【イスタンブール時事】パレスチナ自治区ガザ情勢が緊迫する中、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエルとの本格的な交戦を視野に入れた準備を進めている。全面衝突となれば、イスラエルにとってはガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの交戦が続く中で二正面作戦を強いられ、大きな脅威となる。
 先週レバノンを訪問してヒズボラの指導者ナスララ師と会談したイランのアブドラヒアン外相は、16日のテレビ番組で、ヒズボラは「イスラエルに先制攻撃を仕掛ける準備ができている」と強調した。レバノンでは17日にガザで起きた病院爆発を受けた大規模デモも発生し、こうした「民意」もヒズボラを支えている。
 ナスララ師は2021年10月、ヒズボラは「10万人の訓練された戦闘員」を抱えると戦力を誇示。事実ならレバノン正規軍の兵力を上回る規模だ。ナスララ師は「兵器は全てイランから届いている」とも主張し、同国との強固な関係をアピールする。
 ヒズボラはハマスが多用するロケット弾のみならず弾道ミサイルも所持し、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は「世界で最も重武装の非国家勢力」と分析。11年から続くシリア内戦にアサド政権を支持する形で参戦、戦闘員は実戦経験豊富だ。レバノンではパレスチナ系の武装組織も活動し、共闘態勢を取る。
 ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けた7日以降、ヒズボラはイスラエルと散発的な交戦を続け、双方に死傷者が出ている。イスラエルは16日、交戦激化を見越し、北部の対レバノン境界付近で暮らす住民を退避させる措置を取った。
 イスラエル軍とヒズボラの間では06年に大規模な衝突があり、レバノン側を中心に計1300人以上が死亡した。 
〔写真説明〕レバノンで会談するイランのアブドラヒアン外相(左から2人目)とレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師(右から2人目)=ヒズボラ系メディアが13日公開(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)