【エルサレム時事】中東のメディアなどによると、パレスチナ自治区ガザへの支援物資を積んだトラックが21日、エジプトとの境界にあるラファ検問所からガザに入った。医薬品や食料を積んだトラックは計20台。7日に始まったイスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突を受けたガザへの支援物資搬入は、これが初めて。ガザの人道危機が深刻化する中、搬入が継続されるかが今後の焦点だ。
 国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は21日に声明を発表し、「持続的な取り組みの始まりだと確信している」と期待感を示した。一方、ガザを実効支配するハマスは、限定的な支援では「壊滅的な人道状況を変えることはできない」と主張した。
 ハマスの奇襲を受け、イスラエルはガザ封鎖を強化し空爆を継続。ガザでは水や電気、食料などの不足が叫ばれている。グリフィス氏は以前、1日当たりトラック100台分の支援が必要だと訴えていた。現地からの情報では、今回の支援に発電などに使える燃料は含まれなかった。これに対し、ガザの保健省は医療を「真の危険にさらす」と懸念を表明した。
 一方、ハマスは20日、イスラエルから拉致した米国籍の2人を「人道的理由」から解放した。ガザには200人以上の人質がいるとされ、ハマスは米欧やイスラエルに解放交渉を働き掛けることでイスラエル軍の地上侵攻を遅らせる狙いがあるとみられる。
 これに対し、イスラエル軍報道官は「ハマスは今も幼児や子供、女性や高齢者を人質に取る残忍なテロ組織だ」と糾弾。ネタニヤフ首相は人質や行方不明者の帰還に向けた「努力を緩めない」としつつ、「勝つまでは戦い続ける」と強調した。
 イスラエル軍のガザ空爆が続く中、ガラント国防相は20日、3段階の対ガザ戦略を発表した。現在はハマス打倒のための第1段階で、「戦闘員の排除とインフラへの損害」を目的にしているという。第2段階は低強度の戦闘を続け抵抗勢力を排除する「中間期間」と位置付け、第3段階で、「ガザに新たな安全保障体制を構築する」という。 
〔写真説明〕21日、パレスチナ自治区ガザに到着した支援物資を積んだトラック(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)