい人たちのことも考えてほしい」と話した。 
〔写真説明〕20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会場となる複合施設「バーラト・マンダパム」=6日、ニューデリー
〔写真説明〕周囲を緑色のネットで覆われたスラム街=6日、ニューデリー

(ニュース提供元:時事通信社)