【エルサレム、ワシントン時事】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは20日、イスラエルから「人質」として連れ去った米国人の女性と娘を解放した。イスラエルのメディアによると、7日の交戦開始以降、人質解放は初めて。バイデン米大統領は声明を出し、「家族と再会できることをうれしく思う」と歓迎した。
 ハマス側は「人道的理由から解放した」と主張。カタール政府の仲介があったことを明かした上で、解放理由は「ハマスはテロ組織だ」とのバイデン氏の主張が「根拠のないものであることを米国民と世界に証明するため」だと説明した。
 ブリンケン米国務長官は20日の記者会見で「ハマスの言うことを額面通りに受け取るつもりはない」と強調。ハマスに捕らわれたままの米国人を含む約200人を「無条件で直ちに解放すべきだ」と訴え、引き続き人質奪還に全力を挙げる構えを示した。一方で、カタール政府に対しては「非常に重要な支援だった」と謝意を表明した。カタールにはハマスの最高指導者ハニヤ氏が拠点を置いている。
 米メディアによると、解放された女性(59)と娘(17)はイスラエルとの二重国籍保持者で、イスラエル南部の親戚を訪問中に連れ去られた。赤十字国際委員会(ICRC)経由でイスラエル軍が身柄を引き取った。
 ハマスは7日早朝にイスラエル南部に侵入し、集落などを襲撃。200人以上をガザに連れ去った。人質にはイスラエルや米国のほか、欧州諸国の国籍を持つ民間人が含まれているとみられ、国際社会で即時解放を求める声が高まっている。
 解放に先立ち、英BBC放送は、ハマスが人質一部解放と即時停戦を交換条件とする案をイスラエル側に提案したと報じていた。イスラエルのガザへの地上作戦が近く行われるとの見方がある中、人質を解放することで地上戦を遅らせ、交渉を有利に進める思惑があるとみられる。 

(ニュース提供元:時事通信社)